論文要旨(Abstract)一覧

パッケージ製品を適用した大規模プロジェクトのスコープマネジメント

遠藤 貴紀


近年,DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として,基幹系システムの刷新に取り組むプロジェクトも多くなっているが,一から自社で作りこむスクラッチ開発で構築した基幹系システムであっても,刷新にあたってはグローバル展開されているパッケージ製品を利用し,早く,安くシステムを導入することがトレンドとなっている.パッケージ製品を利用したシステム導入には,パッケージの製品仕様に合わせた業務の標準化が必要となるが,スクラッチ開発で構築された現行システムの仕様が複雑であればあるほど,業務標準化の検討も複雑になり,現行仕様を踏襲したい要件も増加する.そのような要件はアドオン開発で対応せざるを得ないがアドオン規模が増大すると,安くシステム導入ができるパッケージ適用のメリットが失われてしまう.そのような事態に陥らないためのスコープマネジメントについて検討する.


立ち上げフェーズの重要性

北村 正和


発注側と受託側の目的・ゴールは同じだが,受注段階で双方が抱いているスコープや仕事の進め方には食い違いがある.そのギャップを確認・共有し,軌道修正する最初のチャンスが立ち上げフェーズであると認識しているにも拘わらず,疎かにしているケースがほとんどである.その理由は,成功事例を基にしたガイドラインやベストプラクティスがなく,そこに時間を掛けることの意義やメリットが浸透していないためだと推測する.本稿では,その重要性を再認識して頂くことを目的に,立ち上げフェーズにおいて顧客との合意形成や関係構築に力を入れたプロジェクトとそうでないプロジェクトで,その後の進め方にどのような影響が出たかを紹介し,その重要性を考察する.


アジャイル開発未経験者によるアジャイル開発推進事例

栗城 信明


昨今,アジャイル型での開発は分野を問わず,さまざまな業種で適用の検討が行われている.IT業界においても初期開発からアジャイル型で行う開発やウォーターフォール型で開発を行っていたものをアジャイル型の開発に変更することを検討する取り組みが進められている .アジャイル型の開発を行うためにはアジャイル型とはどういう手法であるかを理解することやアジャイル型の開発を実行する上での環境準備が必要不可欠であり,そのためには人財育成を計画立てながら 推進していくことやアジャイル型の開発に必要なツールなどの理解が重要である.A社のプロジェクトにおいてもアジャイル型の開発を行う組織作りを推進しており,アジャイル型での開発経験やPMOの経験が無い状態ではあったがアジャイル開発組織内においてPMOの一員として当社は参画した .A社のプロジェクトでは,ウォーターフォール型で開発を行っている各々の開発チームをアジャイル型での開発 に変更していく取り組みを行っていく過程で課題が山積みになっていた.本稿では,アジャイル型での開発が未経験の状態でPMOの一員として参画し,課題解決に向けて取り組みを行った際の気付きについて述べる.


マイグレーション後の現新比較検証作業のサービス化について

斉藤 俊介


現在,企業が運用しているレガシーシステムは改修が多岐に渡り,複雑なプログラム構造になっているものも少なくない.また,システム自体もハードは汎用機からオープンプラットフォームへの移行が必要となってきており,ソフトも古いOSやアプリケーションを使用しているため,サポート期限が迫っているものもある.このような中でマイグレーションニーズは高まってきており,市場規模も2021年で433億円,前年比125%と伸長している.当社ではすでに2002年3月よりマイグレーションサービス事業を開始し,これまで200件以上(140MStep)の実績を積んできた.マイグレーション後のテストの大半は現行システムと新システムのアプリケーション実行結果を比較検証(以下,現新比較検証)するものであるが,テスト範囲が広範囲であり,ブラックボックスによるテストであるため,工数が膨大になる傾向がある.そのため,当社ではこの現新比較検証作業をサポート対象外とし,原則顧客で対応してもらうようにしてきた.しかしながら,昨今顧客からの現新比較検証作業のニーズが高まってきていること,レガシーマイグレーションの市場規模は伸長してきていることから,現新比較検証作業をマイグレーションのオプション機能としてサービス化することにした.サービス化の実現にあたってはA社のマイグレーション案件の現新比較検証を弊社で受注した際に,作業ごとにサービス化を検討し,ツールによる効率化を図ることで検証を行うことにした.これにより,現新比較検証サービスを実現し,A社の作業もツールを活用することで効率化できただけでなく,人的ミスも減少し,品質を確保した上で納期通り本番リリースを行うことができた.また,当社のマイグレーションサービスのオプションサービスとして現新比較検証サービスを追加し,競合力のあるサービスとして提供できるようになった.


クラウド構築におけるヒューマンエラー削減活動の一事例

住谷 多香絵,岡本 直樹,尾高 知宏,山野 大佑,中島 雄作


近年,サーバ,データベース等はオンプレミスでなく,パブリッククラウド上に環境構築することが主流である.筆者は新卒2年目ではあるが,ある案件のクラウド構築の環境設定作業と単体試験工程に限定したミッションリーダを任された.1回目の構築ではヒューマンエラーによる設定ミスが多発した.そこで,ヒューマンエラーの12分類を参考にして改善活動を行い,2回目の構築ではヒューマンエラーによる設定ミスを92.3%削減することができた.本稿では,クラウド構築におけるヒューマンエラー削減活動の一事例について述べる.


統合プロジェクトにおけるコミュニケーションの重要性とその活用

石川 武人


各開発プロジェクトにおいて,スコープの不明確さに起因するトラブルが後を絶たない.特にプロジェクト初期段階(要件定義工程~基本設計工程にいたる上流工程)において,顧客及び各ステークホルダーとのコミュニケーションがコスト,スコープを明確に確定するために特に重要であるにも関わらず,顧客の実現したい機能の本質を導き出せず,後々のトラブル起因となっている.この様なトラブルを回避しプロジェクトを成功に導くためには,顧客体制上のキーマンと立場を理解した上で適切なコミュニケーションが重要であると考える.私は、2つのユーザが経営統合を行う際のシステム統合のプロジェクトマネージャーを担当した.本論文は,そのプロジェクトの中で特に重要であった要件定義及び基本設計について、両ユーザとのコミュニケーションを通じて実践したことを分析し課題,成果として纏めたものである.


経験値の可視化と集約されたノウハウを組織浸透させるためのマネージメント方法論

福田 徹


プロジェクトマネジメントで採用するプロセスには幾多の普遍的な方法論があり,多くのITベンダではこのプロセスを育成・発展させながら改良を続けていく必要がある.しかしながら,有期で繰り返される各々のプロジェクトには事実上多くの特異性があり,王道とされるものは存在しない.これは,システム規模が同等であったとして,顧客特性や業務形態,公共利用範囲に伴うミッションクリティカルとなる重要性の差異によってマネジメントの質と範囲が大きく異なる.こうした個別特性や属人的になる傾向のある重要なマネジメント思考と観点を,可視化されたプロセスに反映し組織展開することは容易な活動ではない.事業面積拡大に伴い,領域を広げたマネジメントを行うためには,これらのノウハウを余すところなく後進に伝授し,育成に注力することが肝要であり,自身の上位マネージャとして取り組んだ組織活動を事例と共に紹介し,一考察を述べる.


ソフトウェアドキュメント検証の導入支援活動の事例について

柳沢 満,吉村 直人


当社では,ソフトウェアドキュメントの作成工数削減,ソフトウェアプロジェクトの全体の品質と開発生産性向上を目的に,ソフトウェアドキュメントの曖昧表現と誤表記を機械的,網羅的に検出するドキュメント検証ツールとそれを利用したドキュメント検証サービスの社内展開を推進している.本稿ではドキュメント検証サービスの導入支援活動と適用領域拡大の事例として,著者の所属する自治体向けパッケージソフトウェア開発部門と共著者の所属する部門で体制を組み実施した,ドキュメント検証の評価結果について報告する.ドキュメント検証ツールを使って大量に出力された検出結果について,有識者が振り分けた正しい用語を辞書に登録することで検出を抑え,誤りの用語を抽出しやすくすることで,開発者による工数削減を見込むことができる.


小規模開発の失敗事例から学ぶ~プロジェクトマネージメント義務とユーザの協力体制について

中浦 秀晃


システム開発プロジェクトにおける課題のひとつとして,上流の要件定義が曖昧のまま双方が合意,下流工程での後戻りや仕様の追加変更などにより,納期遅延やプロジェクトの中断等のトラブルの増加がある.昨今は顧客が承認した要求仕様通りに設計,開発を行っていても,要件や機能不足が原因で納期に間に合わず,システムを稼働できなかった場合,受託側ベンダのプロジェクトマネージメント義務違反を問われるケースがあり,損害賠償請求など裁判にまで発展することもあり,プロジェクトの最大のリスクとなっている.これは比較的小規模なプロジェクトでも複雑性の高い業務などは,顧客の全面的な協力体制は必要であり,業務の専門性の高い有識者がアサインされずに体制が不十分なままプロジェクトが進んでしまうことがプロジェクト失敗の主な要因でもある.本発表では,小規模なプロジェクトの事例をもとにプロジェクトが中断となってしまった原因,問題点などを考察し,その時,プロジェクトマネージャーとして何をすべきであったのか等,契約事項だけでは解決できないベンダ側の管理責任と顧客の協力義務について述べる.


バグ数AI予測および説明可能なAIで特定した予測値の主要因を品質分析へ応用

池田 真也,齊藤 拓也,矢野 雄輝,松島 明美


当社では,ウォータフォール開発の品質をAI予測する手段として「出荷後バグ基準達成確率の予測」と,「FDレビュー十分性診断」を策定し,運用している.しかし,バグ数を直接AI予測して品質分析に活用する施策はまだ運用していない.そこで,我々が出荷後品質を担保するうえで特に重要と考える機能設計工程(FD)のウォータフォールV字モデルに対応する機能テスト工程(FT)に着目した.そして,当社の情報通信業領域データを学習データとし,プロジェクト計画値および実績値を基にFTバグ数を予測するAIモデルを機械学習(回帰)で構築した.また,そのAIモデルに説明可能なAIを適用し, AI予測値の主要因を特定する手段も構築した.本施策をプロジェクトで検証した結果,予測値を押し上げる要因は品質が悪い要因に,予測値を押し下げる要因は品質が良い要因になり得ることがわかった.そして,予測値を押し上げる要因を回避するアクションをとれば,予測した状況を改善できる可能性があることがわかった.


インド高度IT人材との英語協業プロジェクト事例
- 異文化理解の重要性 -

齊藤 邦浩


国内向けのアプリケーション開発において中国の低コスト人材を活用するオフショア開発プロジェクトが2010年代に増加したが,世界一位の人口を誇るインドでの開発事例は未だ発展途上と考える.筆者は国内向けアプリケーション開発プロジェクトにおいて,日本語が通じないインドメンバーとの協業を経験した.協業したインドメンバーは,英語コミュニケーション力に優れ,特定エリアのアプリケーション開発経験が豊富で,かつプロジェクトマネジメントの分野でも優れたスキルを保有しており,そのメリットを享受することができた.またインドと協業を行うことで,日本側メンバーの英語コミュニケーション力を高めることができ,メンバーのモチベーションアップにも繋がった.本稿はインド人材との協業メリットおよび協業の際の課題と対応策の事例をまとめたものである.


スコープギャップ抑止のための要件確認工程の適用

駿河 義行


ITプロジェクトにおける損益悪化原因は上流工程にて作りこまれる傾向がある.特に要件定義書においてスコープを明確化することが重要である.スコープの明確化のための解決策として,サービス仕様書を策定して,成果物スコープ,プロジェクトスコープを定義するという試みがなされてきた.これによりスコープの明確化および損益悪化の抑止に一定の成果を上げてきた.しかし,サービス仕様書の基となる要件定義書そのものの品質が悪い場合や,要件定義書を開発ベンダが正しく理解できていない場合は,サービス仕様書でスコープを明確化したつもりであっても,スコープギャップが生じる.スコープギャップの抑止のためには,基本設計工程前に要件確認工程の期間を設けることが効果的である.


