Kaimasu Masatoshi、 豊田寿行、 脇谷直子
プロジェクト型学習(PBL)の実践事例が多く報告され、企業や地域との連携が進み、それぞれが抱える課題に学生が主体的に取り組む事例が近年増加している。PBLを実施する上でプロジェクトマネジメント(PM)の必要性をあげる声は高い。特に、ユーザーとして学生が主体的に行動することが重要であり、これがプロジェクトの成功に結びつく。プロジェクトの成功はPMと成果物の2つの面から考える必要がある。プロジェクトのデザイン(設計)と実施マネジメントの2つの要素である。ニーズを正確に捉え、計画を作成し、その通りに終了することは重要である。一連の流れを大学でのPM教育で学修するが、成果物の設計もしくはPMどちらを重要視するのか大学や分野で異なる可能性があり、非工学系の3つの大学でのPM概論など事例を比較しながら、 PM教育のあり方について議論して行く。
荒木 辰也、 石田 兼司、 今井 達朗、 松山 新
昨今,システム設計の高度化・複雑化に伴い,プロジェクトマネージャや開発者一人あたりの担当業務は日々増加している.開発現場において,ドキュメント作成業務は意外に重く,プロマネや開発者の本業を圧迫している.その結果,ドキュメント品質は犠牲にされ,このことがその後の開発手戻りによる開発スケジュールのひっ迫やサービスインを延期に追い込むリスクに着目した. 今回は,プロマネや開発者がより良い仕事をするための仕組みづくりについて,新たな事例を交えて紹介する.
碇 いつき、 海田阿矢子、 村越好恵、 松尾一茂
昨今,多くの企業でクラウドサービスやパッケージソフトなどの汎用的な業務ソフトウェアが利用されている.これらのソフトウェアで問題が発生した際に,企業のユーザはソフトウェア開発元企業に問い合わせることとなり,ソフトウェア開発元企業は迅速に回答を行うことが期待される.しかしながら,技術的な問題に関してはヘルプデスクから設計・開発部署に問い合わせを行う必要があり,ユーザへの回答が遅延することがある.弊社においても設計・開発部署が開発作業で多忙な際には,ヘルプデスクでの回答遅延が発生し,ユーザ満足度の低下に繋がっていた.このため,回答遅延対策のために知識エリアに着目したマネジメントを実施した.本論文ではその取り組み内容と評価について述べる.
五十嵐 匠、 五十嵐匠、 下田篤
チーム活動を行う職場では,密なコミュニケーションを必要とする場合が多い.しかし,なかには非正規社員等が多く,メンバの入れ替わりが激しい職場もある.このような職場では,チーム編成の方法によってコミュニケーション密度がばらつき,働きやすさ,ひいては業務効率のばらつきが大きくなる問題がある.そこで本研究は,チームメンバが感じる働きやすさを人間関係の数値指標により表し,これを用いてチーム編成する方法を提案する.具体的には,職位をまたぐ一体感,職場をつなぐ一体感をネットワーク分析法により計算する数値指標を提案する.提案する指標を用いて,ある職場のチーム編成を行った結果について報告する.
石川 直樹、 田隈 広紀
地域コミュニティーが崩壊しつつあり,行政と住民の意思疎通が図りにくくなっている.特に青年期以降の人材がこれまで生涯学習の場として機能していた地域コミュニティーに参画する機会が減少し,地域間格差進行の一因となっている.地域コミュニティー活性化に向けては,青年期の住民が主体的に活動可能なスキームの整備が求められる.本研究ではネットワーク組織と発想促進に関する先行研究を参考に,青年期を迎えた人材が参加しやすい機動的かつ分散的なコミュニティー構築を前提に,住民の主体的活動を促す組織体制と運営方法に関して試行実験を交えて提案する.
一栁 晶子、 一栁晶子
公式・非公式の組織においてその目標を達成するための人々の協働,コミュニケーションを適切に管理するための職務としてプロジェクトマネージャが必要であることの認識は高まり,昨今では,学生に対するプロジェクトマネジメント教育や組織内外でスキルアップできる機会も増加している.また,プロジェクト現場でのメンバー育成に関する研究や実践経験の情報共有などは活発に行われる傾向にある.このようなタレントマネジメントや人材育成の観点での研究が活発に行われている一方,プロジェクトマネージャを対象にしたキャリアデザイン支援,コンサルテーションに関する研究や情報は極端に少ないと考えられる.本稿では,先行研究の整理を通して,プロジェクトマネージャのキャリアデザインについて考察する.
犬山 高四郎
抜本的な建て直しが必要な問題プロジェクトの多くは、進捗遅延と開発品質の悪化により、顧客からの再三の指導がありながら抜本的な改善が図れず強硬な指摘を受けはじめ、結果、プロジェクト全体の機能不全に陥っている。本書では建て直しに際し、どのような勘所を持って取り組むべきか、過去の経験を踏まえ、私なりの考えを述べる。 1. 顧客の強硬な指摘 まずは顧客の指摘からプロジェクトの実態を理解する 2. 事態の打開に向けた阻害要因 メンバーの「正しいことを正しくやろうとしない」風土 3. リバイバルプラン メンバーが勝負勘を持って、ひとつずつ勝ちながら思考と行動のブレーキを取り除く
井上 雅裕、 長谷川 浩志、 山崎 敦子、 古川 修、 間野 一則、 Anak Khantachawana、 Maria Anityasari
芝浦工業大学は、文部科学省のスーパーグローバル大学創成支援事業に採択され、アジアの工科系大学トップ10を目標に、大学改革とグローバル理工学人材の育成を進めている。その一環として、経済的な発展を遂げる東南アジア等と連携してのイノベーション創出と人材育成を目的に、日本と海外の大学、産業界、政府機関が連携するプラットホームとして、GTI(グローバル・テクノロジー・イニシアティブ)コンソーシアムを2016年に設立した。同コンソーシアムでは、日本と海外の大学の学生が連携し、SDGs(Sustainable Development Goals)などの社会課題の解決やイノベーション創出を行う国際産学地域連携PBL(Project Based Learning)を実施している。国際産学地域連携PBLでは、PBLを実施する学生達のプロジェクトと教育カリキュラムを設計し、環境を整備し、産業界や地域との連携調整を行い、授業を運営する教員と職員のプロジェクトの二重のプロジェクト構造を形成している。本発表では、GTIコンソーシアムと国際PBLの狙いと方法、国際PBLの二重構造のプロジェクトにおけるステークホルダー、目標と実行課題、その実施例に関し報告する。
井之川 幸彦、 宮田寛子
プロジェクト・マネジメントは、経験や勘に依存して実施されるものではなく、体系的な知識に基づいて実行されるものである。この知識は、時代とともに進化、変遷している。プロジェクトを成功裡に完遂する確率を高めるために、プロジェクト・マネージャーはこうした知識の最新化に正しく追随することが肝要である。 ところで近年、一部の人材系調査において、日本人の仕事に対する熱意が世界の中で相対的に低いという結果が示されている。必要な最新知識の吸収がなおざりにならないよう、組織として活躍中のプロジェクト・マネージャーに対する知識のアップデートを実現する仕組みを整備することが必要と考えられる。 この課題認識のもと、当社は本年度、PM候補者64名の面談を実施し、プロジェクト・マネジメント業務遂行と知識保有・活用の状況の調査を実施した。本稿では、その結果も踏まえ、プロジェクト・マネージャーの自主性のみに依存しない企業として、プロジェクト・マネジメント知識アップデートの仕組みを検討した。
岩田 直也、 山下彰一、 郷 裕一、 建部 忠史、 林 信太郎
スマートフォン向けをはじめとしたデジタルサービスの新規開発においては、サービス価値に直結するUI/UXの部分の要件確定の遅れや後工程での仕様変更/追加が頻発する。そして可能な限りそれらを取り込まない限りサービスとして想定していた価値が実現できないため、それらを柔軟に取り込みながらも、お客様の策定するサービスローンチ期限までには確実にデリバリする必要がある。 このような難しい問題に対して、バイモーダル開発(同一プロジェクトの中で、2つの異なる開発手法を組み合わせて使用する事。具体的には、段階的な品質の作りこみにより堅牢かつ信頼性高く作り上げる領域はウォーターフォールにて開発し、デジタルサービスにあわせ柔軟に要件を変容させ、可能な限りそれに対応していく領域はAgile開発で開発を行う)にて対応した際に、見えてきた課題とそれに対する対応策に関して言及する。
岩田 与始兵、 田中 公司
ソフトウェアの品質向上・確保はソフトウェア開発企業にとって重要な課題であり,多くの企業でメトリクスを用いた品質の見える化・予測が行われている.プロジェクトの欠陥摘出履歴に基づいた品質予測を行う手法として,単位時間あたりの欠陥摘出率がワイブル分布に従うことを利用した手法がある.この手法を,弊社の過去プロジェクトデータ101プロジェクトに適用し,評価した.その結果,欠陥摘出数の予測値が実績値の二倍以上となるような予測精度が悪いプロジェクトが多く存在したため,予測結果の精査と予測手法の改良検討を行い,手法改良前後での予測精度の比較評価を実施した.評価の結果,手法改良によって,予測精度が向上したことを確認できた.
