秋庭 茂
PMIのプログラムマネジメントの標準ガイドは,プログラムマネジメントのベストプラクティスとして静的な理想形を示しているといえるが,そのマネジメントプロセスを創り上げていく過程を論じてはいない.本稿は,その補完をめざし,プログラムマネージャーに向けて,マネジメントプロセス創造の指針を示すことを目的とする. 提案する内容は,プログラムの特性,プログラムをとりまく環境,人や組織に関わる先行研究から得られた知見に基づき導出している.また,プログラムの事例として,中長期的に渡り広い範囲のサービスを提供するITアウトソーシングで説明を試みる.
安達 裕、 矢田部 小百合、 鎌柄 拓史、 三宅 由美子、 酒森 潔、 土屋 陽介
ASEANでは製造業を中心に、従来先進国の下請けとして成長した企業が上位企業グループの垣根を越え結びつき、新たな形態の産業集積が形成されている。このような産業集積は産業ネットワークとしてASEAN地域の発展を支える存在になっているが、この新たな産業集積形成の動きは物理的な制約が少ないソフトウェア開発において、より速いスピードで加速しようとしている。本稿では、このような産業ネットワーク時代におけるソフトウェア開発プロジェクトの在り方を概観し、それを模した3国間PBLを通じて得られた気づきと課題を報告したい。
新井 雅之、 石田 保公、 茂木 一太郎
レガシーマイグレーションではリホスト手法が短納期・低コストで実現可能な手法として主流になっている。リホスト手法ではツールを用いてプログラムを自動変換するため,新システムが現行システムと同じ動作をすることを如何に保証するかという点が問題になる.即ち,新旧比較照合テストが品質を保証する上での重要ポイントである.本論ではレガシーマイグレーションにおける新旧比較照合テストの効果的な自動化手法を説明する.レガシーマイグレーションの特徴は(1)動作仕様の基準となる現行システムが存在する,(2)お客様が現行システムの操作方法について熟知しているという2点である.これらの特徴を活用し,以下の手順で自動化を実現した.第一に現行システムでお客様がテストシナリオとなる操作を実施するだけで新システムのテストコードを自動生成するツールを作成した.第二に自動生成されたテストコードを継続的インテグレーションの基盤に組み込み,定期的にリグレッションテストを自動実行した.これらの取組みにより「現行機能を踏襲した動作の保証」と「プログラムのデグレード有無の確認」の2点を効率化することが出来た.その結果としてプログラム品質の維持・向上に繋がり,テストの自動化によりテスト実施に掛かる工数を48%削減するという成果を得られた.
安立 大典
個とチームのパフォーマンスを高めることは、プロジェクトの成功に大きく貢献する。 近年、ビジネスを取り巻く環境の変化は早く激しくなっている。このような環境下でプロジェクトは、要求された提供物を、納期を遵守して提供することが難しくなってきている。そのため、プロジェクトは要求された成果物を提供することに注力する状況となり、個のモチベーションを高めることが難しくなり、プロジェクトを通じたメンバーの成長の期待にも応えられなくなってきている。 筆者は継続型の大規模ITプロジェクトにおいて、継続的な価値創造を目指すプログラムマネジメントと組織的PMを実現するケイデンスPM方法論の適用により、短期にメンバのモチベーションの向上と成長、チームのパフォーマンスの向上を実現した。 個の成長、チームのパフォーマンスの向上および人的資源育成による組織への貢献を同時に実現できるノウハウを提言する。
五十嵐 剛、 荻原 和弘、 廣安 光輝
本論文は、”現場改善”という独創的な活動を行う事で、「プロジェクト(組織)」(以降”PJ”と記述)を形成するステークホルダーの関係を円滑にし、スムーズにPJ活動が実施されることを示すものであり、かつ、PJを構成するステークホルダーが高いやりがいや達成感を持てる、極めて有効な施策についての論文である。 通常のPJにおいては、トップダウンで指示を落として業務を遂行するのが普通であるが、それだけではなく、PJ内にスモールチームを作成し、そのチームのありたい姿をチーム全員で描き、その姿になるための「改善」を自主的にしていくボトムアップ型活動により組織力が極めて高くなることを証明している。
池田 一幸、 高口博行、 黒田祐登
今後,多数のクラウドサービスを組み合わせて活用することにより,スピーディーにビジネス環境を構築する流れが加速していく中で,各所に点在するパブリッククラウドや顧客専用のプライベートクラウド,社内の基幹システム間を連携したハイブリッド型システムが増加する. ハイブリッド型システム実現のためには,プライベートクラウドに関するお客様からの要求仕様を実現することに加えて,プライベートクラウドとパブリッククラウドと基幹システムとの整合性を維持するための連携機能が重要となる.今回は,調達系のハイブリッド型システムを構築したプロジェクトにおける,連携機能の仕様策定と品質確保に向けた取り組みを紹介する.
井上 宏
官公庁の大規模社会システムは,国民生活に大きな影響を与えることから,絶対にシステムを止めることが許されず,高い品質が要求される.このような大規模社会システムにおいて安定稼働を維持・継続していくためには,官公庁業務に係わるノウハウ・ナレッジを蓄積し,品質確保に向けたマネジメント手法(品質確保プロセス)を確立することが重要となる.本稿では,官公庁の大規模社会システムにおける品質確保施策として,「プロセス品質」「プロダクト品質」「要員育成」の観点で改善案に取組んだ.「プロセス品質」の確保においては,工程ごとにプロセス管理簿,機能単位品質一覧を導入し,機能ごとの作業プロセスおよび品質状況の見える化を図った.「プロダクト品質」については,トレーサビリティマトリクス導入による設計段階からの品質確保,顧客による早期動作確認テストを実施した.本施策を導入したことで大規模社会システムの品質確保を図り,2016年1月の稼動以降,本番障害を発生させず安定稼働を実現した.要員育成については施策を継続中であるが,確実な業務スキルの維持・継承を図り,今後の改修における品質確保に寄与していく.
今仁 武臣、 中野 冠
多くのソフトウェア開発プロジェクトはグローバル型である一方,プロジェクトの生産性は手戻り作業等により約50%低下すると言われている。本講演は市場新規性、技術新規性、複雑性、緊急性の4次元からなるNTCPモデルを理論レンズとし、グローバル型プロジェクト(GPJ)の特性と大規模手戻りとの関係を考察する。サーベイにより収集した約120個のプロジェクト事例データを使用した共分散構造分析によると、GPJが大規模手戻りに至るパスは複数あり、それぞれ異なるプロジェクトマネジメント上の施策の必要性を示唆していた。本研究はNTCPモデルとGPJの関係を実証的に明らかにし、多様なGPJを成功させるためのプロジェクトマネジメント方法論の構築に寄与する。
岩崎 泰貴、 井上真二、 山田茂
本研究では,離散時間におけるフォールト発見率に対して,テスト環境要因間の回帰構造を用いることによって,ソフトウェア信頼度成長モデル(software reliability growth model,以下SRGMと略す)に基づく定量的ソフトウェア信頼性評価精度の向上を目的とした,テスト環境を考慮した離散型SRGMを構築する.これまでの一般的な離散型SRGMでは,テスト工程においてソフトウェア故障が発生する確率について,テスト環境を表現する種々のメトリクスが考慮されていない.さらに,適合性を評価するための基準として,平均偏差平方和(mean squared errors)を用いることによって,構築したモデルと従来のモデルとの適合性の比較を行い,本研究で構築したテスト環境を考慮した離散型SRGMの有効性を示す.
内田 吉宣、 海老澤竜、 桶屋勝幸、 山岡彰、 初田賢司
ロスコストとは,当初計画から乖離したことにより発生した費用のことである.我々は,設計の手戻りや品質向上作業などに起因するロスコストを削減するための活動(ロスコストマネジメント)に取り組んでいる.ロスコストマネジメントには,プロセスの改善など組織レベルの活動とともにプロジェクトの推進過程においてロスコストに繋がる失敗の予兆を早期に察知した上で適切な対策を講じるプロジェクトレベルの活動が必要となる.本稿では,プロジェクトレベルの活動支援として,失敗分析に基づくロスコストの発生メカニズムのモデリングとロスコストに繋がる予兆情報からプロジェクトの失敗シナリオ提示からなる失敗予測方法を提案する.