ソフトウェアアップデートがOSSソフトウェア信頼度成長曲線に与える影響に関する一考察

宮本 翔一郎,周 蕾,田村 慶信,山田 茂


オープンソースソフトウェア(Open Source Software, 以下OSS)においてリリース後に発見されたフォールトは,アップデートで修正される.この過程は従来より,ソフトウェア信頼度成長曲線(Software Reliability Growth Model, 以下SRGM)を用いて示されてきた.一方,近年ではセキュリティ上の問題の修正および機能の改善等を目的としたアップデートを実施するOSSが存在する.このようなアップデートには,開発当初の要件定義に含まれない要件が含まれることも多く,新規のフォールトが作り込まれることがある.したがって,アップデートによるフォールトの増加を想定したSRGMが必要とされている.本研究では,フォールト数の増加を想定したSRGMを構築することを目的として,アップデートがSRGMに与える影響を分析し,アップデート前後のSRGMの推移について考察する.


クラスタ分析を用いたプロジェクト成功率可視化の取り組み

出井 優駿,小林 義和,針間 正幸,吉原 秀幸,竹田 佳史,伊東 恒,秋庭 圭子


プロジェクトを成功に導くためには,過去の経験から教訓を得て,プロジェクト推進に生かすことが重要である.これまで我々は,プロジェクトのプロフィールから失敗の原因となり得るリスクを定量化し,スコア化することで,プロジェクト関係者へ注意喚起を促す活動を行ってきた.しかし,スコアを示すだけではプロジェクト関係者に危機意識を持たせ,過去の経験を活かすよう促すことが難しかった.そこで,過去プロジェクトのプロフィールを用いてクラスタ分析を行い,プロフィールの組み合わせと成功率の関係性を可視化した.これにより,進行中のプロジェクトと類似する過去プロジェクトの成功率を提示し,失敗する可能性が高いプロジェクトの関係者へ根拠のある注意喚起を行えるようになった.本稿では,行った分析の概要とその結果について報告する.


基盤エンジニアリング企業におけるヒューマンエラー対策の一考察

中島 雄作,大槻 義則,神崎 洋,小豆澤 亨,中村 仁之輔,木村 和宏


ヒューマンエラーの予防については,数十年前から多くの文献が公開されている.しかし,工事現場,工場,交通,病院,調理等に関するものが多く,IT企業のSE,営業,スタッフ等のホワイトカラーに関するものはほとんど公開されていない.我々,基盤プラットフォーム分野を主に展開する企業,つまり,基盤エンジニアと営業部門とスタッフ部門が多く在籍する企業での,ヒューマンエラー対策を推進する際に苦労している事例を紹介する.


経験データを活用したトラブルプロジェクトAI 予測の可能性

四ッ橋 章匡,山本 元樹,前川 拓也,鈴木 健之,大倉 弘貴,中山 晃治,才所 秀明,飛石 健一朗


AIの躍進により,プロジェクト管理情報を元にしたプロジェクトトラブル予測が進んでいる.しかしながら受託開発においてはプロジェクト開始時点の情報が不足していることもあり,予測精度が確保できないという課題があった.本稿では,プロジェクト経験情報を元にしたプロジェクト開始時点でのトラブル予測を検証する.


協働的なプロジェクト・チーム環境を構築する上での気づきと考察

山下 俊幸


PMBOK®第7版のプロジェクト・マネジメントの原理・原則の一つとして,協働的なプロジェクト・チーム環境を構築することがある.複数の組織が共同で進めるプロジェクトでは,組織間の文化の違いを踏まえて,プロジェクト・チーム環境の構築に取り組む必要がある.ネットワークに関連する人員がプロジェクト・メンバーであるプロジェクトに対するマネジメント経験はあった筆者が,システム・オペレーション拠点の複数拠点化に向けた先行プロジェクトをマネジメントした際に,オペレーション部門の人員にプロジェクト・メンバーとして参画してもらい,部門間を跨ったプロジェクト・チーム環境を構築した.プロジェクト現場の視点から,協働的なプロジェクト・チーム環境を構築するに当たっての気づきと考察を紹介する.


組織と人財を持続的な成長に繋げるモチベーションマネジメント

柴田 健一


システム開発の成功に向けては,各社員やチームメンバーが高いモチベーションを持って仕事に取り組むことは非常に重要な要素となり,モチベーションの低下はシステム開発品質の低下を招く要因になる.そのため,社員が高い意欲を持って業務に取り組めるように動機付けをし,組織的にサポートするモチベーションマネジメントの活用が必要不可欠である.モチベーションマネジメントの観点としては,いかに内発的動機付け(強制されたものではなく,自己実現によりもたらされる動機付け)をして,高いモチベーションを維持させるかが重要で,モチベーション維持のためにはモチベーションを下げる要因を特定し,それを排除することが重要と考える.本論文では,システム障害や開発プロジェクトのトラブルが継続的に発生している組織において,根本的な課題解決をしていくために取り組んだ各個人のモチベーション向上に向けた対応と成果を纏める.


ローカル5Gなど未来志向型インフラ・テクノロジ導入とPMの責務

久保 和寿


スマートフォンが事業や生活に台頭する現在,通信インフラの性能も向上し「第5世代(5G)移動通信システム」の普及が始まった.4Gが実現した高速・大容量を更に拡大し,低遅延・多数接続を特徴とする5Gには期待も高い.新規サービスの創成に取り組む多くの企業で5G導入プロジェクトが進んだが,製品は開発段階で性能が理論値に届かないなど,プロジェクトの成功は安易ではなかった.顧客の期待を裏切らないPMとして,アジャイル,OODA,アメーバなど手法の検討を行い,延いてはマネタイズ考慮の必要性を考察したスコープマネジメントの取り組みについて報告する.


中上級PM養成研修における演習題材選定のポイントと演習実施上の工夫
- 受講者に共通の題材と非共通の題材、使い分けの勘所 -

角 正樹


プロジェクトマネージャ(以下PM)は経営戦略に適合したプロジェクトを円滑に遂行し,計画された最終成果物(納入物,サービス)を成功裡に提供する責任を担っている.プロジェクト遂行に際しては,さまざまなステークホルダの満足を達成しつつ,計画された品質,コスト,納期の実現を求められている.一人前のPMになるためには,単なる知識や一般的な方法論を身につけるだけでは不十分であり,実際のプロジェクトでの経験を積み重ね,判断力や決断力を身につける必要がある.判断力や決断力等の醸成には演習(討議,ロールプレイ等の疑似体験)が欠かせないが,限られた時間内で演習効果を高めるためには演習題材の選定が重要となる.筆者が企画・制作と講師を務める研修では,(1)研修受講者全員にとって同じ知識や経験を前提とした題材,(2)研修受講者個々の異なる知識,経験を前提とした題材を選定し,それらを組み合わせて演習を実施している.本稿では,演習題材の選定と演習の実施における工夫と配慮について紹介する.


女性限定のセキュリティ技術コミュニティを運営するプロジェクトマネジメントの一事例

小境 彩子,中島 雄作


筆者は,女性社員向けのコミュニティを立ち上げた.情報セキュリティ技術に興味がある女性を対象に,気軽に技術的な質問や何気ない悩みを話しあうことが出来る,会社内の組織の枠を超えたコミュニティである.本稿では女性限定コミュニティの運営について工夫している点を紹介する.結果として,IT技術領域における女性限定の技術コミュニティの普及につながることを期待する.本稿では,女性限定のセキュリティ技術コミュニティを運営するプロジェクトマネジメントの一事例について述べる.


大規模開発プロジェクトにおける実行可能な開発計画の検討

内島 拓次


開発規模が10Mstepを超える大規模開発プロジェクトでは,開発期間が複数年に渡る場合が多い.発注者側の事業計画(予算,スケジュール)と,開発ベンダ側で考える実行可能なスケジュールには乖離があるケースが多く,そのギャップを埋めるための工夫と検討におけるポイントを考察する.COCOMOやファンクションポイント法などの一般的な指標で説得力のある交渉を行うとともに,発注者側の企画段階でどこまで関与できるかが大きいが,それ以降で開発規模の削減や開発期間の短縮が必要となった場合には,開発限界規模や目標となる指標を提示する必要が生じる.その実践にあたっての結果と考察を報告する.


ナッジ理論を活用した保守運用メンバの育成に関する一提案

渡辺 耕介,片寄 智之,椚 勇太,小山 誠,杉田 渉,三橋 彰浩,中島 雄作


NTT データグループでは,IT-SM 育成塾という,保守運用リーダ向けのメンタリング制度を運営しており,筆者らは,そのとある一グループである.筆者らが,保守運用の現場における改善テーマを討論したところ,リーダからメンバへの育成が多くの問題を抱えている共通課題であった.育成がうまくいかない原因は,教える側のリーダと教わる側のメンバとの,現場の改革に関する意識の高さ/低さの相違であることを突き止めた.そこで,最も困難な状態である「リーダは改革意識が高いのにメンバは改革意識が低い」場合について,ナッジ理論を活用した対策をとることにした.本稿では,ナッジ理論を活用した保守運用メンバの育成に関する一提案について述べる.


生産性の変動要素と対策

大方 信一


ウォーターフォール型の開発においては,類似開発の平均生産性を根拠としてスケジュールを作成することが多いが,この生産性は開発内容や個人のスキル等に依存して変動することが分かっている.この変動要素を計画当初に想定せずに,スケジュールを作成すると,個人ごと,チームごとに必ず遅延や待ち時間が発生してしまう.この遅延・待ち時間の問題が発生した後の対策検討では,対策が不十分になる可能性もあり,一時的に個別のチームメンバーの負担が平準化されていない状況になってしまう.本論文では,この問題を解決する方法を検討するために,あるプロジェクトをサンプルとして,変動要素についてどの程度の変動が想定されるのかを分析する.その後,この変動に対して,プロジェクト計画当初から取り得る対策を論じる.


アプリケーション開発における標準化成果物の活用に関する一考察

八木 礼佳,藤田 晴樹,佐藤 裕介,清水 理恵子


近年,アプリケーションのレガシー化,ブラックボックス化が進み,複雑化したアーキテクチャの刷新が求められている.アーキテクチャの刷新は,新旧アプリケーションの知識や経験が必要となるため,開発効率の低下に起因したコストの増加やスケジュールの遅延が課題となる.我々が参画した大規模開発プロジェクトは,開発言語とアプリケーションの処理方式を変更する必要があり,現行アプリケーションの開発より開発効率の低下が想定されたため,開発効率の向上が求められていた.大規模開発の効率化については,先行研究で「必要な標準化が実施されたプロジェクトは開発効率が向上する」ことが分かっている.そのため,本プロジェクトでも必要な標準化成果物を準備し開発を進めた.また,現行アプリケーションからの開発言語とアプリケーション処理方式の変更に伴い,詳細設計工程で多くの課題が発生することが見込まれた.そこで我々は,詳細設計工程で利用する標準化成果物に記載する内容を検討した.本論文では,本プロジェクトで作成した詳細設計工程の標準化成果物の効果について考察する.


コンソーシアムによるシステム開発プロジェクトにおけるマネージメントに関する一考察

市岡 亜由美,清水 翔平,富田 満紀子,林 智定


社会生活の高度化/複雑化に伴い、これを支える情報システムも大規模化/多様化の一途をたどっており、その実現に際しては、高度かつ広範囲なノウハウを集約した大規模な体制の構築が必要となる。しかしながら、多様なノウハウを持った人材の確保等、様々な課題があり単独企業、単独組織では容易ではない。この様な問題に対する解決策のひとつとして、『コンソーシアム型』のプロジェクト体制の採用がある。これは多様なノウハウを有する複数の組織(企業や政府などの団体)が共同体を構成し、お互いを補完し合うことでプロジェクト全体を成功に導く事を目的としたものであり、各組織が自身の特色(得意技やノウハウなど)を発揮し易い点が最大のメリットである。一方、文化の異なる企業や団体の特性を活かしながら、プロジェクトを円滑に進める事は容易ではなく、単独組織によるプロジェクトと比較して、遥かに広範囲で、きめの細かいマネージメントが求められる事が大きなリスクである。本稿では、コンソーシアム型のプロジェクトにおいて、著者らが実際に直面したマネージメント上の問題と対策および、その効果について報告するとともに、今後のマネージメントに向けた提言を紹介する。


大規模ミッションクリティカルシステムにおける炎上プロジェクトの立て直し
- トラブル多発時の再発防止策策定に向けた包括分析の実践と課題へのアプローチ -

高橋 秀行,掛川 悠


近年,通信や金融分野の大規模ミッションクリティカルシステムにおけるトラブルが多発しており,その影響の大きさが問題視されるようになっている.時に社会活動を阻害するほどの影響となることもあり,迅速な対処や,根本原因に対する再発防止策の確実な実施が求められている.筆者が参画した大規模ミッションクリティカルシステムの炎上プロジェクトでは,商用トラブルが週3件以上発生している状況であった.短期目標は新規トラブルの発生低減,長期目標は再発防止策の定着だが,既に63件発生したトラブルを短期間で全て分析することは困難な状況であった.そこで,分析対象をサンプリングし,主になぜなぜ分析で個別トラブルの根本原因を導いた後,共通性を検討した.その後,(1)開発時のマネジメントや体制などから間接原因を検討し,(2)根本原因と間接原因の因果関係の検証をして,トラブル多発の妥当な間接原因を特定するまで(1)(2)を繰り返した.また,サンプリング対象外の個別トラブルは前述の分析に基づき類型化し,追加分析・対策の要否を判断した.本稿では一連の取り組みと効果測定,今後の課題について論じる.