植草 皓、 谷本茂明、 畑島隆
近年,インターネットが社会基盤として重要な位置づけとなるにつれ,深刻化するサイバー攻撃や内部不正といった脅威への対策の重要性も高くなってきている.一般に,情報セキュリティ対策は,ファイアウォールやアンチウィルスなどを用いた技術的対応や,ISMSなどのセキュリティポリシー策定,CSIRT設置などの運用的対応により実施されている.しかし,内部不正による情報漏洩のようなインシデントの対策には,行動心理などの人間の内的要因を考慮した対応の必要性が指摘されている.本論文では,インターネット社会の多様な脅威への対策として,内的要因に起因するリスク事象への対応が重要であることをリスクマネジメント手法により明らかにする.
内田 吉宣、 海老澤 竜、 山岡 彰、 初田 賢司、 小山 清美
システム開発プロジェクトにおいてロスコストを削減するには,受注後において計画時のQCDがぶれないようにコントロールするとともに,引合いから受注までのプレプロジェクトフェーズにおいてリスクを見極め見積りや契約条件などで対策を講じることが重要である.我々は,プレプロジェクトフェーズにおけるリスクの早期抽出を目的とし,プロジェクトの属性情報と実績情報をもとに,プロジェクトの損益変動を予測する方式を開発した.本方式の特徴は,プロジェクト属性群の中から損益変動に影響を与える属性を抽出した上で類推予測を行う点である.本方式の予測性能について, システム開発プロジェクトの実データで検証し,アルゴリズムの有効性を確認した.
梅谷 健太
プロジェクト開始時のチーム立ち上げやプロジェクト状況の変化等により大幅なメンバー変更を行う場合において,プロジェクトを成功に導く為のコントロールとして,体制面のリスクマネジメントが必要となる. 本稿では,ソフトウェア開発において,筆者のプロジェクト立ち上げからチーム運営での経験を交え,特にメンバーの特性(新規参画・既存、委託・非委託など)から見れるチーム体制での「コミュニケーション」「生産性」「品質」のリスクについて,その特定と分析を行い,低減・回避に向けた対策を考察する.
浦田 敏、 川中 孝章、 六川 修一
システム開発プロジェクトにおけるリスクマネジメントの難しさの一因として,個々の視点や知識等の違いによる失敗原因の把握の困難さが挙げられる.即ち,不具合の発生タイミングにおいて生じる,知識不足や理解不足,誤認知や誤判断等を把握することは難しい.これらは人々の内面で生じており,様々な場面において表出させ再確認する為には工数を要するからである.また,失敗原因を複数のプロジェクトに跨って共有する良い手段がないのが現状である.本論では,プロジェクトメンバの持つ知識とコミュニケーション能力に着目したエージェント・ベース・モデルを構築した.当該モデルを用いたシミュレーション結果に基づき,プロジェクトにおけるリスク発生状況の簡易評価を試みた.本研究により,プロジェクトメンバの持つ知識や各種能力を統合的に発揮させるための判断を支援する他,プロジェクトを跨ったリスクの評価が可能となる.
浦田 有佳里、 永谷裕子
IT業界には女性リーダーが少ないと言われている。 小規模チームのリーダーとして力を発揮している女性が増えてきている。しかし、 大規模なチームやプログラム、ポートフォリオといった領域に女性リーダーは少ない。 その背景を探りたく、120名に女性上司の経験や、上司は男性と女性どちらが適任と考えられているか、 などについての意識調査を行った。結果から見えた女性リーダーが意識しなければいけない行動特性と キャリアアップへの留意点を提示する。
遠藤 洋之
ITサービス業界では米印間を中心に国際連携開発モデル(GDM)が普及し、日系企業も日中間オフショアリングを皮切りに開発拠点を東南アジア等海外に拡大した。この国際拠点間連携の為に、国際本社は既存現法成長施策またはM&A後のPMIの一環としてプロジェクト管理標準の社内国際統一を、次いで地域本社または事業部門は国際本社と連携しつつ標準類の一部現地化/業界特化に依る国際標準と現場の乖離の解消を、其々行う必要がある。この上で地域/現法所属のPMO/PMは、プロジェクト管理体制を確立し当該標準プロセスの運用・定着に至らしめることが求められる。当論文では、APAC域内の拠点においてPMレベル判定後に実施したPM-Workshopの事例紹介と、この施策で得られた品質管理関連データを中心とする分析結果に基づくPMの現状と要件を整理し、多国籍ITサービスプロジェクトのPMO/PM宛提言を行う。
王 戈、 佐藤賢一、 松尾由美
ここ20 年、複雑な科学的社会的要請に応え、学際研究や超学際研究と言った学問分野やセクターなどを超えたチームで行う研究活動(チームサイエンス/Team Science)が大規模な研究投資先の主流となりつつある。チームサイエンスの科学(Science of Team Science: SciTS)とは、実証的根拠に基づきチームサイエンスに対する研究開発、人材育成,実施支援を行い、研究者のエンパワメント、チームサイエンスの効率化・効果の最大化、アカデミアの構造変容を目指す学際的教育研究分野である。本稿はSciTSとR&Dマネジメントの相違を比較しながら、日本におけるSciTSの推進に示唆を提供したい。
大島 丈史、 内平 直志
多くの組織で開発プロジェクトの成功率を高めるためのナレッジの蓄積と共有や人材育成の強化などの取組みが行われているが,多岐に渡るマネジメントの知識継承は容易ではない.失敗プロジェクトで発生する問題を分類すると,「要件の追加や漏れ等による規模増加」,「生産性の悪化による遅延」,「スケジュール圧迫と品質悪化の悪循環」などが典型的なパターンとして挙げられる.これらの問題は,計画と変動把握の精度を高め,早期に対処することによって抑止可能なものが多い.そこで本稿では,このような変動のマネジメントに関するプロセスと管理要素や対処方法の関係等を構造化したマネジメント知識モデルを提案する.このモデルの活用例として,プロジェクトの変動を可視化する手法を適用した場合の例を示す.合わせて既存の知識体系との関係を整理し,システム化に適した知識や,暗黙知としての継承方法を考える知識,AI活用が可能な知識等の分類を示す.この知識モデルにより,属人的な暗黙知の形式知化や,知識継承を効果的に行うことが可能となる.
大友 愛子
昨今,プロジェクトを巡る環境は複雑さを増し,変化のスピードは加速度的に上がっている.絶え間ない変化に次々と対応しなければならない状況において、プロジェクトを成功に導くためには,プロジェクトマネージャは、チームやメンバー自身が方向性や戦略を考え,自律的に行動し,意思決定するように促すこと,「ファシリテーション」を行うことが大切である.本稿では、プロジェクトを成功に導く新たなスキルとして,プロジェクトにおけるファシリテーションを提言し,ファシリテーションを実践する上で大事にするべき“6つの価値観”,ファシリテーション事例をわかりやすく伝えるための四コママンガ,自身のプロジェクトマネージャとしての価値観を把握できるツール開発への取組みを述べる.