浦塚 剛志
なぜソフトウェア開発プロジェクトは失敗するのか.その原因としては,先行き不透明な経済状態やクラウドサービス普及などの市場変化により,IT投資額が大幅に減少し,開発ベンダ間で価格競争となり,オフショア開発を含めた原価低減が急務となったことが挙げられる.原価を削減した結果,要員スキルミスマッチによる作業品質低下,生産性・開発効率低下や,スケジュール優先によるテスト手抜き作業,手戻りによる原価増が発生し,最終的に失敗プロジェクトになるケースが増加している.そこで組織管理,スケジュール管理,品質管理の3つの観点から,過去の失敗プロジェクトや成功プロジェクトの経験を基に,プロジェクトを成功に導くための具体的な手法やツールを述べる.
海老澤 竜、 内田吉宣
SE作業を高品質化することで事故を削減でき,本来発生すべきではない事故対応に要する費用を抑えることができる.ITシステムを利用・提供する組織全体としてSE作業を高品質化するためには,事故の正しい原因分析に基づく再発防止策の立案や,事故から得た教訓を知識として共有・活用することが重要であり,これはSE事故の「分析」・「知識化」・「活用」という3つのプロセスで捉えることができる.本稿ではMedical SAFERという医療分野の原因分析・対策立案手法を基にSE事故の「分析」を実現するために開発したSE事故分析技術を提案し,公共分野のSE事故に対して適用・評価した結果を報告する.
大澤 賢一郎、 中田 雅弘、 水野 智之 、 山下 禎文
近年、パブリッククラウドサービスの利用が普及してきた。パブリッククラウドサービスでは、従来のITシステム開発の品質マネジメントに加え、開発が終わって運用に入った後もサービスの状況を常に監視しサービス改善の活動を継続することが必要である。これに対し、日立製作所では従来のITシステム開発向けの品質マネジメント基準「品質確保管理基準」をクラウドサービス向けに拡張した。これにより、クラウドサービスの社外事故は2012年をピークに減少に転じ、品質の安定化に効果が認められた。 本論文ではパブリッククラウドサービス向けに拡張した「品質確保管理基準」の概要と、それを実際にクラウドサービスに適用した場合の効果と今後の課題について報告する。
大島 丈史、 丸山 富子
ソフトウェア開発プロジェクトでは,工程の進展につれて規模や工数の見積値と実績値に差異が生ずることが多い.差異が発生する要因には,要件追加による規模増加や開発期間の変動に伴う生産性の差異等の様々な要因がある.したがって,見積との差異を生ずる規模や生産性の変化を把握して増加工数などを予測し,仕様の調整やプロジェクト計画を補正することが求められる.しかし,現実的には規模増加量の正確な把握は難しく,工数や要員数の見積は経験や勘に依存していることが多い.規模把握や工数の見直し等が遅れると,規模増加による設計工程の遅延や,製造工程の圧迫による生産性や品質の悪化などの問題が生ずる. 本稿では,規模,反復回数と習熟度,開発期間等を考慮した生産性に影響を及ぼすデータに基づく見積方式を定式化し,当初の見積時点と比較して規模や開発期間が変動した場合の工数を,勘に頼ることなく容易に算出できるようにしておくことで,仕様調整や要員計画の変更を適時適切に実施し,プロジェクトを円滑に推進できる状態にコントロールするための手法を提案する.
大津 真一
プロジェクトにまつわる教育の方法論として、プロジェクト・ベースド・ラーニング(PBL)がある。プロジェクト型学習とも呼ばれるこのPBLは、従来、プロジェクトマネジメント教育のための方法論として議論されることが多いが、本来的にはプロジェクトマネジメントスキルだけではなく、その他一般の学習テーマに対して適用可能な教授・学習法である。PBLについての理解が定まっていない現状を踏まえ、本論ではPBLについて先行研究を整理し、PBLについての関連概念を整理し、体系化することを新しく提案する。 このことは、プロジェクト・ベースド・ラーニングの共通理解を進め、より一層の議論の促進に貢献することができる。
岡 昭亘
私は,25年間にわたりシステム開発プロジェクト(以下SIプロジェクト)に携わってきた.近年ではICTシステムの複雑化や開発期間の短期化により,プロジェクト難度があがり,PMの重要性は増している.しかし,慢性的なPM不足(人数と力量)の課題もあり,PMに対し,組織的なサポートが必要となっている.本稿では,昨年度に実施したPMの力量を超えたプロジェクトに対して実施した,組織的なサポート事例の紹介する.
岡田 公治
近年,プログラムマネジメントへの関心が高まっている. 本稿では,プロジェクトマネジメント学会標準化検討委員会が纏めた「“Programme Management” を定義するために重要な観点」を基礎として,プログラムマネジメントに関する考察を行う. 考察の主な観点は,(1) プログラムを構成するコンポーネントの要件,(2) プログラム目標とプロジェクト目標の関係,についてである. 更に,優れたプロジェクトマネジメントがプログラムの成功を妨げる場合について述べ,学生によるグループ演習によりこれを実証した. 最後に,プログラムを構成するプロジェクトをマネジメントするためには,一般的なプロジェクトマネジメントに関する従来の知識や手法だけでは不十分であることを指摘する.
奥野 幸一、 山村 直子、 三輪 慶文、 中島 雄作
情報システム運用においてトラブルが発生した場合,ITサービスマネージャは,根本的な原因を究明させ,その原因に対して効果的な再発防止策を打つようマネジメントするであろう.しかし,不十分な再発防止策を打っても,同種のトラブルが再発したり,周辺作業の運用ミスが発生してしまう. そこで,筆者の所属する運用部門では,ディベートを用いたトラブル再発防止策の評価手法を提案する. 本稿では,その手法と現場で適用した一事例について紹介する.
桶屋 勝幸、 海老澤 竜、 内田 吉宣、 山岡 彰、 初田 賢司
ロスコストとは,当初計画から乖離したことにより発生した費用のことである.推進プロジェクトを失敗から回避させ成功に導くためには,当初計画から乖離するリスクを見極めて,ロスコストを適切に管理する必要がある.そのようなリスクに対して,リスク間の因果関係を連鎖させて失敗に至る推移を表現したものがリスク伝播モデルである.リスク伝播モデルによるリスクマネジメントでは,どのようなリスクの連鎖で失敗に至るかを示す失敗シナリオを提示するが,ロスコストと結び付けた管理については考慮されていなかった.本稿は,リスク伝播モデルにおいて,計画修正が発生する時点までのリスク連鎖を示す「アンチパターン」を利用して,適切にロスコストを管理する手法を提案する.
垣原 睦治
SIサービスにおけるソフトウェア開発プロジェクトの品質データを組織レベルで評価することは,様々なプロジェクト特性が影響して大変困難な状況にしている.この問題に対処するために,筆者は,組織で収集した過去のソフトウェア開発プロジェクトにおける品質データから,複数の品質傾向パターン(将来の品質に影響がある品質データのパターン)を抽出して,これを用いて品質評価を行う方法を提案した.この提案では開発工程で摘出されたバグのデータを活用していたが,今般工数等のデータも用いて方法を改良した.この方法を様々なプロジェクト特性を持つ過去のプロジェクトの品質データに適用し,下流工程でのバグ摘出状況や出荷後の品質状況と比較することで有効性を示す.
影山 三希子
昨今、パッケージソフトウェア製品のビジネスはクラウドサービスやOSSの躍進により、新たなビジネスモデルを創る必要に迫られている。ところが、開発現場は長時間残業で疲弊し、新たなビジネスを検討する間もなく日々作業に追われている。この負の連鎖を断ち切るため、CCPMやスクラムを活用してボトルネックの箇所に注力し、平均残業時間を40時間から5時間にまで削減することができた。生産性を向上させ、空いた時間を活用して新ビジネス創出活動に取り組み、富士通ハッカソン(FUJI HACK 2015)では最優秀賞を獲得した。本論文では、実際に取り組んだプラクティスと、その結果メンバの働き方がどのように変化していったかについて論じる。
金子 英一
何らかの理由により, 再開を前提としてプロジェクトを中断する場合は, 再開を前提としないでプロジェクトを中止する場合と比較して, 何をするべきかが明確でないという課題がある. 過去の研究において, プロジェクト中断時のプロジェクトマネジメントプロセスを考案し, そのプロセスを実際のプロジェクトに適用した. 結果として, 効果があることが確認できた. 当論文では, 過去のプロジェクトの中断事例の分析結果を基にして, 中断リスクの識別と対策立案について考察する.