テレワークによるプロジェクトの課題改善に向けた実践事例

加藤 尚輝


本稿では,テレワークが広まる現代において,プロジェクトマネージャーやチームリーダーが直面するテレワーク環境下でのプロジェクトの課題に焦点を当て,それらの課題を解決するための実践事例示す.テレワークによって生じるコミュニケーションの困難さ,タスクの追跡と管理の複雑さ,チームメンバーのモチベーション低下などの課題について,自身がプロジェクトを通して実践した改善事例を記載する.


課題管理専任体制設置と期待値管理観点適用の有効性

影山 陽平


ITプロジェクトが混乱する要因としては,ステークホルダ間に跨る事項に対する認識の相違に起因するものが多い.アプリケーションソフトウェアの開発を伴うプロジェクトでは,見積もり時,契約交渉時,設計時など,各工程の断面で仕様やスケジュールなどステークホルダとの段階的に詳細な合意を図るが,人と人との関係においては個々人の解釈の違いにより,すべての事項について認識を完全に一致させることは困難であり,認識相違の顕在化が頻発するとプロジェクト混乱につながる.こうした問題を解決する,あるいは軽減するには,タスク・課題管理担当の設置し,各ステークホルダ間に跨る潜在的に抱える事項を表面化し,計画されたコントロール可能な状態でプロジェクト運営を行うことが効果的である.


機械学習モデルをREST APIとしてサービングするシステム開発における上流プロセスの絞り込みと効果検証

佐藤 柚希,湯浅 晃


近年,様々な研究機関や企業によってAI開発に関するガイドラインや方法論が策定されており,AIが組み込まれたシステム開発における汎用的かつ網羅的なプロセスが定義されているが,実際の開発現場においては,網羅的なプロセス定義の中からプロジェクト特性に応じて必要なタスクを選定する方法がわからない等の原因により,標準類の定着に向けた課題がある.そこで筆者らは様々なAIを含むシステム開発のうち,主にBERT等のモデルをベースに学習を行い,REST APIの形で推論機能を提供する部分のシステムコンポーネントに焦点を当て,開発の上流工程に最低限必要な成果物とプロセスを定め,実際の開発プロジェクトに適用しその効果を検証した.本論文では,検討した成果物およびプロセスの内容とともに,プロジェクトリーダへのヒヤリングをもとにした効果について報告する.


ニューノーマルにおける企業DNA継承を実現するチームビルディング

新間 陽一郎


メンタルヘルス研究会では,「リモートワーク下のプロジェクト現場におけるメンタル不調を予防するには?」というテーマで毎月議論を重ねてきた.議論のテーマはコロナ禍におけるリモートワークなどの環境変化やメンバー間に存在する物理的な距離とは異なった仮想的な距離がチームマネジメントに及ぼす影響などであった.仮想的な距離が長くなると対象のメンバーは孤立感や疎外感を持ちながら仕事をこなしている状況である.この仮想的な距離を短くする取り組みとして,朝会や朝礼にて一言雑談というツールを活用する方策を2021年に紹介した.一言雑談はリモートワーク下でメンバー間のコミュニケーションの向上と健全なメンタルヘスルの維持を可能とすることが確認されている.本論文では,一言雑談に企業標語という明確なテーマを与え,メンバー全員が自発的に発言するコミュニケーションモデルを検討した.企業標語は日々変化するが月毎にループするキャッチコピーの集合体であり,変化するキャッチコピーに対してチームメンバーが個人の意見を毎日発表する環境を構築した.このモデルの活用は意見交換が闊達になるチームビルディングを可能とし,チームメンバーの健全なメンタルヘルスの維持と企業DNAの継承を同時に実現する取り組みであったことを紹介する.


プロジェクト状況把握を目的とした事業部門-スタッフ部門との連携促進

加藤 光雄


プロジェクトを成功に導くには,事業部門(現場)とスタッフ部門(全社PMO)の両部門がプロジェクト計画を把握した上で,双方が情報共有しながら問題点を監視・フォローし,計画との乖離を抑止することが重要である.しかし,双方がタイムリーに情報共有することは簡単ではない.本研究では,事業部門によるプロジェクト計画立案の遅れやスタッフ部門による多数ある中小規模プロジェクトの状況把握の遅れに対して,BIツールを活用してプロジェクト状況を視える化することで,プロジェクト推進を円滑に行えるようにしたことについて報告する.


社内システム開発におけるデザインシステム導入の効果

大山 健太朗


【背景・目的】当社ではローコード開発基盤Mendixを活用することで、社内システムの高速開発自体は可能となってきている。しかし、画面設計段階でのコミュニケーションロスや、UIコンポーネントの部品化などができておらず、開発現場で工数の無駄が見受けられた。デザインシステムを導入することでどのような効果があるかを本稿では明らかにする。【方法】実際にデザインシステムを活用して社内システムの開発をしたエンジニアにインタビューを行った。【結果】デザインシステムの導入によって、工数削減効果があるとインタビューから結果を得ることができた。【結論】デザインシステムを活用することで、画面設計・実装段階で工数削減効果が得られる。またUI・UXの品質向上などの数字に表れない部分での効果もある。


特許創出活動高速化の施策
- 心理的安全性がもたらす効果 -

林 直希


近年,ビジネスの市場投入のスピードは加速している.このビジネスのスピードに知財創出のスピードもキャッチアップする必要があるができていない.特に特許創出活動において,この問題は顕著になっている.我々は特許創出活動に時間が掛かるという問題に着眼し,問題の本質とその解決策を見出したので,本論文で論じる.問題の本質は,発明に関する思考停止と呼ばれる状態に陥ることであり,その原因は発明者の心理的不安感である.この問題を解決する施策は,我々がサポータ制と呼ぶ施策である.このサポータ制は,心理的安全性(心理的安心感)を根幹とする施策である.またこのサポータ制の特徴は,発明者や我々担当者以外の冷静かつ客観的な第三者を特許創出会議に投入することである.その結果,特許創出活動において導入前の2倍のスピードアップを実現した.本論文では,このサポータ制のノウハウとその有効性について,脳科学の知見等を用いて多角的に分析した結果を紹介する.


プログラムマネジメントの観点から見たクラウド移行に関する考察

高橋 新一


新システム構築やシステム更改を契機に,クラウド型システムを選択する機会が増えており,特に,オンプレミス型システムから,クラウド型システムへの移行が進んでいる.一方でプログラムマネジメントとして長期のシステム運用を考慮し,オンプレミス型システムとクラウド型システムでの違いや注意点を検討し,円滑な移行について準備を行うことが肝要と考える.そこで,本論文では,プログラムマネジメント観点でオンプレミス型システムからクラウド型システム移行の注意点を検討し,課題や考慮事項とその解決策について考察を行う.


大規模更改プロジェクトでのプロジェクトマネジメントの実践

谷元 久実子


アジャイルなど短納期,段階的な開発など,開発方法は様々な選択が可能となる一方,ソフトウェア等のライフサイクルにあわせ,一定間隔でシステム更改が必要となる事象は継続している.更改プロジェクトの多くは,一定間隔の更改後,法令順守,サービス拡大など改修を行った後,次の更改タイミングをむかえるというサイクルを繰り返し,保守体制の延長から,大規模更改プロジェクトに突入し,管理体制の不足や,有識者不足による品質低下,スケジュール遅延が発生する事例は多く発生する.本稿は,大規模更改プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメントの実践を事例研究としてとりまとめる.


サイバー攻撃からの復旧プロジェクトで学んだ病院情報システムにおける情報セキュリティマネージメントの在り方

條野 孝雄


近年,病院情報システムがサイバー攻撃によってランサムウェアに感染する事例が増加しつつある.病院情報システムにおいては,外部との接続に閉域網を使用するケースが多く,USBメモリやメールからのウイルス感染を防止するために,境界防御型のセキュリティ対策が一般的であるが,昨今のサイバー攻撃の事例を鑑みると,今後は外部からの侵入を前提としたゼロトラスト対策が必須課題となっている.サイバー攻撃からの復旧プロジェクトでのマネジメント経験を踏まえ,病院情報システムにおける情報セキュリティマネージメントの在り方について述べる.


プロセスマイニング技術を活用したユーザ視点テストによる品質保証手法の提案
- テスト密度・バグ検出密度に頼らない品質の可視化 -

溝渕 隆,三宅 敏之,仁尾 圭祐


システム開発プロジェクトにおいて,設計書に記載された機能仕様通りではあるもののユーザ受入テスト時に多数のエラー指摘を受けてしまうことに悩むプロジェクトマネージャーは多い.これはシステム開発ベンダによるテストが開発者視点テストに偏っており,ユーザ視点テストを実施できていないためであると推察される.ユーザ視点テストでは実際の業務オペレーションに従うことが求められるが,システム開発ベンダは業務オペレーション経験がない.そこで本論では,プロセスマイニング技術を活用することでベンダによるユーザ視点テストを可能とする手法,及び,ユーザ視点テストにおいてテスト密度・バグ検出密度に頼らない品質保証手法を提案するものである.


テレワークにおけるコミュニケーションマネジメントと効果的なファシリテーション

武田 嘉徳


2019年12月に初めて確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2020年2月から急速に世界で拡大し始め,2023年現在もまだ完全に封じ込められたとは言えない.新型コロナウイルスの感染拡大抑制を期待して,テレワークが推進されているが,全ての産業・業種で十分な活用は期待できるわけではない.筆者のプロジェクトは情報システムのITインフラ構築であったが,以前から対面式の会議が多く,急なテレワーク導入による混乱から,今まで友好な関係を築けていたステークホルダーとの関係が損なわれる場面があった.しかし,テレワークにおけるコミュニケーションと,会議におけるファシリテーションを見直すことで,関係を改善し,新たな契約を取り付けることにも成功した.本稿では関係の改善に至ったテレワーク下におけるコミュニケーションとファシリテーションについて,その影響と効果を評価する.


ウォーターフォールとスプリント開発を併用したPOSアプリケーション開発の実践事例

宮下 力丸


POSは,小売り店舗で必須のシステムであり,エンドユーザーが利用するシステムである.プロダクトの品質とリリーススケジュールが必達条件となり, ウォーターフォール型の開発でスコープコントロールしながらプロジェクト遂行する事例が多い.筆者が担当したA社は,クラウド上にアジャイル開発で構築中のAPIを活用した新たなシステム構成の実現を目指しており,定期的なサイクルでプロダクトを実際に見ながら製品を育てていきたい要望あり.対向システムがアジャイル開発を進める中,アジャイル開発未経験メンバーがプロダクトの最終品質と納期を確保する為に施行錯誤したウォーターフォール+スプリント開発の併用事例を紹介する.