大根田 祐一、 岡田公治
プロジェクトマネジメントに関する研究は,研究対象であるプロジェクトの独自性,長期性,少数性,試行困難性等の性質により,生産管理等の定常業務に関する研究に比べ困難を伴う.そのような問題意識から,これまでプロジェクトマネジメント研究プラットフォームとしてシステムダイナミクス型のプロジェクト挙動シミュレーションシステムが試作されている.本稿では,先ずシステムダイナミクス型シミュレーションとマルチエージェント型シミュレーションを比較し特徴を整理する.さらに,プロジェクトメンバの相互作用と心理的側面に加え,プロセスの進捗も扱えるマルチエージェント型のプロジェクト挙動シミュレータを試作する.
大野 晃太郎、 横山真一郎
プロジェクトの成功を確実にするためには,プロジェクトリーダーは各段階でのコミュニケーションの状態を把握し,それを管理する必要がある. しかし、コミュニケーションの欠如とステークホルダとの不十分な調整は、プロジェクトの失敗の主な原因の2つである. 本稿では,通常の進捗管理だけでなく,コミュニケーションの満足度から進行状況を管理する方法を提案した. 研究において,ステークホルダとの関係を考慮したコミュニケーション計画を立案し,コミュニケーション量(情報量)に基づいて実際の評価結果を視覚化する方法を検討した.また,計画を客観的に見やすく,計上しやすくするためにQFD表を活用した.
大村 保之、 橋爪 宗信、 横山 真一郎、 中尾 太郎、 長島 祥子、 木下 実、 上野 雅浩、 村上 哲也
PM学会教育出版委員会(委員長:橋爪宗信)では, 広く大学等の教育現場で活用できるプロジェクトマネジメントの標準カリキュラムの策定を目指し, PM学会として検討を進めている. これまでに,PM標準カリキュラムとして, プロジェクトマネジメントの標準知識で学部学科等の区分によらない共通部分と, 各専門分野に特化したプロジェクトマネジメント領域にフォーカスした個別部分という体系を整備してきた. 前回の秋季大会ではPM標準カリキュラム共通部分の科目概要案を報告したが, 実現性の検証と共にさらなる科目概要案を深堀すべく, 学術・教育関係の方,幅広い分野(業界)の方との有識者セッションを開催する.
岡田 愛
IBMでは,開発プロジェクトのプロジェクト管理ツールとして,Atlassian社のJIRAの利用が推奨されている.本稿では,IBMで他社製品であるJIRAの利用が展開された経緯,ツールのクラウド環境の活用,およびJIRAを日本の中規模プロジェクトおよび大規模プロジェクトに適用した事例を紹介する.また,プロジェクトへのJIRA適用における課題について考察する.
岡田 公治
プロジェクトを制御対象として捉えれば「観測されたプロジェクト状態に基づき,制御操作としてプロジェクトマネジメント行動を意思決定し実行することで,目標状態に近づけていく一連の活動」としてプロジェクトマネジメントをモデル化できる.プロジェクト挙動シミュレータ上の単一の仮想プロジェクトの反復実施により,機械学習エージェントがプロジェクト目標達成評価基準に応じて準最適なプロジェクトマネジメント行動ルールを学習可能なことが,これまでに示されている.本稿では,プロジェクト規模の多様性を考慮するためにプロジェクト属性生成器を追加し,規模の異なる多様な仮想プロジェクトの反復実施からでも準最適なプロジェクトマネジメント行動が機械学習可能性であることを確認した.
岡田 公治
2017年度は,(1) PM人材育成研究会,(2) ソーシャルプロジェクトマネジメント研究会,(3) プロジェクト計画におけるQFD応用研究会,(4) リスク・マネジメント研究会,(5) メンタルヘルス研究会,(6) プロジェクトのデータ解析と見積り研究会,(7) フロネシス (知恵ある実践) PM研究会の7つの研究会が研究活動を行った.研究委員会では,研究会活動の更なる活性化を図ることを目的に,2017年度秋季研究発表大会の場を活用して,学会会員の研究会活動に対するニーズ調査を実施した.本稿では,ニーズ調査結果を報告すると共に,学会会員のニーズへの今後の対応について報告する.
小高 文博、 小高文博、 石動志津佳
RPA(Robotic Process Automation)はこれまで人がPCで行っていた作業を自動的に実行するソフトウェアによって処理することを意味する.近年,PRAによる業務自動化,効率化が多くの企業で取り入れられ推進されている.RPAを利用すれば,シナリオに沿って動作するソフトウェアロボットがPCを自動操作し,定型業務を効率化させることが可能であり,既存システムに手を入れないで業務を効率化することができる.また、日本では安部内閣が推進する「働き方改革」が労働環境の改善を目指していることも大きな要因であると考える. しかし,RPAの適用範囲は、多岐に渡るため業務を行っている者からすると自分の仕事を取られる.といった感情を抱き、導入・推進に協力的にではないという声もある.RPAの適用するプロジェクトは、業務フロー、ルールの変更を伴うプロジェクトとなる.このようなプロジェクトでのPMの役割はITシステムの開発,構築に関するマネジメントだけでなく,プロジェクトの効果を測定し示すこと,ステークホルダーとの対話を通し合意を形成すると言ったことが求められる.またPMとしてモチベーションを維持するために必要な心構えについて述べる.
小野瀬 昌人、 小野瀬昌人
ビジネス課題の高度化や複雑化に伴い、多様でクロスファンクショナルなメンバーで構成されるプロジェクトが多くなっている。それに伴いプロジェクトマネージャーには、プロジェクトメンバーを束ね、メンバー一人ひとりの力を引き出し、プロジェクトとしてより良い解決策や意思決定、アウトプットを創出することが求められている。それにはファシリテーションのスキルが必要であるが、まだまだファシリテーションの必要性に対する認識は低い。当社では、社内講座や社内コミュニティを活用して、ファシリテーションの必要性を説き、ファシリテーターの育成を図ったのでその活動内容を報告する。
梶山 昌之
プロジェクトの規模、工数、コスト、工期、品質、リスクなどの、プロジェクトのマネジメントに関係する諸量を定量的に把握し、見積りおよびプロジェクトの定量的管理に活用するためには、メトリクスの統計的な分析と予測モデルの構築が必要となる。この予測モデルは、従来は統計モデルとして取り扱われていたが、近年は人工知能(AI)または機械学習によるアプローチも行われている。しかし、どのような課題に対してAIまたは統計モデルのいずれが適しているのかは良く知られていない。本稿では、従来は統計モデルとして取り扱われていた問題に対して、機械学習のモデル(ディープラーニング)によるアプローチを適用することにより、両者の予測精度の違いを統計的に検証する方法について考察する。
加瀬 匠汰朗、 加藤 和彦
近年,我が国では国際競争力強化のためイノベーションが重要視され,その一手段として産官学連携が注目されている.しかし,現状の産官学連携プロジェクトにおいては,各組織の機能が異なるためにプロジェクトの運営や合意の形成に支障をきたしているケースが挙げられる.この産官学のような,目的や価値観の異なるステークホルダが参画するプロジェクトは,組織間のジレンマに陥るとされている. 本研究では,形式概念分析に基づき,産官学連携プロジェクトにおいて連携を阻害する,組織間のジレンマを解消することを目的としている.産官学の間で,共通のゴール,タスクや乖離しているゴール,タスクを見出すことで問題の解消を目指す.
上條 英樹、 沙魚川 洋平
本稿は,産業技術大学院大学とTDCソフト株式会社の産学共同PBLで実施したエンタープライズ・アジャイル開発に関する共同研究について論じる.日本においてもアジャイル開発の要望は高まっているが,大規模なプロジェクトにおける成功事例が少なく手法が確立されていない.その背景には日本独自の商慣習が馴染まないことが要因の一つであると考える.そこで,世界で実績のあるフレームワークをもとに特定の日本企業向けにテーラリングを行った結果やノウハウを手引書としてまとめた.また,合わせて手引書を活用する模擬プロジェクトの教材を作成し,手引書の実用性の検証及び改善作業を実施した.