川名 青空、 横山 真一郎
プロジェクトの成功のためには,状況変化に基づきリスクを予見して管理していく必要がある.プロジェクトにおいてリスク特定や適切な対処方法の検討を行う際には過去の経験やデータを活用することが有効である.そこで本研究では,プロジェクトの成功または失敗とそこに至る経緯との関係を把握するために過去に収集したEVMのデータを活用して.進捗状況に基づいて納期遅れまたはコストオーバーとなるリスクの可能性を検討し,プロジェクトの成功及び失敗の確率の推定を試みた.なお,推定に際してはロジスティック回帰モデルを用いた.
紀伊 良祐、 山田 茂
近年,注目され始めているアジャイル・ソフトウェア開発手法は,短納期・低コスト・頻繁な仕様変更といったような近年のソフトウェア開発を取り巻く環境に対応する開発形態であり,従来型の計画を重視するソフトウェア開発とは対極に位置する開発形態である.比較的新しい開発手法のため,開発されたソフトウェア製品の品質・信頼性評価は未だに定着していない.そこで本研究では,アジャイル・ソフトウェア開発手法により開発された製品の品質・信頼性評価に使用できる幾つかのメトリクスを取り上げ,それらを従来のソフトウェア信頼度成長モデル,管理図に適用して分析結果を示し,その考察をする.
木下 和也
大学のビジネス系学部では、プロジェクトマネジメントを専門的に学習できる科目が配当されることは少ない。しかし、この種の学部で学んだ学生が就職する企業によっては、プロジェクトマネジメントの知識やスキルが重要となることは明白である。 特にシステムエンジニアなどの職種については、いわゆる文系出身者が半数ほどを占めているといわれているのにもかかわらず、そのような学生が就職後に企業内研修で同知識とスキルを学ばざるを得ないという状況にある。筆者はこのことをキャリア教育の視点から問題であると感じている。 そこで、筆者は、情報系の授業やゼミナールを学内行事や地域及び地場企業との活動と関連づけることによって、ビジネス系学部に相応しいプロジェクトマネジメントの学習パッケージを考案した。数年にわたる成果と課題を整理し報告する。
木原 純平、 鈴木 邦彦、 神戸 幸夫、 小倉 孝昭、 木本 丈士
大規模システムかつ業務有識者が少ない仕様変更プロジェクトにおいて,どのように品質を確保するのか.この問題で頭を抱えたことがあるPMは多いのではないかと思う.近年,歴史の古い大規模システムにおいて,業務有識者が高齢化して現場を離れてしまう,顧客の入札期間中に開発者を維持できず,業務有識者を離任させざるを得ないプロジェクトなど,業務有識者が少ないプロジェクトが,以前にも増して多く発生している.そのような状況において,仕様変更案件の品質を確保するために苦戦しているプロジェクトも少なくない. 我々は,前年度に障害が多発したプロジェクトを任された.大規模システムにおける仕様変更案件で,中小規模51案件,800人月規模のプロジェクトである.前年度に多発した障害を受けて,品質改善が強く求められるプロジェクトであった.この中で,筆者はプロジェクトマネージャ(以下PM)として,上位マネージャのもと,プロジェクトを管理した.結果として,本プロジェクトは,納期・コストを遵守し,サービス開始後に発生した障害件数は目標の範囲内に収まり,品質目標を達成した.本論文では,本プロジェクトに対する総括の意を含め,より優れたプロジェクトマネジメントに向けた教訓を論じる.
工藤 孝一
2012年学会誌(VOL14.NO.4)に発表した『ソフトウェア開発プロジェクトにおけるリスクマネージメントの実践』では、準委任契約約及び請負契約下でのプロジェクト運営を開発ベンダーのPMとして、『プロジェクト制約3条件』に影響を出さないようにリスクマネージメントを意識的に運用することによりプロジェクト目標を達成したリスクマネージメントについて検証、体系化した。今回は、プロジェクトとして各ベンダーがオーナーと準委任もしくは請負契約を締結した状況で、プロジェクトマネージャとしてプロジェクトを円滑に運営し、プロジェクト目標を達成するためにプロジェクト計画策定から立ち上げまでで実行したリスクマネージメントについて検証、体系化する。
小林 義明
プロジェクト計画の構成要素として、これまでのQCDからQCDEと一文字増え、ステークホルダーのExpectation(期待値)の管理が重要視されている。 また、今日のビジネス状況の変化から迅速にかつ段階的にITシステムを構築するAgile手法のプロジェクトへの適用が進んでおり、従来のウォーターフォール手法での期待値管理とは異なる管理が必要であると考えている。 プロジェクト事例に沿って、Agile手法における期待値管理の方法を紹介し、考察する。
近藤 秀和
プロジェクトや請負取引には様々なステークホルダーが介在し、コンフリクトも多々発生する。対境者やプロジェクトマネジャーには、コンフリクトを円滑に解消する役割が求められる。そのためには、コンフリクトをダイナミックな一連の過程と捉え、その発生要因に焦点を置いて分析することが、円滑な解消方法の根本的理解に繋がると考える。 本検証では、電力業界における工事請負取引や建設プロジェクトにおいて、各ステークホルダー間に発生したコンフリクトのケースを観察し、対境者としてのプロジェクトマネジャー/担当者が夫々の考えを基にとった行動の図式化を行い、コンフリクトの発生メカニズムに関する検証を行う。
齋藤 みいる、 武田 善行
近年,インターネット上の製品評価や意見文が消費者の購買行動や購買意欲に大きな影響を与えている.膨大な意見文を活用するために,肯定的または否定的な単語を推定することで意見文の分類を行う研究がなされている.しかしP/N分析では,単語に対して感情極性値が定められていることが多く,文書内での単語同士の繋がりが考慮されていない.文書が肯定的な内容であっても,使用される単語や単語の繋がりによって否定的な文書と捉えてしまうことがある.本研究では,係り受け関係にある単語の組み合わせに対する感情極性値を推定する手法を提案する.購入者が製品を評価したデータを用いて,感情極性値の総和から意見文の満足度を推定し,性能を評価した結果について述べる.
酒井 理江
特定の業務や特定のパッケージを利用しシステム構築を行うプロジェクトにおいて、特定の範囲が狭ければ狭いほど、経験者や有識者が少ないため十分なスキルを保有した要員の調達が難しい。難易度が高く、カスタマイズや設定作業に特定のスキルを要求される場合に、要求を満足する体制が作れなければプロジェクト立ち上げ後に有識者からスキルを共有し要員を育成する必要がある。 本論文では、あるプロジェクトにおいて、有識者が1名しかいない体制でプロジェクトを立ち上げ、プロジェクト遂行中にチーム内で有識者からメンバーへスキルトランスファーを行い、ノウハウの共有と要員の育成を行うことで、プロジェクトを成功させた事例を紹介する。
坂本 直史
プロジェクトの成功には、プロジェクトチームが効果的に活動を行うことと、プロジェクト内外のステークホルダーとの良いリレーションを築き維持することが必要である。プロジェクトマネージャはこのような人との関わりを的確にコントロールし推進するキーマンとなるため、そのふるまいによってプロジェクトの状態は大きく影響を受けることとなる。筆者が経験した事例では、問題プロジェクトをメンバーの入れ替えを前提とせずに、プロジェクトマネージャの交替とマネジメントの改善により回復を行った。当事例を基に、プロジェクトマネージャが実践すべきふるまいやマネジメントのためのツールについての考察を行う。また、プロジェクトマネージャとしてプロジェクトを成功に導く本質を捉えたマネジメントスタイルの提唱を行う。
佐藤 孝司、 山田茂
ソフトウェアの品質を確保するためには,レビューやテストを着実に行うことが重要である.特に,設計書のレビューは,各工程における成果物の完成度を高め,最終的な品質の確保につながる.また,レビューを十分に行うことができれば,開発途中に検出されたバグの修正作業による後戻り工数を減らし,生産性向上にもつながる. 筆者は,レビューの質を確保する要因としてレビュー記録のテキストから得られる情報から設計品質に影響を与えるレビューのプロダクトメトリクスを測る手段を考えた.レビュー作業を高いレベルで実行できれば,個人のスキルや他の要因による影響に関わらず,設計の成果物の最終的な完成度を高いレベルに保つことが可能であると考えられるためである.レビューに関する過去の研究では,レビュー記録からプロダクトメトリクスを使う手法の事例が少ないようである. 本論文では,レビュー記録の情報から得られるメトリクスから設計品質に影響を与える要因を分析した.