システム開発プロジェクトマネジメントにおけるプロセスマイニング活用の検証事例

山本 智基,華本 絢陽


近年の開発現場ではGit,CI/CDなど開発や管理を支援するツールが浸透し,開発業務に伴う開発行動データが自動的に生成,蓄積されるようになった.従来のプロジェクトマネジメントでは特定の管理目的で収集・投入される管理データが利用されているが,管理データは粒度が粗いうえに新たな収集にかかるコストも高く,状況の詳細把握や問題の深掘分析には不向きである.ここで,開発行動データの活用が課題解決に寄与する可能性がある.近年注目されるプロセスマイニングは,実業務のイベントログから業務プロセスを可視化する技術であり,ファクトに基づき無駄なプロセスの発見やボトルネック分析が実現できる.本検証ではシステム開発プロジェクトマネジメントにおけるプロセスマイニングのユースケースと分析観点を立案し,実際のプロジェクトでユースケースの検証と評価を行った.結果,立案したユースケースは一定程度有効であることが確認された.


IPMA ICB人材コンピテンスの解釈とPMメンタリングへの適用について

越智 克史


IPMA(International Project Management Association)が発行しているICB(Individual Competence Baseline Ver.4)は, プロジェクト/プログラム/ポートフォリオマネジメントを行う際に, PM個人が保有すべきコンピテンスが一覧化されている.この点が, PMBOKに代表される他のプロジェクトマネジメントガイドとの大きな違いである.つまり, ICBにはプロジェクトを管理する手順やプロセスは記載されていない.この意味するところをふまえ, 今回は特にICBの人材コンピテンスに着目し, その内容を再解釈してみたい.また同時に, 若手PMへのメンタリングやコーチングでの適用の可能性についても考察を試みる.


エッジ環境を考慮したジャンプ拡散確率過程に基づく 投入開発工数予測モデル

五丹 悠多,宮本 翔一朗,周 蕾,田村 慶信,山田 茂


オープンソースソフトウェアは,様々な分野において利活用されている.また近年注目を集めているエッジ環境においても,オープンソースソフトウェアは活用されている.こういったソフトウェアの信頼性を定量的に評価する手法は提案されておらず,試行錯誤的に行われているのが現状である.本研究では,開発工数を予測する確率微分方程式モデルと,突発的なノイズに対応できるようにジャンプ項を組み合わせたジャンプ拡散過程モデルを提案する.また,数値例として,重み関数であるのこぎり波の概形を変化させることによる感度分析を行うことで,提案モデルの妥当性について考察する.


主体的なカイゼンのためのプランニングセッション事例紹介

田島 千冬


改善と聞くと「悪い状況を良い状態に変えること」そんな活動に感じるのではないでしょうか?悪い状態を良い状態に変えることは、課題であり、やらなければならない改善活動のように捉えられることもあるかもしれません。また、普段から忙しいのに改善活動にまで時間が取られると感じることもあるかもしれません。一方、改善とは、「改善」「カイゼン」「KAIZEN」と表し方も様々で、悪い状況を良い状態に変えるだけではなく、自らの問題に気付き、良い状態に進化させ、継続して対応することとしても用いられています。今回は、向かいたい方向に進むために、現在の状況とのギャップを埋めていく、やらされている改善からメンバーが主体的に活動するカイゼンに変わる。そのようなカイゼンの目標設定をコーチングで用いているGROWモデルとプログラミング開発でも用いられるモブを参考に実施しましたので事例として紹介いたします。


人的資源マネジメントに着目したプロジェクト活性化事例

斎藤 大輔


顧客の新商品開発の定期スケジュールに沿って「既存システムの改修を行うプロジェクト」を繰り返し実施するような,いわゆる「継続プロジェクト」は,システムインテグレータの事業継続性を支える収益源となる一方で,プロジェクト体制の固定化・高年齢化,知識・スキルの属人化などの要因により,プロジェクト推進が阻害され,人材・チームの成長が停滞する傾向がみられる.本稿では,このような継続プロジェクトが抱える課題について,人的資源マネジメントに着目した課題解決に取り組み,プロジェクト活性化を実現した事例について報告する.


多様な働き方社会における帰属意識の醸成に向けた取り組み
- SI企業での互いを「知る」活動の継続的な取り組みを事例に -

西山 美恵子,金 祉潤,大関 一輝,森本 千佳子


IT業界では客先常駐型で働く社員が一定数いる.そのような組織において,社員同士のコミュニケーションが希薄であることが度々課題としてあげられる.本稿では,システムインテグレーターにおける部員同士のコミュニケーションの活性化を狙ってワークショップを実施した.このワークショップを通して抽出した課題として,所属組織や所属部員を「知る」ことの重要性があげられた.そこでワークショップ以降,どのように「知る」活動に取り組んだのか,信頼構築プロセスモデルをベースに具体的な取り組み事例を紹介する.


中規模複数プロジェクトのマルチプロジェクトマネージメントの効率化

下河邊 喜誉


昨今ビジネス環境の変化の速さから,ITプロジェクトにおいて準備期間が短くなり,同時に複数プロジェクトを立ち上げねばならない状況が頻繁に発生する.本論文においては,某ユーザ企業の販売部門で3件の性質の異なるプロジェクトをほぼ同時に立ち上げ,推進し,完了した案件を基に,マルチプロジェクトのマネージメント上の施策を評価・整理する.


ダブルPM体制によるプロジェクト運営上のシナジー効果について

豊島 直樹


当社では毎年度,様々なIT開発を行うプロジェクトが立ち上がる.システムの老朽化対応,戦略的な新規システム開発の対応,DXやAIへの挑戦など,その内容も「攻め」,「守り」目的が多種多様である.その中で一定規模以上になると,「プロジェクト化」され,社内の全体ガバナンス運営に組み込まれ,管理される.プロジェクトの体制についても社内の審議にかけられ,リスクに応じた重厚た体制でないと承認がされず,それに基づき,社員も日頃からスキルアップや実績を積む必要がある.ここ数年,筆者においてもいくつかの重要プロジェクトのPM(またはPM補佐役)にアサインされ,実績を積んできたが,ダブルPMの体制で進めることが多かった.このダブル体制というのが,一見,権限保持者や意思決定者が2人以上いることで,プロジェクト運営上非効率のようにも見える.当初は自身の保有スキルや社内の役職上,致し方ないことであると考え,非効率であるという考えを持ちながら半信半疑,プロジェクトを進める立場にあった.ただし,案件を進めるにつれ,このダブルPM体制というのが,逆に言えば,非常に効率的な手法であり,シナジー効果が高かったと感じた.プロジェクトの特性により,ベストプラクティスの1つの手法として取り扱っても問題ないと言っても過言ではない.本稿では自身の経験したダブル体制での効果について事例を踏まえながら,考察を述べることとする.


プレイングマネージャー業務で成果を上げるためには
- 新人マネージャーの経験に基づく考察 -

唯松 大輔


近年の企業環境の変化による人材不足の影響を受け,日本ではマネージャーのプレイングマネージャー化が進んだ.現代のマネージャーは,組織の人を通じて成果を生み出すマネジメント業務と,自らがプレイヤーとして成果を生むプレイング業務を両立する必要がある.このような背景下でマネージャーとプレイヤーとしての業務の両方をこなしつつ,なおかつプレイングマネージャーであることの利点を活用してより高い成果を出していくための方法を確立することが重要であると考える.本稿では今年新任マネージャーとして着任した著者の経験と直面した課題を元に,プレイングマネージャーとして効果的にチーム・マネジメント,プロジェクト・マネジメント業務を推進させていくための対策について考察を行う.


ハイブリッドプロジェクトマネジメントにおけるマネジメントレベルの評価

石原 寛紀


システム開発におけるプロジェクトは,複雑なステークホルダーとの関係,ビジネスの変化への対応,短納期および高品質への要求などから高度化,複雑化している.その様な状況で,プロジェクトマネジメントは,プロジェクトの特徴に応じて,適切な手法を適切なタイミングで適用または,組み合わせ,優れた結果を出すことが大きな成功要因となっている.このように,マネジメントの手法がハイブリッド化して適用する中で,そのプロジェクトマネジメント能力を客観的に点検,評価し,さらに能力向上を目指して成長させていくことは,プロジェクトの成功や組織の成長において重要な活動と考える.本稿では,複数のプロジェクトマネジメント手法をハイブリッドに適用するプロジェクトにおいて,マネジメント能力の評価軸を提案し,適用させた.結果的に得られた効果とその有効性について検証する.


基本行動の徹底によるプロジェクトマネジメント成功事例の紹介

戸谷 和宏,奥谷 出,帆刈 勇貴


顧客の行動変化や多様な生活様式を踏まえた昨今において,DXの導入による新しい顧客体験の実現を目指す企業が増えている.このような企業のプロジェクトは,複雑なステークホルダー,多岐にわたる要求事項,新技術の適用,安心・安全な本番切替など,多くの潜在的なリスクが伴う.本稿では,リスクマネジメントにおける回避・転嫁・軽減・受容の戦略をもとに,事実の実態把握・可視化,根拠に基づいた方針案検討,ステークホルダーとの交渉・合意形成といった基本行動を徹底したことで成功したプロジェクト事例を紹介する.


RCAの課題と対策

北畑 紀和


RCA(Root Cause Analysis)は日本では"5Why"や"なぜなぜ分析"と呼ばれ,問題分析手法として広く知られている.問題の真因を特定し対策を立てる上で有効な手段であるが,発生した問題の種類や運用する人間によっては,必要以上に担当者に負担を強いる場面もあると考える.RCAの課題と思われる事案と対策について考察する.


AI機能を使用したコスト超過プロジェクトの早期検出方式

野元 拓也


ITシステムの社会的重要性の高まりとプロジェクトマネジメント手法の進展によりIT業界では形式知の集積は進んできた.しかし一方でコロナ禍の影響からコミュニケーション不足を起因とするプロジェクトマネジメント不良によるコスト超過プロジェクトが増加傾向にある.このプロジェクト成功率の減少は特にコスト超過と直結するため,コスト超過が顕在化するよりも前に,早期にコスト超過プロジェクトを検出し対策を講じる必要がある.本対策として当社では,AI機能を使用して,コスト超過プロジェクトを早期に検出する施策を実施した.その目的はプロジェクトメンバに対して気づきを与え,コスト超過に対して早期の対策実施を可能とすることである.本稿ではこれらの施策の内容とその結果評価,及び今後の課題を述べる.


建設工事部門におけるヒューマンエラー防止活動の一事例

小形 絵里子,吉積 一斉,河内 福賢,飯田 貴史,大倉 聖一,中島 雄作


我々の会社は,システムプラットフォームを主な事業領域とするSIerであるが,一部,建設工事部門も存在する.当部門は,データセンタ(ファシリティ)の設計・建設工事・保守運用・コンサルティングを事業領域としている.近年,ヒヤリハットの事例が複数見られ,未然に,作業ミスが発生しないよう作業品質改善活動を展開した.今回は加えてヒューマンエラー防止に着目した.ヒューマンエラー12分類を元にリスクを洗い出し、ヒューマンエラーの対策に有効な11のフレームワークに基づいて,対策立案していった.本稿では,建設工事部門におけるヒューマンエラー防止活動の一事例について述べる.


テレワークベースのプロジェクト推進における 円滑なチームコミュニケーションの実現
- 簡易バーチャルオフィスと心理学ラポール手法の活用 -

小林 美苗,村岡 千紗


近年,ニューノーマルな働き方として様々な企業がテレワークを導入している.弊グループも離れた拠点間で,大規模かつテレワークベースのプロジェクトに参画している.顔が見えないプロジェクト推進において,多くのメンバが,チームのコミュニケーションに不安を抱いている事が判明した.円滑なコミュニケーションを阻害する課題である,メンバの顔が見えないという不安や,気軽に会話が行える環境づくり,面識のないメンバ同士の心理的抵抗感に対して,施策を検討した.Zoomのブレイクアウトルームを活用した施策と,心理学ラポール手法を活用した施策を実施し,効果を検証した.検証の結果,同じプロジェクトルームで共に作業をしている様な環境が生まれ,チーム内・チーム間のコミュニケーションの活性化や孤立感の軽減が実現出来た.各個人のミーティング管理やPMOによるチーム間の調整に必要となる作業工数が削減されるという結果も確認出来た.これらの結果は,大規模かつテレワークベースのプロジェクトであっても,チーム間の距離を感じさせない活発なコミュニケーションの実現により,円滑なプロジェクト推進が可能であることを示す.