川内野 元、 岡田公治
プロジェクトマネジメントに関する研究は,研究対象であるプロジェクトの独自性,長期性,少数性,試行困難性等の性質により,生産管理等の定常業務に関する研究に比べ困難を伴う.そのような問題意識から,プロジェクトマネジメント研究プラットフォームとしてプロジェクト挙動シミュレーションシステムが試作されている.対策効果等は,仮定するプロジェクトの規模や期間等の影響を受けるため,シミュレーション実験結果を総合的に評価するためには,現実に即した形で様々なプロジェクト事例を仮定しなければならない.そこで,本稿では,現実的な仮想プロジェクト事例群を自動生成する機能を試作し追加する.試作した機能は,プロジェクトの見積・計画プロセスを考慮し,IPA/SECが収集した実プロジェクトデータを基礎とすることで,現実的な仮想プロジェクト事例群を生成できた.
川原 慎司
金融業界では新たな付加価値創出に向けFintech領域のサービスが注目されている.多くは,個人のお金に関わるサービスであり,利用者からの要求に素早く応えていかなければならない.システム開発にはスピードが求められ,必然的にアジャイル型プロジェクトとなる.このアジャイルに対して開発者視点での考察は存在するが,運用視点で考察したものは少ない.そこで,アジャイル型プロジェクトで発生する短期開発による運用品質低下,インシデント量変動による体制・コスト課題に対し,運用導入マネジメントと従量課金を採用したコストマネジメントでの解決を通して,アジャイルにおける最適な運用起点マネジメントの考察を行う.
河村 智行、 高野研一
ソフトウェア開発はプロジェクトの約70%が失敗であると言われており,成功率の向上が望まれている.成功率向上のためにプロジェクトの成否予測に関する研究が行われている.本論では,統計・機械学習を活用した成否予測に関する先行研究を調査し,予測方法の特徴毎に分類することで,成否予測を実施する上での考慮点を明らかにする.ソフトウェア開発の成否予測に関する国内外の12本の論文を収集し,予測の実施タイミングなどの5つの特徴毎に分類した.これらの結果を参考にすることで,成否予測の研究の遂行,および実務への適切な適用に寄与すると期待する.
神林 友和、 宮部 暁彦、 荏原 祐美子、 宮 健二、 木下 誠一、 中島 雄作
近年,AIを活用したビジネスが拡大しており,プロジェクトマネジメント領域でもAIの適用が検討され始めている.先行文献調査によると,例えば,「ディープラーニング」を適用した不採算プロジェクト予兆検知等が提案されている.しかし,ディープラーニングの課題としては,検知された根拠が不明確であるということがある.そこで,筆者らは,高リスクプロジェクトを早期に検出するAI手法の研究において,「ディープラーニング」に加えて,検知理由が理解しやすい特長を持つ手法「決定木」を併用することにより,前記課題を克服することを考案した.複数のサンプルデータを,筆者らが考案したモデルで分析し,その有効性を確認した.
木暮 雅樹、 佐藤 慎一
NTTデータグループは,ISO9001,CMMI,ITIL等に基づく品質保証およびプロセス改善活動に取り組んでいる.特に,ここ数年の当社のグローバル展開にあわせて品質起点のブランドイメージと競争優位性を構築することを目的に「品質保証体系展開活動」として中国,インド,北米,南米,欧州,東南アジアなどの海外子会社を対象に品質保証およびプロセス改善の展開を行っている.このプロセス改善活動は対象組織の品質,生産性等の実績向上に寄与している。本論文では,品質保証体系展開活動を2015年に開始したアジア太平洋地域における事例に焦点を当て,実施した活動,効果,教訓,今後の取組みについて述べる.
北原 充
パッケージ製品/クラウドサービスとカスタム開発の組み合わせなど,多様な技術を適用した大規模なシステム開発プロジェクトにおいては,各領域の専門性に特化した複数のベンダーがお客様と直接契約するプロジェクト体制になるケースが多いが,契約・商流が別になる分,複数のベンダーを統括・管理することは困難になり、プロジェクトトラブルを誘発するリスクが高くなる.本稿はこうした特性を持ったプロジェクトにおけるプロジェクトマネジメントの実践を事例研究として取りまとめる.
小島 律
一般に,安定したサイクリックなシステム開発プロジェクトを続けると,長く従事するプロジェクトメンバが増え,慣例に沿ったやり方で安定的に開発を行うため,従来のやり方の延長線上にある効率化やトラブル発生時の教訓を多数組み込んだプロセスが構築される傾向にある. この最適化されたプロセスで安定的なプロジェクトを経験してきたチームを核として,多くの新たなメンバを迎え大規模プロジェクトを立ち上げ,推進していくためにはいくつもの課題が生じる. 本稿では,安定的なプロジェクトと大規模プロジェクトを対比しつつ,課題と取り組みを紹介する.
小林 敬明、 小林敬明、 森口聡子
本研究の目的は, ITプロジェクトマネジメントにおけるスケジューリング作業の効率向上によるプロジェクトマネージャの負荷軽減である.一般にプロジェクトの納期とコストはトレードオフの関係にあり,優先度はプロジェクトがおかれた環境や状況次第で変化する.そこで本研究では,(1)納期,(2)要員の重複タスク日数,(3)要員数の3式の目的関数を最小化するための多目的遺伝的アルゴリズムを用いた自動スケジュール生成ソフトウェアを提案する.プロジェクトマネージャは,提案するソフトウェアで生成された複数の準最適解の中から,プロジェクトの状況にあったスケジュールを選択することができる.提案するソフトウェアは,一般的なPCを用いて現実的な時間内でスケジュールを生成する.数値実験及びインタビューにより,提案するソフトウェアがプロジェクトマネージャの負荷軽減に有効であることを示す.
小室 峻、 佐々木 智章、 瀬尾 充、 遠藤 晃男、 黒田 敏秋、 谷本 茂明、 斉藤 典明
NTT西日本の法人営業部門では様々な規模のSI案件に対して,受注から終了までプロジェクトの進捗状況をチェックするPMO活動を実施することで,プロジェクトの成功に寄与してきた.数年間PMO活動を実施した結果,受注前に対処すべきと考えられる問題が存在することが判明した.我々は,この問題を解消するため,現在のPMO活動(問題解決型PMO活動)に加えて,新たなPMO活動(リスク予防型PMO活動)の導入を提案する.具体的には,過去に発生したプロジェクト問題の発生原因の分析をもとに,受注前にリスクチェックを行うことができる「リスク判断シート」および,「リスク総合診断」である.平成29年度より「リスク判断シート」と「リスク総合診断」の運用を開始した.
後藤 哲郎
競争優位性を獲得・維持しようとする企業にとって,プロジェクトを成功に導くために知識移転を円滑に進めることは重要である.過去の調査では,知識移転を円滑に進めるためには受け手の組織属性,特に言語能力,業務経験,意欲の高さ,受け手側組織の役割の比率が重要な要素と考えられた.また,受け手側組織はその組織属性を最適化するべく組織改善を進めていると考えられた.このような組織改善は具体的にどのように進められているのだろうか.プロジェクトで行われる活動を通して得られる組織改善の効果は多様であると考えられる.本稿では,どのような特性を持つプロジェクトおよびその活動が組織改善に好影響を与えるかを明らかにしたい.
齊藤 邦浩
国際競争力向上を目的として日本政府主導の元「働き方改革」が推進されているが,筆者のプロジェクトにおいても残業の抑制は,プロジェクト・メンバーのワークライフ・バランス確保とプロジェクトの利益率向上の観点から重要事項となっている.当稿では,PMにとっての「働き方改革」の意義を議論し,メンバーから見た残業発生の理由を元にPM視点での要因分析を行う.さらに筆者のプロジェクトで実施した4つの残業抑制施策「①要員計画の作成と実績管理」,「②タイムマネジメント研修の実施」,「③作業プロセスの標準化」,「④スキル・トランスファーの実施」について事例と効果を紹介する.