佐藤 拓也、 宮部 暁彦、 小島 透、 奥村 敏彦、 木村 浩、 中島 雄作
2015年度に,筆者らの運用する人事システムにおいて,トラブルが多発した.トップマネジメントから緊急事態宣言が発出され,抜本的な品質改善が急務であった.トップダウンによる改善活動では,潜在する不備をすべて除去することと,十分な再発防止策を現場に定着させることはできないと考えた. 本稿では,筆者らの人事システムのボトムアップ的な品質改善活動の一事例について紹介する.
新間 陽一郎
2012年7月1日施行の再生可能エネルギー特別措置法により,太陽光発電における固定価格買い取り制度に注目が集まった.太陽光発電所は設備投資が風力発電等と比べ容易に実行可能である事から設置申請や建設工事が急増した. しかし,太陽光発電所建設工事は造成工事,近隣住民対応,新規参入の事業者対応など,プロジェクトにおけるリスクが大きく,リスクが顕在化した場合はコスト増となる場合が多い.そのリスクを回避する為,早期要件定義等の施策を行ったが,膨大なステークホルダーの関連性や体制上の位置づけ,役割や期待を明確化して対応するという課題の解決には至らなかった.そこで,マインドマップをステークホルダー分析に活用する事で,その膨大なステークホルダーの分析を実行し先の課題解決を行った.
新矢 佳英
企業の成長戦略においてITシステムの導入・活用が益々重要視されるようになってきた昨今、求められるITシステムは複雑かつ高度化し、それに加えスピーディーな導入が求められるケースが多くなってきている。複雑化、高度化するシステム構築を短期間で成功させるためには、高い生産性を発揮する必要があり、そのためにはモチベーションマネジメントが不可欠である。プロジェクトチームが形成されるプロセスにおいて、どのようなアプローチがモチベーションマネジメントにおいて効果的であるかを自身の経験を用いて論じる。
鈴木 秀和
本稿の目的は、プロジェクトの成功において、プロジェクトマネジャーやチームリーダー(以下、“PM / TL”と呼ぶ)のフォロワーシップ・アプローチが重要であることを明らかにするものである。 本研究では、リーダーシッププロセスにおけるフォロワーの心的態度を信頼概念によって捉え、その形成と機能について検討し、4つの要因(ケア支援 (CS)・意思決定の公正さ(DF)・情緒型信頼(ET)・機能型信頼(FT))から意思決定の受容(DR)への影響を表す最適モデルを策定した。先行研究を基に質問票を構築し、IT企業でプロジェクトマネジメントにステークホルダーからの依頼の実現や直接交渉を行っているPM / TL 140名に対して調査を実施、統計的分析には構造方程式モデリングを用いた。 その結果、本稿示した修正モデルは、機能型信頼(FT)が意思決定の受容(DR)に対して、直接的な影響を及ぼすと共に、ケア支援 (CS)・意思決定の公正さ(DF)は、情緒型信頼(ET)に直接的に影響をあたえる役割を果たし、機能型信頼(FT)に対しては情緒型信頼(ET)を介して間接的に影響を与えていることを明らかにした。 本研究テーマである「プロジェクトのステークホルダー-PM / TLの関係にリーダーシッププロセスを適用し、リーダー-フォロワーと捉えた実証研究」は、先行研究が皆無である。本研究の功績は、フォロワー・アプローチに信頼の機能・形成モデルを組み込み、情緒型信頼(ET)が機能型信頼(FT)を経て決定事項の受容に影響をあたえることを実証したことである。さらに、リーダーシップをとっているビジネス・パーソンがフォロワー・アプローチを知ることで、リーダーシップ行動の有効性を確認し、実践し、なぜ有効なのかを説明できることが、本研究の実践的な意義といえる。
関口 明彦、 関 哲朗
プログラムマネジメントは,ベネフィットを獲得するための有効な手法として広く知られている.情報システム開発の場合,関連する開発プロジェクトの相互連携によりベネフィットの獲得が行われる.本論文では,顧客サイドに導入されるIT関連プログラムに注目し,そのベネフィットの最大化について考察を行う.顧客サイドへのプログラムマネジメント適用は,ビジネスを成功に導く上では非常に重要である.これには高いスキルと豊富な経験を持つITエンジニアが必要であり,すなわちSIベンダのサポートが有効である.この対応モデルは,ベネフィットの最適な獲得が可能となる顧客サイド,ビジネスチャンスの拡大が可能となるSIベンダサイドの双方にメリットをもたらす.
田頭 薫、 片峯恵一、 梅田政信、 石橋慶一、 橋本正明
著者らは,PSP(Personal Software Process)コースを対象として,動機付けプロセスの状態遷移モデルを応用した教育改善について研究している.同モデルはコース受講生を状態機械とみなし,動機づけに関わる状態と操作により動機づけプロセスを定式化したものである.本稿では,同モデルを用いてコースの途中離脱者と修了者の状態遷移を作成,受講生の状態遷移の傾向を分析した.また,途中離脱者を減らす為の指導法を考察した.
武井 紹英
システム構築プロジェクトにおける品質マネジメントの必要性は周知の事実であり,先人たちによって,品質マネジメントに関する計画や管理ツール,技法についての知見/経験が共有され,多種多様なプロジェクトにおいて活用されている.筆者もこれまで携わってきたプロジェクトにおいては,それらの技法を活用し,品質マネジメント計画を策定し,品質コントロールを実施することで,計画通りのデリバリーを達成してきた. 今回,筆者が基幹システムから海外SaaSへの移行プロジェクトにテスト推進として参画した際,品質評価のために入手できる情報の種類や詳細度に制約があり,これまでの品質マネジメントの技法をそのまま適用することができないという経験をした.例えば,開発要員別の生産性や欠陥発生数,モジュール別の欠陥密度,欠陥の混入工程等の情報は入手が難しく,これらの情報に基づく品質コントロールの実施は困難であった.一方で,機能群ごとの不具合数,不具合1件当たりの平均解決日数,テスト全体の不具合の起票数/解決数の収束傾向,等の情報は入手可能であったので,これらの情報を活用して品質を評価し,その結果に基づいて対策を要する領域を特定し,それらの領域に対して改善策を策定/実施することによって品質をコントロールした. この経験に基づき,SaaSプロジェクトにおいて効果的な品質マネジメント技法は何か,また,それらの技法を活用して品質コントロールを実施するためには,あらかじめどのように品質マネジメントを計画し,準備するべきかを論じる.
武田 一樹
クラウドサービスの導入を検討する企業が増加し、いわゆる「クラウドファースト」が進んでいる。ITサービスマネジメントのベストプラクティスをまとめたITIL ®では、サービストランジションというプロセスを定めている。この中で、サービスの移行、導入にかかわる具体的な工程に合わせたプロセスが定義されている。しかし、上記のようなプロセスにより移行計画を立案できたとしても、クラウドサービスへ移行するのは容易ではない。理由は、複数の顧客がリソースを共有していることや構成がブラックボックスになっているといったクラウドサービスの特性に応じた課題が発生し、それらの課題にアプローチするためのノウハウが明確化されていないためである。それらの課題に対するノウハウは、サービスごとに経験や勘という暗黙知での対応となり、属人化しているのが実情である。 そこで、本論文では、サービスプロバイダの視点から、サービス導入時のプロジェクトマネジメントにおける勘所を提示し、事例を紹介する。
田崎 諒也、 田村 慶信、 山田 茂
近年,オープンソースソフトウェアを開発する多くのオープンソースプロジェクトにおいて,バ グトラッキングシステムが利用されている.バグトラッキングシステム上にはソフトウェアフォー ルトに関する多くのデータが登録されており,こうしたデータを可視化し統計的に処理すること が可能となれば開発管理者だけでなくユーザにとっても有益である.本論文では,バグトラッキ ングシステム上におけるデータを可視化するためのソフトウェアツールを開発する.特に,実際 のフォールトデータに基づき,開発されたアプリケーションソフトウェアの実行例を示す.さら に,データ分析結果について考察する.