PMメンタリングの有効性に関する一考察
- 50グループを統括した事務局だからいえること -

渡辺 由美子,北條 武,中島 雄作


NTTデータでは約20年前からメンタリング手法に着目し,PM育成の研究及び実践を行ってきた.約10年前からNTTデータユニバーシティとNTTデータグループ品質保証部が事務局として,PMメンタリングの運営を行っている.育成効果を高める運営事例について,2022年度の本大会に発表した.本稿では,昨今のNTTデータのメンタリングではどのようなテーマで議論をし,メンタのどのような言葉で気づきを得ることができているのか,また,知識,コンピテンシのカテゴリ別に分析した成長例についてポイントを紹介し,効果の評価を行い,今後の課題について述べる.


ありそうでなかったコミュニケーション手法の有効性についての考察
- 実際に活用することで学んだ有効なマネジメント手法 -

石村 裕里


プロジェクトマネジメントというものは常に進化しており,プロジェクトマネージャーとしてより良い手法を追い求めるのは当然のことであり筆者もまた,多くの他のプロジェクトマネージャーと同様に自然とそのようにしてきた.新たなプロジェクトに参画するたびに,常にこのプロジェクトにおけるマネジメントはどのようにすべきかを自身の経験や学習した知識,そのプロジェクトの環境や特徴,メンバーの構成や性格により試行錯誤しながら確立させてゆくものである.特にコミュニケーションの分野においてはCOVID-19の影響で急速に進んだリモートワークにより、一からコミュニケーションについて考え直さなければならなくなったプロジェクトマネージャーは数多くいると思われる.本論文では,これまで筆者が経験したコミュニケーション手法の中で最も画期的だと感じたあるコミュニケーションツールについて,その有効性を筆者の実際の経験を交えて解説する.


超短期プロジェクトの推進事例

石川 峻


2020年コロナ初期,日本のビジネスシーンにおいても大きな混乱をもたらした.筆者の環境においても在宅勤務の拡大に伴うリモートワーク環境の緊急増強,複数プロジェクトの中止による要員のリリース等が発生し,従来に比べ推進が難しいプロジェクトが多数発生した.今後も災害の発生等により通常のプロジェクトマネジメント手法通りには進められないケースが発生するものと考える.本稿では,イレギュラー発生時のプロジェクト推進をテーマに大手金融機関様向けのリモートワーク環境増強プロジェクトについてご紹介する.2週間という「超短期プロジェクト」を完遂した経験から,体制の組み方,ユーザ折衝の変化等について自身の考察を交え提言する.


アジャイル開発の自己組織化の特徴についての検討

平井 直樹


不確実性が前提となりつつある時代において、これまでのリーダーや管理者を中心とした中央集権的な権限を個人やチームそのものに権限移譲し、分散させ、さらに自律的に変化に対応して行動することができる自律分散型組織が着目されている。こうした自律分散型の組織の一つとして挙げられるのがアジャイルであるが、その特徴の一つである「自己組織化」についてはあまり研究が進んでいない。アジャイルソフトウェアの12の原則では、最良のアーキテクチャ・要求・設計は、「自己組織的なチーム」から生み出されると述べられているが、スクラムガイド2020では、これまで「自己組織」と表現していた文言が「自己管理」という表現に代わられている。そもそもアジャイルにおける「自己組織化」とはどのようなものであろうか。本研究では、この自己組織化について先行研究より考察する。


海外パッケージ製品活用によるスクラッチ開発からの脱却を目指すプロジェクトのマネジメント手法

谷口 幸生


近年, 業界ではスクラッチ開発による最適化よりも, 標準化準拠・開発迅速化・開発費用低減を重視する傾向が増しており, ミッションクリティカルなシステムでも同様の要望が見られる.本稿では, その具体例として, 従来のスクラッチ開発からパッケージ製品活用による標準化・高速・低コスト化の実現に成功したプロジェクトを紹介する.パッケージ製品を活用するためには業務仕様に加えてパッケージの知見も必要であり, 海外製品ベンダーとの体制構築にあたっては海外要員との開発プロセスや考え方の違いを考慮する必要があった.そのため, 海外要員を活用するための体制, 品質向上の取り組み, 密なコミュニケーション手法を考慮・導入し, PJを完遂した.本論文では, これらの取り組みをもとに, 「パッケージ製品を活用したスクラッチ開発からの脱却」に向けた課題と, パッケージ・海外要員活用の勘所について論じる.


クラウド移行を推進する組織(Cloud Center of Excellence)を立ち上げるプロジェクトの課題と解決策について考察

畠 俊一,山内 貴弘,羽田野 孝,原田 裕治


既存の業務システムをクラウド環境へ移行するプロジェクトが年々増加している.業務システムを移行するプロジェクトでは,オンプレミスからオンプレミスへ移行する時とは違った視点が必要になる.この移行プロジェクトを安全に立ち上げ,遂行していくための全社横断組織としてCloud Center of Excellence(CCoE) 組織を立ち上げる事例が増えてきた.本稿では,お客様の組織内でCCoE組織を立ち上げるあたり参考としたフレームワークの紹介と,そのフレームワークを活用した結果について考察する.次に,CCoE組織を立ち上げるプロジェクトでお客様とどのような役割分担としたかを整理する.最後にそのプロジェクトの中で直面した課題と,その課題に対する解決策について考察する.


品質保証担当GのPM支援活動について

水村 健一


品質保証を目的とした部署におけるプロマネの支援活動について、ウォーターフォール型PJの各工程での支援と、開発プロセスや成果物に対する品質評価でプロジェクトの品質改善に貢献してきた活動を紹介する。これまでに品質向上に貢献できた支援活動について、進めてきた品質改善活動の詳細を共有し、その評価と今後の方向性をまとめる。


データドリブンによる失敗プロジェクトの予兆検知
- AIとロジックの二刀流で挑む -

青木 政之


失敗プロジェクトは,企業経営に大きなインパクトをもたらす.失敗プロジェクトを減らすためには,専門家や有識者の監視が必要である.しかし,その数は限られているため,全プロジェクトの監視は困難である.そこで,プロジェクトデータから,AIとロジックの2手法を利用し,失敗プロジェクトの予兆検知に挑んだ.結果,AIによる検知率42%,ロジックによる検知率80%を得た.今後の課題は,検知精度の向上である.


パーパス経営の視点からみたアジャイルメソロジーに関する一考察

新谷 幸弘


本研究の目的はパーパス経営の視点からアジャイルメソロジーを再考察し、その交差点を探求することである。パーパス経営とは、企業が自らの存在意義を明確にし、それを経営の中心に据えることで、戦略の方向性を強化する経営手法である。他方、アジャイルは組織が市場の変化に迅速かつ柔軟に対応するためのマネジメント手法である。表面的な違いこそあれ、アジャイル手法とパーパス・マネジメントは、戦略的アジリティと組織の目的意識の向上という共通の目標を追求する上で交差している。本研究では、この2つの概念がどのように交差し、相互作用しているかについて理論的に分析する。


金融機関における社内WEBシステムのアジャイル開発事例

小嶋 祐貴


近年、社会や企業を取り巻く環境が急激に変化する中で、リリースまでの早さや仕様変更に対する柔軟性を持つアジャイル開発が注目を浴びている.本稿で説明する社内WEBシステムの開発事例についても、同様のニーズからアジャイル開発(スクラム)を採用している.採用の際、金融機関としてお客様が求める「品質(本番環境と同等の環境でのテストをパスする必要がある)」や「セキュリティ(テストデータをお客様のイントラネット外に持ち出せない)」といった特性から「ビルド・テストの自動化(CI)やリリースの自動化(CD)を全体に適用ができない」や「一部のプロセスを在宅環境で行えず、コロナ禍においても出社の必要があった」といった課題があった.それらの課題をどのように整理して開発プロセスに落とし込んだかを紹介する.


ウォーターフォール開発に照らしたアジャイル開発の品質管理事例と考察

別府 薫,佐伯 明音,遠藤 圭太,仁尾 圭祐


昨今ではビジネス変化の激しい時代であり,従来のウォーターフォール型の開発では,市場・顧客のニーズに答えることが難しくなっている.そのため,新しい機能を短期間で継続的にリリースするアジャイル開発を採用するプロジェクトが増加している.しかし,開発実績が多くノウハウのあるウォーターフォール開発と比較して,アジャイル開発は実績が少なく品質管理手法も明確に定まっていない.本論文では,アジャイル開発のアプローチを品質管理視点で分類し,実案件に適用した品質管理事例を紹介する.さらに,ウォーターフォール開発における品質管理のアプローチと比較した際に,どのような差異があるのかをまとめる.


On-the-Job Trainingに対するスキル習得サポートとプロジェクトチームの在り方に関する考察

中島 大寿


日本国内においてIT人材が不足している中で,企業ではIT人材の確保や社内人材のリスキリングの実施など,あらゆる取り組みを実施している.人材育成のため社内教育制度の充実を図り,情報習得型のスキル習得は進む一方で,実務レベルでのスキル習得には場の提供だけでは十分に習得できない状況があると考える.筆者は自身が担当したプロジェクトに参画したOn-the-Job Training (以下,OJT)メンバーや自社部門において,技術的スキル習得がうまく進まないメンバーに対し,どのような課題や背景があるのかを考察した.IT技術だけでなく,コミュニケーション面や心理的安全性もスキル習得向上に関連していると考える.OJTでのスキル習得のためのサポートやプロジェクトチームでOJTメンバーを受け入れる際の体制,OJTメンバーとのコミュニケーションに関して考察する.


短納期開発プロジェクトにおける効果的な変更管理手法について

橋爪 大


お客様を取り巻くビジネス環境の変化は著しく,発展を続けるデジタルテクノロジーに順応することで競争力を高め,ビジネスを展開し続けていくことが必要である.そのため,今日のシステム開発では開発の短納期化が進んでおり,PJを成功に進めるためにはPJ開始前に立てる計画が重要である.だが,計画通りにPJが遂行することは難しい.なぜなら,遂行していく過程の中で様々な課題が生じるためだ.その課題の1つに成果物の仕様変更が挙げられる.仕様変更対応によるスケジュールインパクトを抑えるために,仕様変更をどのように管理していくか,その変更管理手法について紹介する.


上位上長によるプロジェクトマネージャーの管理施策について

杉山 昌彦


IT業界は独立・転職などによる優良人材の減少・人手不足が深刻な問題となっている.そういった状況の中,若手メンバーを積極的にプロジェクトマネージャーに登用することによる組織力の底上げを図っているが,経験の浅いプロジェクトマネージャーは,プロジェクト関係者との信頼関係の欠如や不満拡大の予兆に気づくことができず,プロジェクトメンバーからの報告の遅延や報告事項が後になって覆される事を経験している.本稿では,プロジェクトの事例を通じて,プロジェクトマネージャーの上司という立場で,プロジェクトマネージャーとステークホルダー間のコミュニケーションを中心に実践計画を立て,検証した結果および考察・改善点についてまとめる.


プロジェクトマネージャー育成における効果的なコンピテンシー開発モデルに関する考察

池田 浩


近年,システム開発は従来のシステムインテグレーションだけでなく,アジャイル開発やDX,IoTといった新しいテクノロジーやビジネスアーキテクチャーをふまえたプロジェクトの推進が求められる場面が増加している.これらのプロジェクトの品質,予算,納期に責任を持つプロジェクトマネージャーについて,新たに育成するだけでなく,既存の人財を適合させていく取り組みも重要となる.人財の育成について,外形的な診断が可能な知識や経験,スキルに偏りがちだが,普遍的な能力としての「コンピテンシー」を伸ばすことがロバストなプロジェクトマネージャーの育成に重要である.


ハイブリッド開発における優位性および更なる改善への展望

塩谷 春生


プロジェクトを成功裏に遂行するためには,ユーザーから要件を適切に聞き出し,合意形成を経てプロジェクトを遂行する事が重要であることは言うまでもない.ただ,どのように詳細に要件定義フェーズで要件確認を実施しても,後続フェーズで変更要求は発生する.これは後続フェーズでシステムが具体化することにより気付けることがあるからだ.近年ではアジャイル開発の手法を用いることで,変更要求を最小化する工夫をするプロジェクトが多くなっているが,一方で,大規模プロジェクトでは,全体開発規模の立てやすさなどから,未だウォーターフォール開発を利用することが多くを占める.本稿では,変更要求が多くでる機能群と,変更要求があまり出ない機能群が明確に分かれる場合,開発手法を分けて進める「ハイブリッド型開発」を用いることで,その優位性について言及するとともに,注意するポイントを考察する.また,本稿執筆時点では解決できていない課題事項にも触れ,より効果的なハイブリッド型開発についても展望する.