坂井 稔
2017年はデジタルトランスフォーメーション(以降,DX)がグローバルな潮流として広がり始めた年であった.日本においてもDXという言葉は確実に浸透しつつあるが,欧米と日本の企業文化の違いから,日本においては欧米のようにビジネスモデルや意思決定プロセスを一気に変革する形では進まないだろう.しかし,ビジネスにおいてデジタルの活用は不可欠であり,2018年は日本流のDXに着手する企業の増加が予想され,従来型のプロジェクトと異なるDXプロジェクトのマネジメントがより重要となる.本稿では,具体的な事例から得られたプロジェクトマネジメントに関する知見を踏まえ,DXプロジェクトの特性やフェーズ毎における課題を挙げ,曖昧な要件への対応やインキュベーションオフィスの活用,プロジェクト初期のアプローチ方法について記述した.さらに,プロジェクト特性に応じた推進方法やプロジェクトメンバーのロール,問題解決アプローチについて,従来型のプロジェクトとの相違点を中心に考察し,プロジェクトマネージャが注意すべき点を確認した.
坂本 直史
チームはリーダーとなる人のリーディングが,その成果や生産性に影響を与える.リーダーはその個人の能力を持って方針を示し,指示を行い,チームを動かして成果を上げることを期待される.自分はIBMのユーザー団体であるJapan Guide Share(以下JGS)の複数の研究チームのアドバイザーを務めた.JGSの研究チームの活動は,与えられたテーマに沿って1年間で新規性と有用性のある論文を複数の会社の参加者で作成する.アドバイザーとして参加する中で,作成した論文が良い評価を得たチームとそうでないチームは,リーダーおよびチームの振る舞いに傾向があることがわかった.この事実を分析した結果に基づき,新しいことや困難な問題に取り組むためのリーダーシップの1つのスタイルについて考察を行う.
佐藤 直樹
確率論的リスク評価 (PRA)は, 原子力発電所, 化学プラント,鉄道施設などの物理的システムの安全性についてのリスクを評価する上で有力な手法である.PRAの研究は米国の原子炉の安全性に関する研究の一環として, WASH-1400という暗号名(コードネーム)で1975年に公表された. 爆発事故のような事故のタイプが特定された場合でも, その事故が発生するまでにはさまざまな経緯, シナリオ, 一連の事象が存在する.リスクを定量化するためには, まずこうしたシナリオを列挙し, それぞれのシナリオを定量化しなければならない.情報セキュリティやプロジェクトマネジメントのエリアもこの点では物理的システムと同様である.本稿ではPRAのプロジェクトマネジメントへの適用を試みる.シナリオに基づくプロジェクト計画の破綻の定量化, すなわちコスト計画の破綻, 要員計画の破綻, 要員計画の破綻等プロジェクト計画の破綻のシナリオの定量化について論じる.本稿ではプロジェクト計画, 特にプロジェクトのコスト計画破綻のケースに焦点を当てて, PRAの適用によるリスクの定量的評価について論じる. またPMとしてどうすべきであったか. どうすればプロジェクト計画の破たんを未然に防げたかについても論じる.
佐藤 優至、 佐藤優至、 堀内俊幸、 下田篤
近年,企業では,内部統制(業務効率,財政報告,コンプライアンス)に加え,自然災害,サイバーテロ,SNSによる風評被害などさまざまなリスクに対処することが要請されている.このようなリスクに対処するためには,経営者だけでなく従業員1人1人が全社的な視点を持ってリスクを識別し,管理することができる組織的な能力を高めることが有効である.そこで本研究では,PBLにおいて全社的リスク管理の視点を導入したチェックリストを作成し,これを用いて学習をすることにより,リスク管理のための組織能力を向上させるための方法を提案する.本報告では,チェックリストの作成方法,活用方法について報告する.
島中 一俊、 益戸美香
NTTデータは,組織的プロジェクトマネジメントの一環として,プロジェクト管理ツールの導入を推進している.今般,ツールのフルモデルチェンジに際し、新ツールの普及展開プロジェクトを実施した。プロジェクトは、旧ツールを終結できないなど、困難な課題があったが、マーケティング手法を用いてその初年度を成功裏に完了した。本稿では、同プロジェクトの事例研究として、2年目であるこれまでの活動結果を報告すると共に、今後の導入目標作成等のための普及過程のモデル化について議論する。
杉本 沢民、 申杰
近年、インフォメーションテクノロジーの変革により、システムが高度化・複雑化し、お客様の要求を満足させるための提案が難しくなってきている。またお客様から、早期の価値実現が求められ、ソリューションの提案作業をスピーディーに対応していかなければならない。システム構築はもちろんのこと、ソリューションの提案作業も同じく高精度、高品質、高速に実施する必要がある。しかし、従来の営業部員中心による提案プロセスでは、高度な要求に対応できず、限界に来ていることは否めない。本稿では、ソリューション提案局面のプロセスフローを分析し、そこに潜む様々な課題を明確化する。また、あるべきソリューション提案プロセスの3つの段階について紹介し、お客様の購買特性に合わせて、アーキテクトの役割にフォーカスし、提案局面におけるアーキテクトの役割の重要性について述べる。
鈴木 但義
当社は,産業や制御を中心としたシステムの設計・製造を行う日立GrのIT会社である.2000年頃より,当社でもプロジェクトマネージャ(以下プロマネと呼ぶ)教育を開始していた.従来システムエンジニアやアプリケーションエンジニアに近い職種の人をプロジェクトマネージャと称した頃である.何年かはPMPホルダーの育成を中心に進んでいたが,自分の部門の問題や各プロマネの環境に応じた教育が行えないかとの要請が多く出た.ほとんど,実務に直結した講座は無かった.そこで教育部門として,組織の要求に応じた実務的な「実践プロマネ教育」を行うこととした.2006年より計画し,2007年から4講座でスタートし,11年継続している.延べ講座開催数が135回,延べ受講者数が4,648人と当社内のプロマネ教育の中核となり,現在も続いている.この実務的プロマネ教育を行うための計画と,今回価値を生んだ仕掛けを報告する.
高橋 邦明、 湯木 祥己
情報システムにおいてトラブルが発生すると,システムを提供する側は,再度トラブルを起こさないよう原因を分析し,防止策を考える.その際に用いられる手法の一つに「根本原因分析(なぜなぜ分析)」がある.我々,品質推進部門は,SE起因による重大トラブル発生時に現場(プロジェクト)が実施する分析を支援してきた.その中で,これまでの分析支援について振り返りを実施したところ,現場の分析内容に課題が見られた.そこで,課題解決のために,分析内容をさらに調査し,分析において現場が「陥りやすい点(苦手とするポイント)」を抽出することができた.さらに,それらを4つのカテゴリに整理し,そのポイントを“直接指導”した.本稿では,現場の分析内容を向上させるために実施した活動の概要とその工夫点,そこから得られた成果について述べる.また,整理した9つのポイント「あるある9(ナイン)」の内容についても紹介する.
田口 真史
プロジェクトにおいて、トラブルが発生した際に、誤ったコミュニケーション方法でステークホルダーにアプローチした場合、コミュニケーションギャップが発生し、ステークホルダーとのリレーションが悪化する可能性がある。本稿では、ステークホルダー分析の技法を用いて、ステークホルダーをケース分けし、ケース毎に最適なコミュニケーション手法を整理することで、コミュニケーションギャップを抑止し、良好なリレーションを保った状態でトラブルを解決する方法を導出する。
竹内 浩
プロジェクト開発において,新規顧客のシステム開発や,経験のないアーキテクチャやパッケージの導入など,「初物」の対応に関するリスクマネジメントは重要な要素である.経験がないことから類似プロジェクトでの実績が参考にできず,適切なリスクの洗い出しや,適切なリスクの予防策や対応策の検討を十分に実施する必要がある.特に経験のないパッケージの導入においては,パッケージベンダとの付き合いにおけるコミュニケーション面,パッケージの設計および設定対応の品質面のリスクなどを考慮する必要がある.本論文では,未経験のパッケージの導入を実施したプロジェクトにおけるリスクとその対応策について紹介する.