谷口 沙紀、 谷口沙紀、 井上真二、 山田茂
本研究では,ソフトウェア信頼度成長モデル(SRGM)に基づく信頼性評価精度の向上,特にMTBFの推定を目的として,ゼロ切断ポアソン分布を用いて,複数回のチェンジポイントを考慮したSRGMのモデリング枠組みを議論する.さらに,今回議論したモデリング枠組みを適用し,新たなチェンジポイントモデルの構築を行う.最後に,実測データを用いて,MTBFをはじめとしたソフトウェア信頼性解析例を示すと共に,提案モデルの有効性を検証する.
玉田 亮、 下村 道夫
一般に,学生の卒業旅行は有期性,独自性,複数人による活動である等の特徴を持つことからプロジェクトの一つであると言える.卒業旅行を計画している者にとって,同行者を誰にするかという問題は旅行先や移動手段等とともに成否を左右する重要な問題の一つである.従来より,同行者の選定は個人の暗黙知(親密度,勘,経験等)に基づいてなされているのが一般的であり,同行者の選定ミスにより卒業旅行の目的が達成できないケースが見受けられる.本稿では,卒業旅行の目的に応じて最適な同行者を選定する方式を提案する.提案方式は,卒業旅行目的毎に規定される要求条件と同行候補者個々の属性条件とのマッチングをとることを基本としている.
田村 慶信、 田村慶信、 芦田哲、 山田茂
短納期,コスト削減,および標準化といった観点から,ソフトウェア開発現場においてオープンソースソフトウェアが積極的に採用されている.オープンソースプロジェクトのバグトラッキングシステム上では,フォールトに関する多くの情報が蓄積されている.本研究では,ディープラーニングに基づくオープンソースソフトウェアに対する信頼性評価法を提案する.また,バグトラッキングシステム上に登録されているデータから,フォールト重要度を特定・認識するための手法について考察する.また,実際のオープンソースプロジェクトのバグトラッキングシステム上に登録されているデータを利用した提案手法の数値例を示す.特に,ディープラーニングにおける学習用の入力データを変化させた場合における認識率について比較し,その結果について考察する.
千田 貴浩
プロジェクトマネージャの育成は、「体系的な知識の習得」と「実践の場を通じた段階的な経験の積み上げ」を中心に展開されているが、メンターの助言や対話を通じて「本人の気づき」により自らの成長を促すメンタリングは、上級PMに求められる「心構え」と「本質の理解」を増進させ、PMスタイルの確立に寄与すると考える。本稿では、9か月間にわたるPMメンタリングを通じて、メンティとして獲とくしたノウハウとメンタリングプログラムの運営ポイントを取り上げ、上級PM育成の方法論について考察する。
地濃 啓介、 木村 利昭、 井上 雅生、 本多 隼也、 赤嶺 智史、 井手野下 美幸
プロジェクトを進めていく過程で発生する問題への対応には,経験知を元にして対策を検討する場合が多々ある.これらの知見を得ていくためには時間を要するが,一方では,経験知を有する人材の早期育成が必要というニーズもある.我々はその実現のために「すごろく」を利用したプロジェクト疑似体験手法を構築した.当初はプロジェクトの経験知共有という目的は達成したが,一方ではQCDの危機感が薄いという意見やプロジェクトの開始から終結の流れを意識を取り込むという課題も見えた.そのため我々は,QCD意識の向上策および工程(フェーズ)を意識した問題発生に対応する改善を行い,よりプロジェクト疑似体験に近づける工夫を取り込んだ.本稿では,その改善内容と効果を検証した結果を報告する.
中島 雄作、 根津 孝宏、 三輪 慶文、 奥野 幸一
NTTデータITマネジメント室は、全社レベルIT統制(ELC-IT)と社内情報システムのIT全般統制(IT-GC)の主管を担当している.2008年度に日本版SOX法(J-SOX法)が適用開始となった.筆者らは,ELC-ITとIT-GCの必要なルールの整備や文書化,課題等に継続的に取り組み,IT統制の「定着化」を達成した.2011年度からは、統制の「効率化」に重きを置くよう転換し,現在に至る. 本稿では,筆者らの社内システムのIT統制の改善活動に関する事例を報告する.
中藤 真帆
市場の変化が加速している近年,システムでのサービス提供において顧客のニーズに迅速かつ柔軟に対応することを可能とするアジャイル開発手法は世界的に普及している.しかしながら,プロジェクトの特性・顧客の理解度・開発チームの状況などさまざまな事情によっては純粋なアジャイル適用が難しいケースも多くあり,近年では従来のウォーターフォール開発とアジャイル開発のそれぞれのメリットを生かしたハイブリッド型アジャイル開発の提唱がされている. 本論文ではハイブリッド型アジャイルを適用した実例の工夫と問題点を通し,効果的に2つの開発手法のメリットを取り入れる方法や要件管理・変更管理に関する留意点を考察し,今後適用を検討するプロジェクトへ知見を提供する.
中山 昌平
2年程前に、システム開発における問題化プロジェクトが複数発生したことを受けて組織内に「目利き」チームが発足され、問題化プロジェクトの沈静化に努めてきた。 「目利き役」の役割は「問題化した真の原因を見極めること」だけでなく「プロジェクトのQCDがコントロールされた状態になるよう改善策を共に考え、実行に移せるよう支援すること」も求められた。 目利き活動は、以下の3点に注意して実施してきた。「現場PJの応援団であること」「具体的な解決策(テクニック)まで一緒に考えること」「自分一人の力に頼りすぎないこと」 目利きに求められる素養としてはコミュニケーション能力の高さや、洞察力に優れ勘が働くこと、幹部に対しても物怖じせずに意見できること、厳しさと労わりのバランスが取れていることなど多くのことが求められる。全てを備えた人は稀有なので、特に重要な素養に絞り込んで人選する必要がある。 要件定義の失敗などに起因する問題化案件に対しては、目利き役投入による効果は限定的であった。先手を打つ別の施策が必要である。
永谷 裕子
北海道大学大学院情報科学研究科では英語によるプロジェクトマネジメントの講座を開講している。 PMBOK®ガイドをベースにした、ハードスキル(PMのプロセスやツールと技法)とソフトスキル(人間関係力)からなる2講座である。受講生の殆どは日本人学生であり、グローバル環境でのプロジェクトマネジメントの知識と実践力に加えて、欧米的なハイコンテキスト文化理解と対比としての自国の文化理解を深めている。CQを高めることで、グローバル人材育成の教育効果があると一定の評価を得ている本講座の取り組みを紹介する
夏目 隆史
ビジネス環境の変化に激しさが増す中、お客様へより短期間で、業務システムを適用することが求められている。従来のスクラッチ開発から業務パッケージソフトを導入する開発が主流となった今日において、筆者が推進したアジャイル手法を取り入れたパッケージ導入のプロジェクト事例から、メリット、デメリットを整理し、パッケージソフト導入を成功に導くためのアジャイル手法の活用について考察する。
西田 悌彦
日本全国の約50拠点へ、基幹システム接続用機器約18,000台の設計、キッティング、導入展開、及び全国の一斉切替作業を行うシステムインフラ更改プロジェクトを成功裏に完遂させた。 本プロジェクトでは、顧客を含む多数のステークホルダーからの度重なる変更要求が発生しため、設計や導入展開時の作業計画を都度見直す状況が多発した。以前より顧客からは高い信頼を得ていたが、要求事項の合意と作業準備に対する時間が十分確保できないことによる作業品質の低下で、顧客からの信頼が低下し、スケジュールやコストに影響を与えることが最大のリスクであった。また各拠点での作業要求も多岐にわたるため、コミュニケーションロスによる現地値作業員への指示ミス等、現地作業品質の低下と再作業によるコスト増が予想された。 本プロジェクトでは、多数のステークホルダーを管理し、適切にコミュニケーションを図り情報を共有し、課題を解決したことが成功につながる最大の要因であった。本稿では、ステークホルダーを管理・分析し、各種課題に対しての報告・交渉を行った事例とその成果を報告する
西野 大介、 前川 祐介