プロジェクト満足度評価スコアモデル開発の試み
- スコアモデル開発のメソドロジー 実践編 -

福田 淳一


本論文は筆者が2021年PM学会秋期研究発表大会で発表した「スコアモデル開発のメソドロジー」の実践編である.筆者はスコアモデル開発の技術をより実用的なものとするべく,オープンデータ及びフリーソフトであるRを使ったスコアモデル開発を試行している.本論文は現在試行中である,ソフトウェア開発分析データ集2022のデータを使ったプロジェクト満足度評価スコアモデル開発の中間報告である.中間報告ではあるが,開発したモデルではプロジェクト満足度スコアを向上させるためには,コストと品質の評価が重要であることを示唆している.また,コストのみの評価は却ってプロジェクト満足度を低下させることも示唆している.開発途上のモデルであるので変数選択及びその離散化等モデルのチューニングが十分できておらず課題は残っている.今後取り組む予定である.


UI/UXを考慮したシステム開発におけるプロジェクトマネジメントについての考察

久保田 次郎,松尾 拓郎


近年システムにおけるUI/UXは重要なテーマとなっているがシステムの機能要件/非機能要件と異なり定量的な定義が難しくプロジェクトを推進するうえで後戻りのリスクとなりうる。本論文ではUI/UXの要求レベルが高い新規プロジェクトにおいてQCDを確保するうえでの課題と、その解決に向けて取り組んだ内容および成果について論じる


オフショア開発を成功に導く秘訣

安田 憲司


オフショア開発は,主に以下のような目的で利用される.コスト削減: オフショア開発を利用することで,開発にかかるコストを削減することが出来る.一方,オフショア開発には注意すべき点も存在する.Face to Faceでの会話が難しい環境のために,コミュニケーションの困難さがある.また,遠隔地でのメンバーアサインとなり,作業状況を直接見ることができないために,チームミーティングやレビュー体制等を考慮し,求められるアウトプットが出せる環境を準備し,適切なプロジェクト管理手法の導入が重要となる.本稿では実際にオフショア開発での経験を踏まえ,具体的に取り組んだ事例や対応策を紹介する.


複数案件対応プロジェクトマネージャ育成における評価と考察

児島 伴幸


昨今のインフラ技術の多様化により,日々,技術が進化している.技術が複雑になり,要件定義から運用までプロジェクトの全体を依頼する顧客も増えている.同時に,顧客主導のプロジェクトも多く,プロジェクトの一部のみを担当する中小規模の案件も増えている.このような背景から,顧客が当社へ期待する内容に変化が生じており,当社は,大/中/小規模案件を柔軟に対応する必要があった.本書では,チーム編成とプロジェクトマネージャ育成を,タックマンモデルを用いて実績から評価する.収益,品質,育成,モチベーションの4つの観点で考察する.


ローコード開発導入の成功要因と課題

吉澤 憲治


ローコード開発基盤は、近年働き方改革やDXを加速する日本企業で導入が急拡大している。ローコード開発は、ビジネス部門が自ら開発する市民開発も期待されており、IT人材不足と高齢化が進む中でビジネス変革を進めなければならない日本のIT業界において非常に注目度が高い。当社においても例外ではなく、社内DXを早急に進めるため2021年にローコード開発のCoEを組成し、社内展開を開始した。2023年7月現在において30プロジェクトがローコード開発を取り入れている。本紙では、ローコード開発導入にあたり当社で実践した施策を「戦略」「ガバナンス」「プロセス」「リソース」の4つの観点で報告する。また、市民開発を中心とした今後の取り組むべき課題についても報告する。


大規模マイグレーションプロジェクトにおけるレビューア負担軽減施策

安田 清人


本論文では,大規模ミッションクリティカルシステムのHWマイグレーションプロジェクトにおけるレビューア負担軽減策を検討する.IT人材確保競争とクラウド技術シフトにより,オンプレミスシステムプロジェクトで新規参画者のスキル低下に伴うレビューア負担が問題化している.主要課題として「過去資料の再利用誤り」や指示不足やごく単純な誤りを示す「非エラー扱い」が多いことが明らかになり,原因として新規参画者のセルフチェックスキル低下や暗黙知への依存が挙げられる.対策として新規参画者向け教育,設計工程改善,セルフチェックシート導入を提案し実施.対策後のデータから負担軽減と品質向上が確認されたが,今後の調査や対策が必要であることが示唆された.


ChatGPTを用いたWebアプリケーションの開発

井野 駿也,關 咲良,小笠原 秀人


今、世の中では様々な問題を解決する1つの手段として、ChatGPTが活用されており、その注目度は飛躍的に上がっている。そこで筆者らは,大学の講義にて,プロジェクトマネジメントに関する知識を活用し実践する,プロジェクトマネジメント演習(以下,PM 演習)と呼ばれる PBL(Project Based Learning)に取り組み,WEBアプリケーションの開発プロジェクトを行った際、プログラムを作成する上で行き詰まった場合や発生した問題をChatGPTを活用し解決した。このChatGPTを活用し解決した問題、またChatGPTによって逆に起きてしまった問題をまとめ、Webアプリケーションを開発する上でのChatGPTの活用方法について提案する。


マルチベンダ体制におけるプロジェクト管理の対策と効果

岩重 博行,中谷 悟,米倉 伸輔


昨今,情報システムの老朽化・HW保守停止などにより,現行システムの更新が必要となるケースが増加している.私の担当顧客(A社)でも同様にHW保守期限が迫っているシステムがあり,新システムへの更新が急務となっている.今回更新対象となるシステムについては関連する周辺システムが多く,更新の影響は複数システム・複数ベンダに及び,プロジェクト自体はマルチベンダ体制となる.そのため難易度が高いプロジェクトであるが,顧客体制の問題(人材不足)からシステム企画が進んでない状況であった.さらにA社はコロナ禍による減収により十分なプロジェクト予算の確保が難しい状況であった.この状況を克服するためには,「マルチベンダ体制のコントロール」「顧客体制」「納期・コスト」などの課題への対策と高度なリスクマネジメントが必要となった.本論文では,マルチベンダ体制におけるプロジェクト管理の課題に対する対策とその効果について考察する.


コミュニケーション能力の体系化と誤解回避支援システムの提案

石井 優輝,下村 道夫


コミュニケーション能力は,組織でのプロジェクトマネジメントで中核となる能力の一つであり,採用の選考においても重要視されている.しかし,コミュニケーション能力が指し示す具体的対象の種類は極めて多く,組織や職種によってどの能力を指してコミュニケーション能力と呼んでいるかが異なる場合が見受けられる.例えば,プレゼンテーションを流暢に行えるといった表面的な能力を指していたり,相手の気持ちや立場を察して先手を打って行動を起こせるといった内面的な能力を指したりする場合がある.本稿ではこの問題に対して,コミュニケーション能力が指し示す具体的対象を整理し,包括的に体系化した形式知を作成し実社会で広く活用してもらうという解決アプローチを提案する.これにより,コミュニケーション能力という用語の使用時に生じる誤解を回避することを狙う.


学生の講義聴講意欲を高めるための教員の魅力度向上に関する一考察
- 映像・音声のリアルタイム変換技術の応用 -

浦川 恵一朗,下村 道夫


近年,大学の講義における学生の受講態度の悪化が問題になっている.例えば,遅刻や早退,居眠り,過度な私語,教材以外のコンテンツ利用(ゲーム・漫画・Youtube)などが挙げられる.これらの原因としては,学生の修学意欲の低迷(講義への関心がない),合格判定基準の低下(問題容易化,再試の実施など),教員の魅力の低さ(容姿,声質や話し方など)が考えられる.特に,大学教員の年齢層は40~50代がほとんどを占めており,学生世代との年齢差による教員の魅力低下が原因となる場合が多いと考えられる.本稿では,この問題の一解決手段として,最近の魅力的コンテンツである「タートル・トーク」やVTuberで用いられている映像・音声のリアルタイム変換技術を教員が行う講義に適用することを提案する.これにより,教員に対する興味や親しみを持ち,学生の講義への聴講意欲を高めることを狙う.


疑似量子アニーリングを活用したプロジェクトの進め方

島田 直享


製造業A社が、出荷計画の立案を従来のやり方であるカンコツから疑似量子アニーリングを活用した最適化手法へ変更することを試みた。技術検証(PoC)により、疑似量子アニーリングの結果のランダム性やインプットデータの変化による影響、求解性能、業務ルールの抜け漏れなどの課題を発見した。プロジェクトの進め方としては、ユーザの参画を通じた品質確認、手戻り工数を減らす工夫、検証のプロセス変更などを提案した。現在は追加検証1の段階であり、疑似量子アニーリングの実用化に向けたノウハウを積みながら取り組んでいる


システム開発におけるツールを利用した「非対面コミュニケーション」の考察

青山 直樹


新型コロナウイルスの拡大により、システム開発プロジェクトの現場もテレワークなどの在宅勤務、リモート会議、クラウド利用の様々なコミュニケーションツールを利用した「非対面コミュニケーション」を中心としたプロジェクト管理となった.私達はSalesforceの導入・開発プロジェクトが中心である.私達はそれらプロジェクトを通して、在宅勤務での分散開発、二アショア、オフショアを行いながら、開発を行ってきた.その中でチャットシステムなどを使用した課題管理、情報共有のコミュニケーション方法事例を挙げながら、The New Normalとなったシステム開発における「非対面コミュニケーション」を考察していく.


大規模リモートプロジェクトにおけるメンバーのモチベーション向上を促進するコミュニケーションルールの考察

小椋 大輔


複数チームからなる大規模プロジェクトかつリモート開発において,メンバーのモチベーションがシステム品質と開発生産性に与える影響に着目している.そのような状況下では,共通認識の難しさやその手間がモチベーションの低下に影響する.簡潔な対処方法としてコミュニケーション機会の増加が考えられるが,大規模・リモートの制約下では,メンバーの数の多さや物理的距離という制約から,小規模・対面のプロジェクトと同様の気軽なコミュニケーションを実現することは難しいため,コミュニケーション機会の増加を見込みにくい.すでにビデオ会議やチャットツールが導入されている前提で,「簡潔な日報の活用」や「フィードバック文化の構築」など,情報共有とメンバー間の交流を重視したアプローチで,モチベーション向上を目指した.今回考察した手法とその実践結果を元に,有用性について考察する.


複合確率過程モデルに基づくエッジサーバの最適化に関する 感度分析とその応用

藤田 航平,宮本 翔一郎,周 蕾,田村 慶信,山田 茂


現在,データをクラウドによる一極集中で処理・記録するのではなく,分散化したエッジサーバで処理するエッジコンピューティングが普及しつつある.エッジコンピューティングにはオープンソースソフトウェア(Open Source Software,以下OSSと略す.)が用いられているが,そのような運用環境の場合,OSSだけではなくデータベース上で発生する故障などを考慮することが必要となる.先行研究では,ウィーナー過程を用いることで,定常的な開発工数の変化のみを考慮していた.本研究では,ソフトウェア特有の突発的なノイズに対応できるジャンプ拡散過程を導入した複合確率過程モデルを提案し,エッジ環境におけるソフトウェアの最適メンテナンス問題を扱い,その感度分析と適用結果について考察する.


ソフトウェア開発者向けIaaSサービスにおける利用者移行のマネージメント事例

早川 芳昭


ITサービス提供事業者では,システムの老朽化や他の理由により,やむを得ず利用者を旧システムから新システムへ移行させる必要が生じることがある.今回取組んだプロジェクトは,IaaSサービス提供事業における利用者移行プロジェクトで「利用者に移行作業を進めてもらう必要がある」という特性があり,「利用者が実施する移行作業が複雑で失敗リスクが高い」といった課題があった.この課題に対して対策を行うことで,利用者が移行作業で失敗することを未然に防ぐことができ,プロジェクトとしても致命的な事故無く,利用者移行を成功させた.本稿ではこの利用者移行プロジェクトのマネージメント事例で実施した対策や工夫点について述べる.