竹山 侑輝、 竹山侑輝、 加藤和彦
近年,プロジェクトの失敗の原因として初期段階でのリスクの特定,分析が不足し,それらの軽減策や発生時対策を講じていないことが考えられている.その為,リスクマネジメントの重要性が増している.石田は安全な環境作りとは単に危険な因子を取り除き安全な手順を構築することでなく,「その組織にいる人の行動」を変えることがリスクマネジメントにおいて大切であると述べている.しかし,現状では行動に着目しリスクの特定,分析に活かす研究は少ない.そこで本研究では,人の行動は欲求に基づくという内容理論を基に,ステークホルダーの欲求を欲求連鎖分析を用いて可視化する.更に可視化した欲求とリスクの関連性を分析・考察する.
玉田 亮、 下村 道夫
PBLは身近な問題や事例を素材としながら、学習者が能動的に取り組み自ら問題を発見し解決していく能力を身につけていくチームによる学習形態であり,社会で求められる実践的な思考力を鍛えられる効果があることから大学等の教育現場における注目度は高まっている.一方では,チームによる学習形態であることに加え,特に,授業時間以外という教員の監督の目が届かないところでの検討作業を要する場合には,いわゆる「さぼり」が発生する可能性も高く,学習効果の低下,検討作業稼働の不均質化および人間関係の悪化等の負の側面のリスクも存在する.本稿では,PBLで発生し得るさぼりを分類した上で,各分類の要因に応じた対策について考察する.
田村 慶信、 山田 茂
ソフトウェアプロジェクトを管理する上で,開発工数を推定することは非常に重要である.特に,オープンソースソフトウェア(Open Source Software,以下OSSと略す)の開発においては,開発者のネットワーク環境やスキルレベルの違いが,OSSのデバッグプロセスと品質に影響を与える.このことから,OSSの特定バージョンのリリースに必要とされる開発工数は時間の経過とともに複雑に変動していくものと考えられる.本研究では,投入開発工数に与える不規則な変動をWiener過程により表現したプロジェクト進捗管理のための開発工数予測モデルを提案する.また,OSS開発プロジェクトに対するモデルの適用例を示すために,実際のOSS開発データを分析する.
辻川 直輝
弊社はIT系のプロジェクトの企画,提案,設計・構築(ソフト開発,サーバーやネットワークの設計・構築,ケーブル配線工事,建設工事等),運用,保守までITシステムをトータルにサポートしている.プロジェクトマネージャ(PM)の必要性は謳われているが,各現場でプロジェクトの成り立ちが異なるため,現場のリーダークラスに具体的なPM像をわかり易く展開できないという課題がある.また,現場の実態についてPMが自由に相談できる機会が十分ではない.そこで,今回は, 既知を増やし相互に現状を意見交換すること,第一人称で考えPM相互の議論を深めることを目標として,PMの交流の場を企画した.知識を深めるための幹部講話,ディスカッションを深めるための問題事例と課題対応,ワールドカフェの試行,振り返りの充実に積極的に取り組んでいる.ディスカッションの質や受講者の満足感が向上するように,課題認識を持って改善を図っている.実施内容の改善は未だ道半ばの部分もあるが,知見を広め,知恵を吸収し,更に充実させたい.本稿では,PM育成のために2016年から推進してきた『PM交流会』の活動状況及び今後の取組について報告する.
鶴山 登美子
プロジェクトマネージャー(以下PM)の育成は,知識に加えて実務経験が不可欠である.しかし個人のPM経験は限られており,PM同士が経験を共有する機会が少ない状況にある.そこで弊社では,2014年から2つの目的を持ち『PM勉強会』を設立した。ひとつは、先輩PMが暗黙のうちに知識として持ち,ドキュメントにまとめることができない(ドキュメントだけでは伝わらない)“暗黙知”を先輩PM自ら伝えること.もうひとつは,メンバ自らテーマを選定し身近な事例題材を用いて共に学び啓発しあう“場”の提供を行なうことで,相互に情報共有を行い公式組織とは別にPM間のネットワークを構築することである。本稿では設立から約4年経過した『PM勉強会』の活動状況および今後の取り組みについて報告する.
富永 楓、 日高啓太郎
文科系大学において、卒業論文執筆は大学生活の集大成となる。昨今Project Based Learning(以下PBLと称す)やActive Learning(以下ALと称す)といったカリキュラムも設置されている。これらの背景に、一斉講義型の限界と学習者の学習意欲の減退を防ぐ為に実施されている。昨今文科系大学において、プロジェクトに触れる機会が少ない訳ではない。しかしながら、プロジェクトマネジメント教育(以下PM教育と称す)を体系的に受講する機会は極めて少ない。これらの影響として、卒業論文を執筆したプロセスとナレッジが共有されることなく、結果として学習機会の喪失が予想される。 本稿では、卒業論文執筆プロジェクトをテーマに、PDCAサイクルによる教訓活用と知識移転を目的としてLesson and Learned Systemsを導入し検討をおこなった。
豊留 健一、 松川 祐子
近年のシステム開発では高速化・自動化が求められている.本事例では弊社内で初めてとなる,開発と運用が協力し継続的に成果を出すDevOps導入において,要件や設計を早期に確定することが困難なため,従来のウォーターフォール手法ではなく,アジャイル手法を用いた.アジャイル手法を用いる上で重要となる柔軟な計画の策定を行うための変更管理とスコープ管理,文化等の異なる複数ステークホルダー管理の実例を紹介する.これらの実施経験から同様の特性のプロジェクトでの参考となる知見を共有することを本論文の趣旨とする.
長澤 駿太、 岡田公治
プロジェクトマネジメントに関する研究は,研究対象であるプロジェクトの独自性,長期性,少数性,試行困難性等の性質により,生産管理等の定常業務に関する研究に比べ困難を伴う.そのような問題意識から,プロジェクトマネジメント研究プラットフォームとしてプロジェクト挙動シミュレーションシステムが試作されている.しかしながら,そこにはプロジェクトマネジャーによる意思決定が含まれていない.そこで,本稿では,プロジェクトマネジャーの意思決定ロジックを試作し追加する.さらに,プロジェクトマネジャーのマネジメント方針の違いがプロジェクト実績に与える影響のシミュレーション結果について述べる.
永田 啓悟
システム開発において品質を保証するためには,担当者がテスト技法を正しく理解し,重要なテストケースを取捨選択してテストを実施する必要がある.しかし,大規模システム開発においては,しばしば担当者の理解の度合いに差が生じ,目標とする品質レベルを保証できないことがある.そこで本稿では,優先度の判断手順やレビュー手順など,テスト設計プロセスにおいて属人性の高い箇所に着目し,改善案を提案する.また,実際の開発プロジェクトに対して適用した結果を踏まえ,提案内容の妥当性や課題について報告する.
西村 信行、 木村 友紀、 山田 稔
マトリックス型組織においては,プロジェクト単位での活動がメインとなり,組織としての活動が少なくなることがある.その結果,プロジェクト横断でのマネジメントが希薄になり,プロジェクト毎の品質,人材レベルに差が生まれたり,プロジェクト間の知識共有とその活用が乏しくなることで,顧客に提供する価値を常に一定の水準で維持することが困難になることを,複数のプロジェクトを通じて経験した.そこで,機能型組織の立場から,組織の基本理念の定義,プロジェクト横断でのチーム活動,人材育成,人材交流,プロジェクト活動支援のための施策を提供し,顧客への価値提供の最大化を目指した活動を行なった.本稿では,これらの具体的な活動を紹介する.