オープンアーキテクチャに根ざしたオープンソースソフトウェアやWeb技術, クラウドなどの登場と普及により, 様々なプロダクトにおいてデリバリモデルの多様化が起きている. これにより開発技術やツールだけでなくインフラ技術までもが多様化され, 近年のSIプロジェクトでは(1)新技術導入時のリスクヘッジ, (2)技術者の調達や習熟等が, ますます困難になってきている. プロジェクトマネージャはこのような課題に対して, どのような解決案を提案できるのか ? 標準化フレームワークである弊社アプリケーション・フレームワーク(Open棟梁)のQCDF向上効果をベースにして, これらの課題に対する新たな解決方法を事例を挙げて論じる。
庭野 郁也
システム開発における品質状況の把握はプロジェクトにおいて重要な要素である。 特にお客様の要件に合わせ構築されるソフトウェアの品質状況はサービス開始に向け、正しく把握しなければならない。 目標とする品質に対し、ソフトウェア構築後ではなく、開発途中に常に品質状況を把握し対策検討をする必要がある。しかしながら、多くのプロジェクトでは品質状況の可視化に関する準備が不足し、正しい品質状況の把握ができないケースが発生している。 この問題に対し、品質状況を正しく可視化するために実施した取り組みとその効果を検証した。
根岸 誠
日本の金融機関様向けチャネルシステム開発では、その制約・特性に対し、プロジェクトが大きな影響を受ける傾向が強い。一方、金融機関様は、近年の技術革新や他業態の先進的な取り組みに危機感を持たれ、新技術や新たな価値に投資の比重が置かれるように変化した。背景に、デジタル革新時代の到来と、驚くべき速さでニーズが変化する利用者の存在がある。プロジェクトマネージャは、日本の金融機関様のチャネルが持つ制約を前提に、ビジネス拡大とコスト削減を両立させ、最良のITを選択、開発する責任を負う。この解決には、上位マネジメントとプロジェクト間に位置し、組織を横断してプロジェクトマネージャをサポートする知見の存在が必要だと考えた。「全体最適」をスローガンに全体を俯瞰し、上位マネジメントと現場を繋げるチームの成果について述べる。
野元 拓也、 津田 徹、 坂上 慶子
近年のシステム構築では生産性向上追及の為作業の分業化が進み、プロジェクトマネージャが特定中堅層に固定化する傾向がある。その結果、次世代を担う若年層の社員が一定の年齢に達した時、十分なプロジェクトマネジメント実践の機会を持たずにプロジェクトマネージャとなるケースが多くなっている。そのため「リスクマネジメント不足」による、「スケジュール遅延」「原価増加」「品質の劣化」を引き起こし、トラブルプロジェクトとなる事例が発生している。 これらの問題に対処するには現場で実際に経験をすることが重要ではあるが、受注タイミングや個々の専門性のミスマッチも発生するため、育成計画通りのプロジェクト経験は困難である。そこで当社では過去に大規模プロジェクトのマネージャを経験したシニアマネージャによる「プロジェクト事例教育」を開発した。本教育ではプロジェクト立ち上げ時の留意点とリスクマネジメント手法について、過去のプロジェクト事例をベースに説明を行った。更にプロジェクト疑似体験を目的として、チーム毎にプロジェクトで発生した問題点のリスクについてディスカッションを行い、プロジェクトマネジメント手法を習得するようプログラミングした。本稿では「プロジェクト事例教育」を開発、実施したこれらの施策について、その詳細と評価を報告するものである。
橋爪 宗信、 中尾太郎、 大村保之
PM学会教育出版委員会(委員長:橋爪宗信)ではPM学会として広く大学等の教育現場で活用できるプロジェクトマネジメントの標準カリキュラムの策定を目指して検討を進めている.過去からも検討は継続的に実施してきたが,それらの成果を加味し,最近の大学等教育現場でのプロジェクトマネジメント教育の実態を踏まえた上で,どのようなカリキュラムがより効果的に大学等教育機関で活用しやすいかを現在検討している.現在検討しているのは標準カリキュラムの構造であり,基本的にはプロジェクトマネジメントの標準知識で学部学科等の区分によらない共通部分と,各専門分野に特化したプロジェクトマネジメント領域にフォーカスした個別部分とに構造を分けたカリキュラムを案として検討している.それらの検討状況を報告し,今後の策定方針と予定を説明して本取り組みについてPM学会員のより多くの参画を奨励したい.
初田 賢司、 内田吉宣、 倉重誠、 山岡彰
IT分野において2000年代の終盤に一旦落ち着いたかに見えた不採算プロジェクトの発生が,リーマンショックなどによるIT投資の冷え込みを背景に再び増加傾向に転じた.この対策の1つとしてロスコスト・マネジメントの手法を適用し,改善を図った.ロスコストとは,「本来発生すべきでない費用やムダな費用」のことである.日立グループでは,ハードウェアのモノづくりを中心にこのロスコスト低減のための活動を従来から展開している.これをソフトウェア開発の世界にも取り入れ,ロスコストの把握(見える化)から分析,対応策の立案までの一連の流れをロスコスト・マネジメントの手法として体系化し展開した. 本稿では,ロスコストの概念および体系化したロスコスト・マネジメントの手法,運営方法について報告する.
濱野 あや、 宮原 勅治、 池田 あい、 小野 志保奈、 椎名 沙織、 田中 伸代
初学者が研究会や学会の開催計画書を作成することは難しい。そこで、基礎的なプロジェクトマネジメント教育を受けた医療秘書学科の大学生チームが、実在の小規模な学会開催を想定して作成したWBSを、後日、実際の同学会事務局が作成した作業計画書(以下、学会WBS)と比較検討した。 学会WBSと学生WBSに共通していた大分類項目は17項目であった。共通17項目において、作業分解されたワークパッケージ総数を比較すると、学生WBSでは50であったのに対し、学会WBSでは28であった。共通項目のActivityの総数は学会WBSで86、学生WBSで213であった。 以上より、学生がDMMを用いて階層的に作業分解して作成したWBSは、実際の学会WBSに勝るとも劣らないものと考えられた。
原田 正彦、 椎名 利成、 吉村 義弘、 小林 一彦、 村山 昌克、 久保田 芳和、 川又 康宏、 折川 千尋
(株)日立産業制御ソリューションズでは,プロジェクト混乱防止を目的として,プロジェクト管理システムを構築し運用を開始した.本システムは,プロジェクト最上流の案件段階から,納入後の顧客運用状況の調査,フィードバックまでのライフサイクル全般を管理対象としている.本システムの特長は,コスト,工程,品質などのプロジェクト管理情報をポータル的に集約提示するとともに,それら管理情報からプロジェクトの健全性を総合的,自動的に判断し,警告を出力する論理を組み込んでいる.この自動警告論理は,実プロジェクトにおける混乱要因を分析し,コスト,工程,品質情報の特徴的な動態を約100項目の論理で判定するものであり,過去のプロジェクトに適用し,有用性を検証した.
樋口 正忠、 樋口正忠、 宮原勅治、 小林史昌、 檜垣佑斗、 藤原隆行、 吉田浩子
プロジェクトの初学者である大学生が、自分たちの知識のない経営分析という領域の情報システム構築プロジェクトを完遂した。その成功要因を検討し、以下のような結果を得たので事例として報告する。事前にwell knownな題材で規模の小さなvirtual project(たこやき模擬店)の作業分解を練習した。プロジェクトマネジメントの体系的な知識を得ながらactualなWBS作成を併行した。WBS作成においては、DMMを用いることにより作業項目を階層的に可視化できた。「勉強する」というプロセスをWBSの中に盛り込むことによって、未知の領域(経営分析、BIシステム)を乗り越えた。あらかじめ進捗サマリーの書式を統一することによって、共有する情報の視点の統一と漏れの防止ができた。MLを主たるコミュニケーションツールとして使用することによって、チームメンバー内での進捗情報の共有、工程成果物の時系列保存、検索ができた。初学者という素直さとMulti leadershipがチームの実践力を推進した。
日高 啓太郎、 日高啓太郎、 長島わかな、 大沼かつ子、 北畑紀和
高等教育や教育活動のプロジェクトマネジメント活用に関する研究は進んでおり,その知見は,今日の高等教育実践で活かされている. 一方で,大学受験の教育においては,プロジェクト化が可能であるにも関わらず,先行事例が少ないのが現状である. 現行の大学受験に向けた教育は,問題点こそあれど,資格取得などの教育システムにも応用が効くことが明らかである. 本研究では,8か月間の大学受験というプロジェクトに焦点を当て,教育コミュニティーを設計し・運用を行った結果,教育コミュニティー設計段階においてプロジェクトバッファの必要性を明らかにした.