システム構築プロジェクトにおける設計工程の重要性と見積りリスクの軽減に対する施策実施

梅木 美裕


システム構築プロジェクトにおいて上流工程は、プロジェクトの成功に不可欠なフェーズであると同時に、見積り誤差を引き起こすリスクも持ち合わせている。本論文は、実際のプロジェクトデータから上流工程の重要性と見積もり誤差との相関関係を調査・分析し、プロジェクトマネジメントにおける上流工程の意義と重要性を述べるとともに、見積もり誤差軽減のための具体的な施策案を提案するものとなる。


DXを生き抜くプロジェクトマネージャーに求められる3つのコンピテンシー

湯浅 英人


デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいる企業の割合は年々増加しており,企業戦略としての重要性が高まっている.一方,DXに取り組んでいない,または,成果途上の企業も数多く存在しており,これらの企業はDXのプロセスであるデジタイゼーション,デジタライゼーションにおいても途上の状態である.DXの推進において人材が課題と言われている中で,お客様と多くのコミュニケーションを図っているプロジェクトマネージャーの役割がますます重要となり,従来の品質,コスト,納期,リスク管理に加えて,お客様と共に創造(共創),共に発想(共想)できるプロジェクトマネージャーが必要と考える.DXが重要視されている状況においてプロジェクトマネージャーに求められる3つのコンピテンシーを提言し解説する.1.お客様とお客様の業界を知る2.実践に向けたお客様にとって臨場感がある提案と共創を推進する3.お客様と共に先見的な発想をする(共想)


DXプロジェクトにおける開発・運用プロセス効率化(DevOps導入)とアプリケーションのモダナイゼーションにより高生産性・高品質を実現したプロジェクトマネジメント事例

七田 和典


近年,IT技術の急速な発展により次々に新たな製品やサービス,ビジネスモデルが生まれており,デジタルトランスフォーメーション(以下DX)の時代だと言われている.DXの時代で企業が生き残っていくためには不確実性が高い創造や変革を迅速に実現していく必要があり,新規性・難易度の高い要件の実現や新技術・新製品への対応を短期間で求められるDXプロジェクトが多く発生している.本稿では大手金融機関のDXプロジェクトにおける不確実性に対応し短期間でのシステム開発を実現するため,アジャイルプラクティスの導入,CI/CD・テスト自動化の導入,APMソリューションの導入といった開発・運用プロセスの効率化(DevOps導入)と,マイクロサービスやコンテナといったクラウドネイティブ技術の活用によるアプリケーションのモダナイゼーションにより高生産性と高品質を実現したプロジェクトマネジメント事例を考察する.


BtoB企業の社内システムにおけるローコードアプリケーション開発に関する一考察

石川 雅人


近年, 日本の多くの企業において, 「ビジネススピードの加速による新規アプリケーション開発のニーズの増加」「IT人材の不足」などの理由から, ローコードプラットフォームの導入が急速に進んでいる.また, ローコードプラットフォームの導入により, アプリケーション開発の内製化が促進されている.当社の社内システムにおいても「Mendix」「ServiceNow」といったローコードプラットフォームを導入し, アプリケーション開発の内製化を進めている.本稿では, 当社が開発してきたローコードアプリケーションの事例を紹介し, アプリケーション開発に関する課題とその解決手段について考察する.


顧客の要求仕様で定められた開発スケジュール(クリティカルパス) におけるプロジェクトマネジメントの施策と効果

石栗 智裕,永井 進之介


我々が提供しているシステムは公法人の業務効率化を目的とし、RFPという顧客からの要求仕様に沿った提案を行う入札が前提となる。要求仕様には顧客特有のカスタマイズが開発スコープに含まれているため、カスタマイズ内容が当初想定から増大しスケジュールの遅延が発生するリスクがある。今回受託したプロジェクトでは特殊なカスタマイズが多いことに加え顧客の要求仕様で定められたクリティカルパスの遵守が求められたため、提案時のスケジュールから詳細設計、製造・単体テスト工程の短縮が必要となった。上記に対して顧客上層部の関与、フィージビリティを意識したプロジェクト遂行、開発実施体制の早期構築、ファスト・トラッキングを用いた並列化を行い、クリティカルパスを遵守した。この成果は、スケジュール短縮が必要となるプロジェクトの遅延防止に有効であると考える。同時に今後のプロジェクトマネジメントの効率化についても考察した。


テレコムネットワークシステムにおける独自開発手法の有用性に関する考察

房山 渉


ITシステムの多くは,VUCA時代に相応しいシステムを開発することを目的として,アジャイル開発手法を採用している.一方,ITシステムであってもミッションクリティカルなシステムは,要件変動が少なく,開発ボリュームも大きいため,ウォーターフォール開発手法を採用している.我々の開発しているテレコムネットワークシステムについても,ミッションクリティカルなシステムであることから,ウォーターフォール開発手法を採用していた.しかしながら,近年のテレコムネットワークシステムは,多種多様なプロダクトがネットワークに接続され,競合他社に先駆けて新しいサービスを提供する必要が生じ,要件変動が多く発生するようになった.そのため,1年間かけて開発していた機能を細分化し,現状のウォーターフォール開発手法は変更せずに,短期間かつ数回に分けて提供する手法を用いたが,様々な課題に直面した.本稿では,ウォーターフォール開発手法を短期間で実行する手法に加え,直面した課題に対してどのように解決したかを新たな開発手法という切り口で提言する.


大規模プロジェクトにおける移行品質改善事例を通じたチーム横断の品質課題への対応に関する考察

中村 匡伸


大規模システム構築プロジェクトにおいては従来から様々なバックグラウンドを持つチームが協業してプロジェクト運営するケースが多いが,近年,さらにその傾向は加速しており,その状況に起因する品質課題の発生リスクが高まっている.そこで本稿では,著者がプロジェクトマネージャー(PM)として参画した大規模プロジェクトにて,本番移行直前(移行リハーサル)で発生した複数回の品質課題を解決して成功裡のサービスインを達成した事例を通して,チーム横断の対応が必要なプロジェクト全体の品質課題に対して,一ベンダーのPMが短期での立て直しのためにいかにリーダーシップを発揮するかを考察する.


ソフトウェア開発を中心とする事業体におけるハードウェア品質推進風土の醸成に向けて工夫した活動事例と成果について

中元 信吾,水澤 浩司,金子 康浩,黒岩 正樹,坂元 隆宏,余吾 貴志


ソフトウェア開発を中心とする事業体において,ソフトウェア開発の品質保証基盤に加え,SIの構成要素の一つであるハードウェアの品質保証基盤を整えることは,体制面等で非常に多くの維持費が掛かり,コスト競争力が低下しかねない.一方,ハードウェアの品質保証の対応を怠ると,法規法令違反といったインシデントの発生や,出荷後の障害多発という事態を招くことになる.これまで,開発委託や購入するハードウェア製品の品質担保のために,最低限実施すべき事項を,品質管理プロセスとして構築し改善を図ってきたが,プロセスの構築だけでは十分ではなく,ハードウェア開発経験の少ない営業やSEにおいても,知識,スキルやマインドが十分でないと,プロセスが適正に運用されないことが分かった.今回,知識面においては技術法規制対応の認識不足,スキル面においては品質管理プロセスを運用する勘所の不足,マインド面においては品質管理プロセスの大切さについて,それぞれ,情報基盤整備に依る知識の拡充,ハードウェア開発リーダー支援によるスキルの向上,定期教育によるマインドの刺激を通して,ハードウェア品質風土の醸成を図った.本論文では,知識拡充,スキル向上,マインド刺激を通して,ハードウェア品質推進風土の醸成に向けて,工夫した点とその成果について述べる.


合意形成に英語ドキュメントを要する開発プロジェクトの推進に関する考察

中西 苑美


国内市場の縮小と海外市場の規模拡大、および海外企業が様々な分野の市場に進出している状況を踏まえ、大企業の海外展開・グローバル化は避けられない課題である。海外ビジネスの推進に当たっては、現地の法規制や商習慣に合わせた対応に知見のある現地スタッフや、実際に現地で業務を行う担当者の協力が欠かせない。海外で利用する業務システムの開発プロジェクトにおいても、そういった日本語を母語としないステークホルダーとの合意形成は不可欠であり、それは意思決定や開発の主体が日本側に存在するケースにおいても例外ではない。一方で、システム開発と日本語・英語双方のコミュニケーションに一定程度の技能を持つ日本人技術者は限定的であることが実情であり、英語翻訳がボトルネックとならない開発体制の検討が重要となる。本論文では、実際に英語ドキュメントの作成を必要とした日本国内での開発プロジェクトを例に挙げ、システム開発の特性に応じた英語ドキュメントの作成方針について考察した。


不採算案件抑止アセット活用によるクオリティアシュアランス及び組織ガバナンス向上支援の取り組み

平方 泰光


システム開発プロジェクトの不採算化は開発ベンダーに多大な影響を及ぼす.QCD確保のため各社さまざまな対策を講じており,弊社でも長年取り組んできた重要テーマである.一方で,システム開発発注側のクライアントでも,失敗プロジェクトとなった場合の影響は多大であり,いかにQCD確保していくかは大きな課題となっている.弊社で培ってきた不採算案件抑止の仕組みをベースにアセット化し,クライアントのクオリティアシュアランス(QA)や組織ガバナンス向上支援に取り組んでおり,進行中のプロジェクトを通じて得た私なりの考察を述べたい.


イベント型プロジェクトにおけるIPMA ICB活用事例

中野 和哉,中島 由恵,神野 学,渡辺 秀樹,後藤 協子


「プロジェクト」の特徴として有期性・独自性の2つが知られているが,展示会や発表会などのイベントは明確に期日が決まっており,ユニークな価値を生み出すためプロジェクトの1形態と考えることができ,本稿ではイベント型プロジェクトと称する.これまで,イベントに対するプロジェクトマネジメントの考え方の適用に関する先行研究は存在するが,現在日本で活用が広がりつつあるIPMA ICBを活用した研究は存在しない.本稿では,一般的なイベントに対してIPMA ICBの考え方がどのように適用できるか論じた上で,具体的なイベントに適用した事例を紹介し,IPMA ICBの中で活用できるコンピテンスについて考察する.


ウェルビーイングなプロジェクト実践事例紹介と考察

野尻 一紀


ウェルビーイングはSDGsの目標3に掲げられ,非常な注目を集めている.本稿では,社会のウェルビーイング向上を目的として進行中のプロジェクトにボランティアで参加した経験と,自身のプロジェクトの改善策としてのウェルビーイング取り組み事例を示す。さらに今の時代に必要なプロジェクト遂行上の考慮点について言及する.プロジェクトのリーダーとメンバー全員が主観的ウェルビーイングとレジリエンスを高め,人間関係のつながりを強めていくことが,プロジェクトの創造性・業績を高め,自己肯定感・自己思いやり感を向上していくために重要である.


ChatGPTを活用したインターンシップの企画と運営のプロジェクトマネジメントの一事例

山口 由貴,上村 興輝,島田 佑磨,小坂 由依,田中 基己,中島 雄作


筆者は当時新卒1年目の新入社員であった.次年度の新卒採用の候補となる学生向けにインターンシップを行うこととなったが,自事業部のカリキュラムの企画・運営のリーダに任命された.筆者は全くのPM初心者だったので,ChatGPTを活用してプロジェクトマネジメントとして為すべきことのヒントを得た.その先は,当社のウェルビーイング経営の方針に基づき、インターンシップをマネジメントしていった.本稿では,ChatGPTを活用したインターンシップの企画と運営のプロジェクトマネジメントの一事例について述べる.


プロジェクトマネジメント技法を活用した二拠点生活の実践

千田 貴浩


二拠点生活とは,首都圏と地方など二つの拠点に住み,行き来しながら生活をすることで,デュアルライフとも呼ばれる.新型コロナウイルスの影響下,リモートワークが普及し,二拠点生活や移住を始めた人が増加している.二拠点生活では,首都圏では文化・教育などの利便性を楽しみ,地方では自然やゆったりとした時間を楽しむといった二拠点の特徴を活かした生活を送るメリットの他,居住費が二重に発生したり,二拠点間の移動時間の考慮が必要といった留意すべき点も存在する.本発表では,二拠点生活のメリットや留意すべき事項にフォーカスをあて,プロジェクトマネジメント技法を活用した有意義な二拠点生活の具体的事例について発表する.