野尻 一紀
「プロジェクトマネジメント学会メンタルヘルス研究会 2017年度 ワークショップ」を,2017年11月に岡山で開催いたしました. メンタルヘルス研究会は,国内外の各地(熊本,札幌,東京,ソウル,大阪,沖縄,金沢)でワークショップを開催し,プロジェクトにおけるメンタルヘルス不調の予防策を検討してきました. 今回、セッション1【講演】「人と組織と心を育むつながり力(NQ)」(一般社団法人ヒューマンコンシェルジュ 後藤 勉)ほか2件,セッション2【ワールドカフェ】テーマ「プロジェクト現場で,メンタルヘルス不調を予防するためにはどうしたらよいか?」,セッション3【ライトニングトークス】テーマ「野望」と,広く一般の方々にも参加していただく形で実施いたしましたワークショップについて、その成果発表をいたします.
羽渕 喜英
パッケージ導入による工期短縮,高品質の確保,コスト削減および既知のテンプレートによる業務改革が実現される導入事例が増えて久しい.しかしパッケージの導入プロジェクトにおいてもコスト,品質,工期の問題は発生している.筆者はPMOとして,複数のパッケージ導入プロジェクトのプロジェクト計画,監視コントロールプロセスにおいて,PMを支援し,成功プロジェクトに関わる事が出来た.成功したプロジェクトで,プロジェクト計画,監視・コントロールのプロセスにおいて工夫した点についてまとめる.さらに,パッケージ導入のプロジェクトにおいて上流工程の進捗把握方法として課題管理の可視化が有効であり,早期の課題解決と品質との関連について考察を行い,事例として報告する.
日高 啓太郎、 須山美希、 黒住知代、 坂口恵利佳、 景山彩香
家庭教育分野においてもPM教育の普及は急務である。一昔前と比較しても、地域コミュニティとのつながりの欠如や、育児に関連する相互扶助の機会の減少により、大きな損失を被ることが推測できる。本稿では、家庭教育を両親と子どもに分け、教育実践を通じて研究を行った。両親のための教育プロジェクトを実施し、Lessons Learned System(以下LLSと称す)を通した学習環境デザインである。その結果、親子のPM教育による効果は、きく貢献することが明らかとなった。今後プログラミング教育が初等教育に導入される中で、公教育に対しPM教育という側面からどのように関与していくべきかも踏まえ論じる。
廣瀬 守克
昨今の第三次AIブームの中,SIプロジェクトの開発段階における品質向上活動に対してもAI適用の機運が高まっている.SIプロジェクトでは,設計レビューやテスト工程で摘出した不具合を正しい品質記録として残し,正しい品質記録に基づいた品質分析と評価を行うことで,成果物品質を改善する取り組みは広く行われている.この取り組みが効果を発揮するためには,①プロジェクトに参画するIT技術者に対して正しい品質記録を作成できるよう教育すること,②IT技術者が作成した品質記録の内容を検査して問題がある場合は書き直しを指導すること,③この教育と検査および指導を実施できる検査要員を継続的に育成することがポイントとなる.熟練した検査要員の増員は費用面で難しい.このたび,最も作業負荷の高い品質記録の内容検査に対してAI技術を適用する前提でコンセプト検証(PoC:Proof of Concept)を実施した.その結果,幾つかの知見と課題が確認できた.
広田 昭彦、 吉原 伸二、 野田 留美子、 饗場 豊、 野村 小百合、 高辻 信一、 鈴木 雄太
当社では,TQMの考え方をベースとして,2005年より現場革新活動を実施している.本活動の1カテゴリとして,現場の活性化やQCD改善等を目的とした小集団チームによる改善活動を展開している.小集団改善活動を活性化する要素は、現場のチームワーク強化に始まり,改善マインドの醸成,改善手法の習得,定性・定量での改善成果の確認,および上位方針と改善活動の整合等である.現場がこれらの要素を実践するために,改善を熟知した推進スタッフによる支援も重要な役割となるが,本論文では,この小集団改善活動に対する支援機能(仕組みと支援活動)に関して,要点や事例を交えて紹介する.
福田 祥久
IT技術を駆使した高度なソリューションの活用が強く求められる変革の時代において,SIビジネスを成功裡に遂行するためには,PMにとって,プロジェクト・マネジメントおよびIT関連の知識のみならず,契約の締結から終了までの契約に関する法的知識も求められるのではないだろうか.SI契約における判例を分析・評価し,PMがプロジェクトの提案から計画・実施において,法的側面からも円滑に推進することを願い,判例の動向と特徴の分析・評価をとおして,プロジェクト・マネジメントにおける特徴と留意点を明らかにすることが目的である.
古谷 美佳
FinTech市場の急速化に伴い,数多くのFinTech関連プロジェクトが同時期に発足している.お客様からの期待値は非常に高く,短期間,低コストでのプロジェクト成功を求められる一方で,新規性が強い技術のため,有識者も過去事例も少ないがプロジェクトを遂行しなければならないという,市場と現場の間に大きなギャップがある.本稿では,実経験から得たFinTechプロジェクトの課題と知見の共有を通じ,新規性の高いプロジェクト運営について言及する.
星田 裕也
近年,株式会社NTTデータでは政府調達案件で当初計画通りにQCDを完遂できなかったプロジェクト(以下,問題プロジェクト)が発生するケースがあり,問題化を未然に防ぐ抑止策を強化している.政府調達案件は予算や契約等に関する様々な制約から問題プロジェクト化のリスクを孕んでおり,当社の従来の抑止策だけでは問題化要因を排除しきれない側面もあった.そういった背景から受注フェーズよりもさらに早い段階であり,主に「提案活動を行う企画・検討フェーズ(以下,超上流工程)」の課題に切り込む,前例のない取組を行うこととした.本論文はその取組の検討経緯,実施方法および有効性を共有するものである.
牧野 友祐、 加藤和彦
情報システム開発プロジェクトの要求獲得において,下流工程にならないと獲得が困難な要求が存在する.これらの追加要求や仕様の変更に対応するためには,要求獲得を計画的に進める必要がある.つまり,必要な要求を必要な時期に獲得することが重要となる.そこで本研究では,要求の依存関係に着目し,要求の獲得時期との関係性を調査した.具体的には,実プロジェクトの要求管理表から要求を依存関係種別に分類した.次に、要求の依存関係種別毎の獲得推移を観測した.本稿では,基本的な研究概念及び分析方法や手順,分析結果について述べる.
増田 洋晃、 佐藤 雅子
本番環境におけるシステムリソースの操作は,その操作自体が障害等を引き起こす可能性がある重要な作業である.このため品質管理手法や品質向上に関する取り組みについて手順を確立する必要がある. 本論文では,実際に実施した主にインシデント管理の徹底を中心とした管理品質の強化及び手順書の標準化・チェック方法の見直し等の品質向上の取り組みをテーマに,作業手順書の不具合等を起因とした障害の発生率の推移をもとに,どのような管理・対策に効果があったのかを解析し考察する.本年度発表においては、2017年度に発表した以降の作業にフォーカスしてその後の品質改善活動を中心に解析を行った.