日高 啓太郎、 日高啓太郎、 長島わかな、 大沼かつ子、 北畑紀和
高等教育や教育活動のプロジェクトマネジメント活用に関する研究は進んでおり,その知見は,今日の高等教育実践で活かされている. 今日、企業側から学生に必要とされている能力の一つに、コミュニケーション能力というものがある。我々の実践から,コミュニケーションとは,広義・狭義あれど,高等教育段階において顧客に立脚したニーズ喚起とサービス創造を知り、体系化した上で、PBL(Project&Problem Based Learning)の手法を用いて学ぶことによって、社会から必要とされるコミュニケーション能力に寄与できると考える. そこで,様々な実践活動から得た知見を基に,今後のプロジェクトマネジメント教育実践計画を発表する.
広瀬 隆之
昨今、ITプロジェクトにおいては、メンタルヘルスの問題が表面化するケースが多くなっている。プロジェクトにおいては、人的資源が重要であり、PMにおいてもメンタルマネジメントがプロジェクト成功に向けての重要な鍵となっている。 本稿では、上記背景を踏まえ、プロジェクトにおいて、PMとして、どのようなメンタルマネジメントが必要かについて論じる。
福浦 雅一、 野元 拓也、 田中 剛、 宗 博之
社内にて規定したプロジェクトマネジメントプロセス及び各種施策の実施を徹底させ,かつ本施策の適用による効果をより大きくするためには,プロジェクトマネジメントシステム(以下,PMSと記載)の適用は欠くことの出来ないプロセスである.弊社においても以前よりPMSを構築し運用していたが、2015年度より弊社グループ内で共通した新PMSシステムへの適用が示され、弊社も速やかに新PMSシステムを適用することとなった. 新システムでは様々な機能が追加され,プロジェクトマネジメントを行う上での優位性は旧システムと比較出来ないほどのものであったが,その分事業部門の作業負担も増えてしまうものであった.その為導入に際しては,如何に事業部門に対する負担を極小化し,その上で新システムの優位性を理解頂き,事業所の協力を得て導入を図っていく必要があった.本稿では,新システム導入における事業負担の軽減施策,事象部門への理解を頂く為の各種施策について,その詳細と評価について報告する.
船見 哲也
新規業務開発プロジェクトにおける総合テストは仕様ベースのテスト技法であるデシジョンテーブル、ユースケース、状態遷移図を用いて、テストの実施内容を決定する方法が一般的である。しかし、システム再構築プロジェクトは、プロジェクトの特性上「現行業務の設計書が存在しない」、「現行業務有識者が不足している」といった状況下で推進されることが多く、業務知識を前提とするテスト技法の適用は難しい。本稿では、一般的な設計技法、テスト技法(CRUD図、テストパターン表、業務シナリオマトリクス)の組み合わせにより、業務ノウハウの不足を補いテスト仕様、テストケースを決定するアプローチを適用した。その結果、新規業務構築と同様に業務仕様を再整理することなく、検討開始から総合テスト開始までの短い期間でテストケースを整理することができた。また、稼働後6ヶ月のバグ発生率は従来のアプローチで進められたプロジェクトの値と同等であり、これまでと同様に品質が確保できることが確認できた。業務のシステム化が一巡し、新規システム構築が減少する一方、システム再構築は増加傾向にある市場動向を背景に、システム再構築プロジェクトにおけるテスト工程でのQCD向上のアプローチの一つとなれば幸いである。
細谷 直紀、 下村 道夫
プロジェクト推進中に直面する各種事象に対する心の持ち方を誤ってしまうことが,プロジェクト成功の阻害要因となることがある.例えば,ポジティブに考えるべき事象に対してネガティブに考えてしまう場合には,本人やメンバーのモチベーション低下に繋がってしまい,逆に,ネガティブに考えるべき事象に対してポジティブに考えてしまう場合には,品質低下,納期遅れ,コスト増に繋がってしまう可能性がある.本稿では,一般にプロジェクト経験の少ない大学生のPBLに着目し,プロセス群毎に直面する主な事象に対するあるべき心の持ち方と,それを誤った場合のプロジェクトに与える影響を整理した上で,それぞれの誤りに対する回避・低減策について提案する.
堀 清華、 花房 道夫
日本において,グローバルスタンダードとして全世界で使用されているパッケージを導入する事は、 国内でスクラッチ開発を行うよりも大きなメリットがある. 海外ユーザからも利用しやすくなり、利用増が期待できる点や導入期間の短縮,導入コストが抑えられることがその理由である. しかしその反面,国内と海外では文化や考え方に大きな違いがあり, プロジェクト中にトラブルが発生する可能性が高い. 海外のパッケージシステム導入を3回経験した中で実施した対策について発表する.
本庄 加代子
本稿は、大学の教育手法としてプロジェクトマネジメントの有効性について考察するものである。 昨今教育産業では、学生の自立心を養成するために、インタラクティブな講義を展開するアクティブラーニングの手法が注目されているが、プロジェクトマネジメントの方法論は、その最たるものと捉えることもできる。しかし、先行研究においては十分に大学教育機関、特に文系大学における教育への援用について研究されてはいない。 そこで、本研究では本学で新設されたプロジェクトマネジメントの講義を通じて、学生への教育効果を、多面的に測定する。具体的にはプロジェクトマネジメントスキルの技能の視点だけではなく、大学への学習意欲、他科目への波及効果、就職意識の変化、学生自らの成長感を定量・定性両側面から測定することで、プロジェクトマネジメントの大学教育への援用可能性について検証する。
松本 健二
プロジェクトマネージャーの多くが、プロジェクトが開始されると、プロジェクトルームに常駐することとなり、コミュニケーションもお客様、プロジェクト関連のメンバーに限定されプロジェクトマネージャー同士のネットワーキングや、自身のプロジェクトマネジメントに対する振り返りや意見交換を実施することは難しい状況にある。 プロジェクトマネージャーからは自身の経験を他の社員に伝え、Give Back活動に貢献したい気持ちは強いが中々機会に恵まれないといった声があがっている。 またプロジェトマネージャーはつらく大変な仕事であるといった意識からプロジェクトマネージャーを目指す若手社員の減少が課題となってきている。 そういった課題を解消すべく、新入社員のプロジェクトマネジメント研修の講師として”Give Back活動に貢献したい、他のプロジェクトマネージャーとのネットワークを広げたい”といった思いのあるプロジェクトマネージャーを各組織に配置されたProject Manager Center of Excellence Focalのネットワークを活用してノミネーションを行った。 現場で活躍しているプロジェクトマネージャーよりプロジェクトマネジメントの基礎だけでなく、プロジェクトマネージャーといった仕事の魅力ややりがいを実際のプロジェクト事例交え講義することにより新入社員のプロジェクトマネージャーに対する理解を高め、若手プロジェクトマネージャーの底辺拡大につなげられるように活動している。 本著はこれらの活動についてどのようにマネージしたのかを示す。 これらの実施経験からプロジェクトマネージャー間のコミュニケーション、ネットワーキング充実にどのように取り組めばよいか,知見を共有することを本論文の趣旨とする。 When a project is begun, much of a project manager will be stationed in a project room, and communication is also limited to a customer and a member related to a project, and there are looking to networking with another project managers but it was in the difficult situation. There was lot of voice from project managers, I'd like to contribute to Give Back activity with share them experience and knowledge as project manager. Decrease of a project manager of the young employee is being a problem, because they think project manager is very hard work. Facilitator's nomination to new employee's project management training was performed to correspond those problems, with using Project Management Center of Excellence focal network. An actual project case is included, and Facilitator is lecturing on charm of work and worth doing such as project managers as well as a basis of project management. New employee's raises understanding to the roll such as the project managers. This paper shows work indicates how we managed about these activity. The thing with which how to communication building of a project manager and networking building of a project manager shares knowledge is made a gist of this paper.