アジャイル手法を用いたDXビジョン・戦略策定支援プログラムの提案

大島 祐子,前田 真輝,大塚 有希子


競争力の強化が目的であるDXへの取組みは増加しているが、各国と比較すると効果は限定的である。情報処理推進機構が公開しているDX実践手引書では、”DX の起点は「目指すべきビジョン」の共有”と示されている。そこで「目指すべきビジョン」を「DXビジョン」と名付け、DXビジョンの策定と共有にアジャイル手法を用いたプログラムを提案する。DXビジョンを策定・共有することでDX推進に組織の力を発揮させ、DXによる変革を実現することが目的である。プログラムでは3回のイテレーションでDXビジョン・戦略を策定する。イテレーションごとのレトロスペクティブでDX推進に必要なステークホルダー分析を行い、次のイテレーションの参加者に加える。段階的に参加者を増やしDXビジョンを評価することで、組織内の意見をDXビジョンに反映するとともに浸透させることができる。また、プログラムで策定した成果物を用いて経済産業省が整備しているDX認定を取得することで本プログラムの有効性を示す。現在、プログラムの構築過程であり、広く意見を求めるため発表する。


ウォーターフォール型とアジャイル型を融合した開発手法の考察

井上 文博


これまでの日本の開発現場においてはウォーターフォール型開発手法が主流であったが,ここ最近ではアジャイル型開発手法を用いる開発現場も聞かれるようになってきた.ある金融会社の開発現場においては,スクラッチで新規に基幹システム開発をすることは完了しており,その後の維持保守開発(エンハンス開発)の段階でのアジャイル型開発手法適用を約2年に亘って試行してきた.アジャイル型開発手法を試行することの目的は,「開発スピードの向上」と「速やかな仕様変更の取り込み」の2点にあった.その試行の中で得た経験と知識をもとに,ウォーターフォール型開発手法とアジャイル型開発手法それぞれのメリットを生かせる融合型の開発手法を模索した.


探索型プロジェクトにおけるチームビルディング
- ~コ・デザイン・プロジェクトの実践と課題~ -

森本 千佳子


近年,産業界ではデザイン思考が注目されている.スタンフォード大学で有名なデザイン思考プロセスや英国デザインカウンシルのダブルダイヤモンドが有名である.いずれも,ゴール志向型のプランナブルなプロジェクトとは異なり,試行錯誤を繰り返しながらゴールそのものを創発・探索する取り組みとなる.いいかえれば,探索型プロジェクトであり,従来のプロジェクトマネジメントとは異なるアプローチが必要となる.いっぽう,ヨーロッパに端を発したコ・デザインアプローチは地域課題や社会課題に対し,地元住民と専門家が「共(コ)」に課題に取り組むアプローチである.そこでは多彩なステークホルダーと関係を結び解決策を探索的に取り組む必要がある.またその活動はゴール達成で終わりではなく,長期的な関わり合いが必要となる.従って,チームとして「共に」活動する基盤が重要となる.本稿では北海道長万部町で実施したコ・デザインの事例をもとに,探索的なプロジェクトにおけるチームビルディングの課題と解決案を述べる.


SAFeを用いた大規模アジャイル開発におけるFinOpsの実践

櫻井 啓明


2010 年代から、ビジネス価値を継続的に創出する為に、環境の急激な変化に対して、素早く柔軟に対応する必要があるとされている。システム開発においてもアジリティが重要視され、多くのシステム基盤でクラウドが採用されるようになった。クラウドを用いたシステム開発における主要課題の一つに、妥当性のある投資計画の立案がある。クラウド利用料は従量課金制による変動費である為、正確に支出状況を把握するのが困難で、容易に予算が超過する。この課題に対して、FinOps という方法論が生み出されたが、Return on Invest の最大化に向けた具体的な作業や道筋は、導入するプロジェクトで試行錯誤する必要がある。最近、筆者が参画するプロジェクトもクラウド財務管理に関する課題に直面した。そこで、筆者は FinOps を特定のプロダクトチームに対して導入し、FinOps の有効性に関して検証した。本稿では、FinOps 実践の検証内容、結果について述べた後、FinOps を実践する上で鍵となる要素について紹介する。


標準システム構成の適用と半導体需給逼迫影響の最小化に取り組んだ複数並行プロジェクトの紹介

山口 智司,須藤 陽介,齊藤 智宏,西谷 智志,平塚 大樹


弊社では長年にわたり、放送局の基幹システムである送出システムを担当している。送出システムとは、番組表に沿って放送局内外の番組素材をフレーム単位に正確に切替制御を行うと共に、緊急時の速報を瞬時に伝達するミッションクリティカルなシステムである。これまでは専用機器を中心としたシステム構成であったが、ICT技術の進展に伴い、映像素材の様な大容量のコンテンツをIP網で構築することが可能になった。新たなアーキテクチャによる送出システムを標準システムとして商用開発を行い、複数のプロジェクトへの適用を行ってきた。標準の適用に向けた客先調整、さらには半導体需給逼迫のリカバリー対応を行い、複数並行したプロジェクトをどの様に進めてきたかを紹介する。


アジャイル型開発の品質管理へのテスト観点カバレッジとDDPモニタリング適用事例

吉澤 由比,町田 欣史,久保 翔達,小嶋 洋二,飯塚 裕一,貞本 修一


アジャイル型のソフトウェア開発では, ビジネス価値を早期にかつ効果的・継続的に顧客へ提供するため, 短いサイクルで高い品質でのプロダクトリリースと, 継続的な改善を両立させる品質管理手法が求められる.あるアジャイル型開発プロジェクトでは, 定量的な品質管理手法として, 開発プログラムコード行数を用いたテスト充足性・バグ摘出妥当性を指標値と比較し評価していたが, 特性が都度異なる小規模開発を短いサイクルで繰り返すアジャイル開発では, マネージャ層および開発者が納得した品質管理活動に至っていないことが課題であった.本稿では, プログラムコード行数によらない品質管理手法である, テスト観点カバレッジとDDPモニタリングを活かし, 開発メンバが日々の開発の品質管理に効率的に納得感を持って取り組むことができた事例と今後の課題を紹介する.


先端IT人材の働き方に関する意識・行動の特徴

三好 きよみ


日本のデジタル競争力は低下しており,その要因は人材不足といわれている.特に,先端IT 人材は,2030年に約30〜50万人不足する見込みである.それには,従来の技術・領域に携わるIT人材の転換やリスキリングなどにより,人材の流動性を高めることが必要である.そこで,本研究は,IT人材の流動性を高めるための知見を得ることを目的として,先端IT人材の働き方に関する意識・行動の特徴について検討した.働き方に関する意識・行動についてアンケート調査を行い,先端IT従事者と従来型IT従事者,非IT人材の3群に分けて比較検討した.その結果,先端IT従事者の特徴として次のことが示された.仕事で通じて人と積極的に関わり,自分の能力や適性に合った働き方を目指している.自己のスキルを認識し,成長のために積極的に行動するとともに,資源を活用しており,自分の興味があることについてはより深く学ぶといった傾向がある.


価値提供に向けたIPMA ICBの活用

三角 英治,佐藤 慎一


IPMA ICBは,プロジェクト,プログラムおよびポートフォリオの各マネジメントを実施する個人が必要とするコンピテンスを定義したものである.プロジェクトマネージャー等の役割としての観点からではなく,プロジェクト等のマネジメントに携わる個人の観点からまとめられている点が大きな特徴となっている.一方,社会やビジネス環境がますます多様化し,プロダクトやサービスを通した価値提供が求められてきている昨今,我々も,これまで培ってきた「Q・C・D」の確保と安定的なサービス提供を実現するだけでは十分ではないと感じていた.価値提供に向けて,従来から取り組んでいたマネジメントの「実践」だけでなく,「視座」や「人材」のコンピテンスを含むIPMA ICBに着目し,活用を検討している.


テレワークで発生するコミュニケーションの課題に対する対応

下村 英嗣


富士通ではテレワークが主流になりつつある.当プロジェクトでも大半のメンバがテレワークに移行している.しかし,テレワークを初めて2年程度の中で生産性の悪化,メンバへの教育不十分,定例会の不備が発生している.ヒアリングを行うと「何を参照したらよいのか分からない」や「プロジェクトの雰囲気が分からない為報告のレベル感が分からない」,「上司やリーダーと会話する機会がテレワーク以外のプロジェクトに比べ極端に少なく話しづらい」などの声が上がっている事が分かった.課題を解消するにはメンバが参画時から使用するツール,参加する会議,テレワークでメンバがよく使うものに対して改善を行う事で,生産性の向上や若手の教育,報告漏れに対する施策を導入した.3つの視点として,Zoomでの質問や相談時にZoomでの履歴検索に特化したフォーマットを導入した.若手の教育については勉強会や簡易1on1の実施,作業計画ツールの導入,定例会については報告フォーマットと意識づけを行った.結果として生産性は1割削減,若手教育についてはアンケート結果から開始前よりも1.7倍理解度が向上した.定例会については報告漏れ0件,打ち合わせ時間超過0件と改善が見られた.本プロジェクトではテレワークで発生するコミュニケーション課題に対して,3つの視点(生産性に対する視点,若手教育・成長に対する視点,定例会に対する視点)で導入した施策を実施することで,今回のテレワークで課題としている事象が解消された.今後は更なる向上の為に3つの視点から更なる改善施策を実施し,他プロジェクトでも実施可能にする.


プロジェクト課題における改善施策の効果測定とそのデータ活用による効率的かつ効果的なアプローチに関する考察

宮田 剛


これまで,プロジェクトを成功に導くために,複数プロジェクト間での成功事例及び失敗事例からノウハウを継承する「第三者による振り返り」や進捗や予算に対する課題の残存量など,プロジェクト遂行上のリスクに関連した「データ(エビデンス)に基づくプロジェクトマネジメント」をPMOとして検討,推進してきた.本稿では,これら2つの試みを踏まえ,プロジェクトの課題解決のための打ち手を検討するに当たって,過去に実施した改善施策が及ぼしたプロジェクトへの寄与度を分析し,そのデータに基づいた,より効率的に又より高い効果を生み出すためのアプローチを考察する.


メンタルヘルスへの寄与を考える2つのテーマ=対話型AIとボランティア=に関する一考察
- PMメンタルヘルス研究会のワークショップや定例会を通して -

西條 幸治


不確実性の増す時代背景や,働き方改革,SDGsの流れを受けて,自律型の取組みが推奨されるようになっている.この,ともすれば息苦しい時代の中,プロジェクトマネジメント学会の研究会の一つであるPMメンタルヘルス研究会では2009年11月のワークショップ以降,毎年ワークショップを実施してきており,2022年度も2月にワークショップを開催した.今回は、当該研究会の創立者であり,現在もメンバーとして参加している前田さんを講師とし,孤独リスクやIKIGAIをテーマにした講演と,それらをテーマとしたワールドカフェとしてのグループディスカッションを行った.本稿では,当ワークショップの様子を紹介しつつ,その中での話題に上がった対話型AIによる孤独リスク回避と,サードプレイス・IKIGAIの一例としてのボランティアについて,定例会での話題提供や現状の考察について論じる.本稿は経過報告の段階であり,研究会の方向性の模索をしつつ継続して取組んで行きたい.


SAFETYフレームワークとブレーンストーミングの比較と考察

波多野 英樹,安達 定昌,中島 雄作


2009年以降年々,全国新聞に載る障害発生件数が増加し続けている.2019年はクラウド,決済システムなど大規模で国民生活に直接大きな影響を与えた障害が発生した.筆者らの運用プロジェクトにおいても,稀に商用環境でトラブルが発生することがある.ひとたび発生すると十分な再発防止策を立案し,顧客説明をしなければならない.従来,なぜなぜ分析をしていたが,有効な対策が考えられていなかった.そこで,筆者らが考案したSAFETYフレームワークと,巷でよく採用されるブレーンストーミングの双方で再発防止策を検討した.本稿では,それらの比較と考察をした.その結果,SAFETYフレームワークが優れていることが確認できた.


プロジェクトマネージャー/チームリーダーのアサインメント手法

吉岡 直紀


プログラムマネージャーとして、プロジェクトマネージャーやチームリーダーのアサインを適切に実施する為、必要なポイントを体系的に纏めましたので展開いたします。