松本 茂樹
関西国際大学人間科学部経営学科では、プロジェクトマネジメントを学ぶ演習科目を2016年からカリキュラムの柱にした。1年秋学期から3年春学期まで、「プロジェクトマネジメント演習Ⅰ~Ⅳ」を連続で走らせて、チームで期日内にミッションを達成するプロジェクトに複数取り組む。経営学科の基礎科目である経営学、経済学、ファイナンス、マーケティング等の知識を活かして、ビジネスコンテストへのチャレンジや大学祭の模擬店運営をカンパニープロジェクトとして取り組んでいる。アクティブラーニングの一環として取り組む中で、学生はリーダーシップやマネジメントについて考えるのと同時に、リーダーシップやマネジメント能力を身につけることが出来ていることが分かった。
丸山 智子、 井上雅裕
大学改革を促進するためには、学生、教員、職員各々が能力開発に取り組み、3者一丸となって推進していくことが求められている。工学系高等教育機関において、学生と職員の混成による「リーダーシップ養成講座」を職員・教員の協働で企画し、3ヶ月間に渡り実施した。教育方法として、対人関係を強化するシミュレータによるトレーニング、ディスカション、プレゼンテーションなど多様かつ体系的なアクティブラーニングを取り入れた。学修成果を可視化し、講座外の学修時間の把握ができるようeポートフォリオを導入した。eポートフォリオに記録されたリーダーシップ行動は、受講者同士で閲覧ができ、Learning Management System(LMS)上で相互にアドバイスやコメントの交換ができる仕組みを構築した。また、3ヶ月に渡る講座最終回の成果発表会では、前年度の修了生の1年間の成長をふり返る発表も取り入れた。本発表では、2015年及び2016年の2ヶ年実施した本講座の教育方法、学生及び職員の混成による効果、そして講座を運営していく上での課題について報告する。
道原 健太、 湯浦克彦
利用者の課題の分析と対策としての新規ビジネスの立案を段階的に繰り返していく短サイクル型ビジネス立案モデルを用いたビジネス計画イベントが現在数多く実施されている。 著者は、学生生活の間に多くの短サイクル型ビジネス立案モデルを用いた演習形式のイベントへの参加・運営をした経験を持ち、各ビジネス計画イベントの長所・問題点を抽出してきた。そこでSWOTクロス分析を行い、イベント運用改善のための検討するポイントをあげた。 その結果、短サイクル型ビジネス立案モデルの学習を重視した学習型ビジネス計画イベントにおいて利用者の課題の理解や分析が不十分である点や逆に分析に時間をかけすぎてビジネスの立案や顧客検証が不十分となることが多くの問題の中核にあることが分析された。 そこで過去のビジネス計画イベントにて取り上げられた利用者の課題とビジネス立案を格納した「ビジネス貯金箱」の設置を提案する。ビジネス貯金箱を用いることにより、イベントの参加者は過去に取り上げられた利用者の抱える課題と対策案を検索して調査できるので早期に自分たちのビジネス案の作成に着手することができる。 貯金箱への登録については登録の手順を用意して、登録者の付加を軽減するようにした。また課題の深堀のためのフレームワークやメンターの設置を合わせて提案した。
深山 正樹
これまでの価値向上の実現方法として、主に機能向上、機能増加や価格低減が用いられてきた。しかし、近年では、これら以外の「新しい価値」の創造が求められている。未だ、「新しい価値」そのものを定義することも、また、作り出すプロセスについても、試行錯誤が行われている段階である。その試行錯誤の中で、「新しい価値」を作り出すための基礎となる思考法の必要性が認識されつつある。この基礎となる思考方法の習得にあたり、「新たな価値創造」に向けた思考法の構造を提案する。さらに、その提案する内容が有効であることを、思考法の習得のための構造をプロジェクト・ベースド・ラーニングに取り込んだ上で実施し、成果を確認した。
森 俊樹、 内平 直志
プロジェクト・リスクマネジメントの重要性は広く認識されており,そのプロセスは概ね標準化されているにも関わらず,効果的な実践や定着化が困難となっている実態がある.その根本原因として,「リスクという不確実性を伴う事象に対する,トレードオフを伴う意思決定の難しさ」があると考えられる.本論文では,リスクマネジメントのさらなる高度化に向けて,機械学習と知識創造の統合アプローチとして“Machine-in-the-loop(機械参加型)知識創造プロセス”を提案する.さらに,機械学習と知識創造を効果的に統合するための必要条件についても考察する.
諸藤 洋明
友人との週末イベントやサークル活動など、時としてプロジェクトマネージャは業務以外のプロジェクトも成功に導かねばならない。これらのプロジェクトの特徴は、メンバーの参加度合が本人の意思による点や、リーダが絶対的な指揮命令権を持っていない点である。システム開発のプロジェクトマネジメント手法をそのまま適用して"強いマネジメント"を行うことは、メンバーのモチベーション低下を招きかねない。"管理する範囲"と"任せる範囲"とのバランスを適切にとる必要がある。 本発表では、メンバー十数名と続けている社内有志活動の経験を踏まえ、どのようにメンバを支配せずにプロジェクトを成功に導くべきか、"ゆるいマネジメント"の在り方を提言する。
安田 実知佳、 院南香緒里、 湯浦克彦
近年、IT企業において、プロジェクトを成功に導くための手法であるプロジェクトマネジメントに対する需要が高まっている。それに伴い、プロジェクトマネジメントの支援を横断的に行うPMO(Project Management Office)に対する関心も強くなっている。しかし、PMOはプロジェクトマネジメントのあらゆる面で関与するため、その成果や動向がわかりづらい。そこで、本研究では、株式会社日立ソリューションズ・クリエイト社(以下対象企業)と共同研究を行い、対象企業のプロジェクトマネジメント会議で議論されている内容を分析した。対象企業のプロジェクトマネジメント会議に用いられる資料に、指摘事項がまとめて記載された「指摘項目一覧」というものがある。この指摘一覧表に記載されている指摘項目を、PMBOKの知識エリアに基づいて分析し、プロジェクトマネジメント会議で議論されていることを知識エリアごとに可視化した。分析手順を明らかにすることにより、指摘項目の分析を繰り返し実施し、対象企業のPMO活動を把握することが可能となった。
山内 貴弘
仮想通貨に関する混乱がメディアを賑わしている. スタートアップ企業などが仮想通貨を活用したビジネスを興す際に, 新たなトークンを発行し資金調達する手段をICO(Initial Coin Offering)という. このICOプロジェクトの中には, 詐欺もしくは実現性のないものも多く, 被害者を生み出している一方で, 将来性のある案件も含まれ, その判別は難しい. 本稿ではプロジェクトマネジメントの視点から, 仮想通貨のICOプロジェクトに向き合いたい. すなわちプロジェクト開始前にビジネス上の必要性を識別するものであるプロジェクトビジネスケースを元に各種評価軸を検証するとともに, ブロックチェーン技術やトークンエコノミー的な特性も考慮した評価軸を考察するものである.
吉田 憲正
顧客が購買を決めるのは,単に販売員の製品についての説明ではない.顧客は,信頼できる販売員の勧める「製品から得られる働きの期待」を買っている.販売活動は,「特定の目標を期限内に達成する独自の活動」つまりプロジェクトであるが,販売活動の成功のためには,基盤としての顧客の創出と信頼関係の構築が必要であり,そこにはプログラムマネジメントが必要である.成功するセールスのプログラムマネジメントとプロジェクトマネジメントを,考察する.
吉野 均
プロジェクトの成功率を向上させることは,IT関係者に共通する重要な関心毎である.成功率をあげる為には,組織としてPM力の底上げを図ることが方策の一つである.そのために,今までもPM人材育成に関する様々な取組みが実施されてきた.PM人材育成において一番困難な点は,PMに必要な暗黙知である,PM実践知を如何に継承するかにある.「ものがたり」を介したPM実践知の継承法は,先達のPM実践知を埋め込んだ「ものがたり」を作り,それを介してPM実践知を次世代に継承する方法論である.この方法論を富士通の一つの組織で5年間実践した.完成した「ものがたり」は21編,総頁数1500頁,多種・多様なPJ実践知が埋め込まれている.順次,第四巻まで「ものがたり」集として発刊.いずれも組織全員約2,000名に配布した.その「ものがたり」の一つを使って,ケースメソッド方式に一工夫加えた「考える仮想研修」を企画して実施.受講者アンケート結果からその方法論の有効性を立証した.
田中 良治
本稿は,納期まで残り2ヶ月と迫ったプロジェクトにおいて,2度目のプロジェクトマネージャーの交替を余儀なくされる事態に陥り,その混乱により滞ったプロジェクトマネジメントの不備から生じた進捗の遅延に加え,品質面でもステークホルダーの期待値に対して懸念の生じる状況の露呈により,混乱を極めたプロジェクトのサービス開始を成功裡に成し遂げた成功要因を,桃太郎が率いた鬼退治をプロジェクトに例え,鬼退治での成功の秘訣と重ね合わせて振り返っている.