松本 光穂、 田村慶信、 山田茂
低コスト・短納期・標準化といった観点から,モバイルオープンソースソフトウェア(OSS)がスマートフォンやタブレット端末を中心に積極的に採用されている.モバイルOSSにおいては,搭載されるハードウェアに制約があるため,ネットワーク経由でデータをやりとりするケースが非常に多い.本研究では,モバイルクラウドの環境特性を考慮したハザードレートモデルを提案する.また,運用段階におけるモバイルクラウド環境を考慮したディペンダビリティ評価尺度を導出する.さらに,実際の OSS プロジェクトのソフトウェア故障発生時間間隔データに対する数値例を示すことにより,モバイル OSS の信頼性評価法について考察する.
三好 きよみ、 木野 泰伸
プロジェクトマネージャに必要とされる能力は,PMIからは,「プロジェクト・マネジージャー・コンピテンシー開発体系」が出ており,日本においては,「ITスキル標準」で定義されている.本研究では,熟達段階にあると想定されるプロジェクトマネージャ20名に半構造化面接を行い,これまでの経歴を振り返ってもらい,関わったプロジェクト,印象深い出来事についてなどの基本項目を基にインタビューを行った.そして,このインタビューデータから熟達段階のプロジェクトマネージャが習得している能力についての概念の抽出を行い,「プロジェクト・マネジージャー・コンピテンシー開発体系」などに定義されている必要とされる能力との比較を行う.
三輪 慶文、 奥野 悟、 奥野 幸一、 中島 雄作
日本と比較し,オフショア(中国)のITメンバの離職率が高いことが一般的に言われている.筆者らの社内情報システムの24時間保守運用業務をオフショア(中国)に委託しているが,メンバの離職率が高い状態が継続すると保守運用のサービスレベルに影響しかねない事態となった. そこで,筆者らは,勤務形態面で類似の病院看護士の事例を参考に,メンバの離職に係る項目をヒアリングし,種々の対策をとった. 本稿では,情報システム24時間運用のオフショア委託先における離職率の改善活動について述べる.
森田 哲朗、 横山 真一郎
プロジェクト成功のためにはステークホルダの要求の抜け漏れを如何にに防ぐかが重要である.顧客満足を得るためには,機能要求以外にも非機能要求の把握も必要である.非機能要求は後に抜け漏れが判明することが多く,顧客の要求に沿ったシステムあるいは製品の開発が不十分になることがある.しかし非機能要求項目まで検討し,システムあるいは製品の開発を考えることはスコープの膨大化につながる.そのため,必要最小限の非機能要求を抽出する必要がある.本研究では,ステークホルダの要求事項と開発者側の意見から開発システムに必要な潜在的な要求項目を抽出し,その要求項目をもとに必要最小限の非機能要求の獲得方法を提案した.
諸葛 隆太郎
仕事は「ダンドリ8分」と言うが、これを計画的に実行可能にするスキルがプロジェクトマネジメントスキルである。限られた時間、人やお金などのリソースで品質の高いアウトプットを出すために計画し、計画通りに物事を進めるという能力は、「できる」ビジネスパーソンに不可欠である。しかし、このスキルは一朝一夕に身に付けられるようなものでもなければ、教えて覚えれば良いという知識でもない。さらに、プロジェクトマネージャー育成は多くの企業で課題になっている現実もある。本稿はプロジェクトマネジメントの知識体系を活用し、物心付く頃から段階を踏んで学ぶことで「できる」ビジネスパーソンを育成するための方法について考察する。
山村 直子、 三輪慶文、 奥野幸一、 中島雄作
情報システム部門にとって,保守運用のTCO(Total Cost of Ownership)削減は,主要課題の一つである.筆者らは,100を超えるシステムの企画,開発,保守運用をトータルで行う情報システム部門であるが,2014年度から,保守運用業務のコスト構造を徹底的に分解し,情報システム部門全体を巻き込むTCO削減活動を推進している. 今回,前記活動の中のサービスデスクのTCO削減に着目する.例えば,サービスデスクの稼働は問い合わせ件数と因果関係が深い.そこで,問い合わせ件数の削減を目的に,ユーザが自ら問い合わせ内容の調査ができるような施策を展開した. 本稿では,筆者らの社内システムのサービスデスク業務における問い合わせ件数の削減活動について紹介する.
横田 真之介、 関哲朗
一般に情報システム開発プロジェクトの成功確率は低い.情報システム開発プロジェクトの成功確率を向上させるための,プロジェクト・リスク・マネジメントの研究は多く存在する.これらの多くの研究は,過去の情報システム開発プロジェクトの経験からリスクを定性的に評価しているものである.このような静的な手法を用いたプロジェクト・リスク・マネジメントの研究は,多く行われているが,プロジェクトの挙動を再現し,その結果を考察するような動的な手法によって行われている研究は少ない.Yokota & Seki (2015)は,Shannon & Weaverと関連性理論をもとに,情報システム開発プロジェクトにおけるコミュニケーション構造を表現するコミュニケーション・モデルを提案している.本論文では,このコミュニケーション構造を精緻化し,マルチエージェントシミュレーションを用いて,モデルの検証を行った.
劉 功義、 阿部 仁美
自然災害からの復旧・復興はプロジェクトの集合と考えられ,適切なマネジメントが成功に大きく寄与する.2011年3月11日に発生した東日本大震災の東北地域の復旧・復興は,道路等の社会インフラの復旧のみならず,地域振興といった復興を進めている地域も少なくない.地域の復興は,それまでの復旧以上に多様なステークホルダーの協力の上で進められ,プロジェクトの複雑度が増す.本報では岩手県釜石市で実施した復興プロジェクトへのプロジェクトマネジメントのメンタリング活動事例を報告する.メンタリングは3件のプロジェクトに実施し,有効性が確認された.
渡辺 航太、 福永 二郎、 西本 英昭、 清水 理恵子
システム開発における標準化とは,タスクの要素を定型化する作業である. 開発プロセス,管理プロセス,ドキュメンテーションなどが標準化の対象となる. 我々は,標準化に関する作業を成果物,工程,関連するチームで整理した“日立標準化フレームワーク(HSFW)”を作成している. 我々は,日立標準化フレームワークに従って標準化の作業を行うことで,過不足なく標準化成果物を選択できることを期待する. ただし,標準化成果物の内容はプロジェクトの特性に合わせて作成する必要がある. 本論文では,プロジェクトで作成した標準化成果物のラインナップと内容が必要十分であったかを,プロジェクトで発生した問題とその原因,および開発者のマインドから評価する.
渡辺 武
プロジェクトマネジメントの手法や知識に関する情報とノウハウは,非常に充実しているが,私が最も重要と考える経験と勘の活用という,いわゆるセンス的なものに関する継承については,取り組みが不十分であると感じている.経験と勘の活用について,ベイトソンのシステムのモデル化の考え方を活用して、私の今までの経験を元に,プロジェクトマネジメントの「学習」モデルを検討する.また、プロジェクトマネジメントの重要作業について、どのように適用できるかを考察する。
渡辺 哲也、 渡辺哲也、 坂上慶子
当社が提供するプロジェクト・マネジャー育成研修では,過去のプロジェクト事例を題材としたケーススタディを多く採用している.ケースメソッドに求められる要件として,実例に基づくリアリティーと,最新事例を定期的かつ継続的に取り入れることの2点を前提として取り組んできた.しかし,時代や技術が変遷しても課題の本質として普遍の部分があり,それは変わらない.さらに,他者の経験を共有し合う「場」の提供と,自発的な参画促進や,プロジェクト情況理非への徹底的な考察と実務への利活用を見据えた議論を引き出すファシリテータが重要な役割を担う.本稿では,ケースメソッドの効果を補完するこれらの取組みについて述べる.